消化器科医が、昨年12月に地域の基幹病院消化器内科に胃癌の患者さんを紹介していた。先方からの返事が来ていて、上部消化管内視鏡検査を再検して、外科に紹介したという内容だった。
2型の進行胃癌なので、心窩部痛で内視鏡検査をして診断されたというのが典型的とすれば、経過は少し違っていた。
昨年12月半ばに、市内の内科医院から46歳男性が当院内科外来に紹介された。2か月前の10月から左下前胸部から背部にかけての疼痛が続いていた。
案外詳しく症状を記載していた。左下の肋骨に沿った「焼けるような」痛みで、就寝前に強くなり、朝起床時には楽になるという。吸気時に痛みで吸えなくなると表現していた。
また空腹時に症状が増悪する(起床時の記載と合わない?)、左背部に限局した疼痛の最強部位がある、と記載していた。
医院で検査した胸部X線と心電図は異常を認めなかった。消化器科ではなく内科に紹介したのは、胸のような腹のような症状で迷ったということらしい。
内科の若い先生が内科新患を担当する日に受診した。改めて訊くと、昨年6月には症状があったらしい。市販の胃薬を飲んでいた。
胸腹部(単純)CTで、胸部に肺炎・胸膜炎などの異常はない。胃体部前壁の不整壁肥厚があった。胃癌疑いとして、翌週に上部消化管内視鏡検査を予約した。放射線科の読影レポートはがんセンターの先生で、胃癌疑い・腹腔内リンパ節腫脹となっている。
内視鏡検査では胃体下部大弯前壁に2型進行癌を認めた。その日のうちに造影CTも追加で行っていた。潰瘍性病変が明瞭に描出されている。
消化器科医は大腸内視鏡検査(異常なし)まで行ってから、基幹病院に紹介した。まだ胃の生検結果は出ていなかったが、胃癌間違いなしとしていた。
腹部造影CTの読影レポート(リモート診断)は大学病院放射線科の先生だが、「胃に腫瘍性病変なし」となっていた。内視鏡検査の結果を知って見ているのはあるが、これはどう見ても不整潰瘍性病変があると思う。
当院の胃生検の結果はgroupⅡで胃癌は証明されなかったが、先方の再検で証明されたのだろう。生検数が2か所と少ない。
専門医ほど自信があるので、生検数は少ないのかもしれない。以前、大学病院から応援に来ていた専門医が大腸癌(上行結腸癌)の生検を1か所だけ提出していて驚いたことがある。(癌が出なかったらまた深部まで挿入になる)
当方は自信がないので、癌の生検は多めにとる。昔内視鏡の先生に、癌を証明する時は4個、否定する時は2個とりなさいと教わったのでその通りにしている。気を付けて採取しても、3個が壊死組織・正常組織で1個のみ癌ということもあった。(4個でも生検後の胃内はけっこう出血している)
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