なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

絞扼性イレウス

2015年07月11日 | Weblog

 一昨日の金曜日の当直帯で83歳女性が腹痛で救急搬入された。搬入時は腹痛が軽快して、腹部CT・血液検査で異常を認めなかった。当直は麻酔科研修中の若い先生(呼吸器科)だった。経過観察目的で当直医が主治医となっての短期入院となった。翌朝(昨日の朝)も症状軽快していて、午後には退院の予定となっていた。

 私が外来で診ている患者さん(軽度の糖尿病・脂質異常症・不眠症)だったので、昼前に病室に診に行った。もう少し入院して経過をみてもいいことをお話すると、自宅で休むほうがいいと笑顔で答えた。この方は認知症の夫を介護していて、外来に来るといつも「介護が疲れる」と言っていた。息子さんが来ていて、患者さんの夫を急遽ショートステイで施設に預けてきたという。介護の必要がないなら、病院で少し休んでから退院してはと勧めたが、やはり帰りますということだった。では、もし症状がぶりかえしたりしたら、考えましょうと伝えた。

 午後4時に病棟から電話が来て、この患者さんが3時ごろから腹痛を訴えて、1回嘔吐したという。病室に診に行くと、症状は軽快していた。入院時からの点滴は終わって抜針されていた。点滴を追加して、食事を止めた(水分は可)。来週まで経過を見ることに同意された。腹部は柔らかく、まあ臍周囲に軽度の圧痛があるかなという所見だった。検査を追加しなかったのは、搬入時の検査が全く異常なしだったことが影響した。

 昨日は内科の当番で、当直医が外部の応援医師なので、救急外来からの入院に備えて、病院に泊まっていた。その後、午後8時にまた腹痛が始まり、病棟から連絡が来た。今度は激痛だった。病棟に診に行くと、腹部は夕方診た時よりも張っていた。圧痛は臍周囲から左下腹部にあった。腹部造影CT検査をオーダーした。看護師さんから、午後から排尿がありませんと報告があった。腹痛で動くのも大変だし、尿閉の痛みではないが、尿カテーテルを入れることにした。尿は300ml排出された。排出されると、下腹部は平坦になって、腹痛はすーっと改善した。あれ、尿閉というほどの排尿ではないし、腹痛の原因が尿閉でもないし、と不思議な気がした。

 腹部造影CTを行うと、小腸下部で腸管が急峻な閉塞を認めた(beak sign)。小腸同志が斜めに交錯しているようだ。この患者さんは50歳代に他院で卵巣嚢腫の手術を受けて、下腹部に手術痕があった。術後の腸閉塞で、絞扼性イレウスと判断された。当番の外科医に連絡すると、すぐに診に来てくれた。ただ患者さんの腹痛は排尿後から改善して軽減していた。排尿によって、骨盤腔内に空間的な余裕ができたことが効いたと推定された。普通に会話もできる。外科医も迷ったが、いったんイレウスチューブを入れて、保存的に翌朝まで経過をみることも考えたようだ。

 イレウスチューブを入れて病棟に戻ると、また腹痛が出てきた。外科医が病棟で腹部CT画像を時間をかけて見直していた。造影されない腸管はないが、腸管壁の浮腫が見られるところは造影効果が弱いようにも思われた。病室での診察と画像の検討を繰り返してから、緊急手術を決断された。それからは、麻酔科医と手術に入るon call2番目の外科医への連絡、外科病棟への手配(婦人科小児科病棟を借りて入院していた)と、あっという間に進んでいった。

 夜間の手術をお願いすることになって申し訳ないなあ、午後に腹痛が再発した時に検査をしておけばと、こちらは内科医的に?うじうじと反省していた。当直帯で断続的な救急外来受診があって、入院歴のある高齢者も数名受診していたが、新規入院はなかった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

また問題の糖尿病

2015年07月10日 | Weblog

 昨日の早朝に腰痛で33歳男性が救急搬入された。数日前に急性腰痛症(ぎっくり腰)で整骨院に通院していた。その日はトイレに行って急に腰痛が悪化して動けなくなったそうだ。当直医は外科医で鎮痛剤を使って朝に経過をみて、整形外科に入院治療が依頼された。搬入時の血糖が380mg/dl・HbA1c12%と明らかな糖尿病だったので、整形外科から内科に治療依頼がきた。

 なんでも15歳から糖尿病で、治療は断続的に受けていた。最後は近くの内科医院(糖尿病専門医)に通院していたが、昨年から中断していた。その医院に診療情報提供を依頼(FAXで)すると、そこには一昨年から昨年3月まで半年くらいの通院だった。受診時はHbA1c12%で、中断前は10%だった。1年以上前のことなので、情報提供と言われても困るだろう。治療は25ミックス2回打ちからインスリン強化療法(ノボラピッド+トレシーバ)になっていた。病名は糖尿病とのみ記載していた。メトホルミンなどの経口血糖降下薬が入ってないのが気になった。

 15歳発症ということで1型?とも思ったが、これだけ中断しても無事だったので違うのだろう。尿ケトン体は(+-)で、血液ガス分析でpH7.39とあまり問題なかった。腰痛で入院しなければ、糖尿病で受診する気はないので、中断続行だったはずだ。両親が糖尿病で、2型糖尿病が早期に発症したものと判断される。抗GAD抗体と血中Cペプチドの結果は来週になる。腰痛で動けなくなっての入院なので、身長体重は測定されていないが、メタボ体型だった。治療はヒューマリンRのミニスライディングスケールで開始したが、今日の空腹時血糖が300台だったのでトレシーバも併用にした。

 来週抗GAD抗体と血中Cペプチドの値を確認して、治療をどうするか検討することにした。患者さん自身にあまり病識がなく、奥さんも病室に食べ物を持ってくるという。Cペプチドが正常~高値であれば、インスリンで脂肪を増やすよりも、GLP1受容体作動薬とメトホルミンが理想的なのだろう。

 糖尿病専門医の医院には行きたくないという。その先生は穏やかな紳士なので、問題があるとすれば患者さん側と思われた。今回の受診をきっかけに、治療に取り組んでほしい。今の調子で中断を繰り返していると、40歳代・50歳代で血液透析・失明・心筋梗塞・脳梗塞が待っているが、わかっていないようだ。自宅の近くに当地域の基幹病院があって、そこの糖尿病専門医に紹介するがいいのかもしれない。行く気があればだが。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

糖尿病腎症・ネフローゼ症候群

2015年07月09日 | Weblog

  55歳男性が下半身の浮腫(顔~上肢も軽度に浮腫あり)で入院した。2007年にリストラで東京から実家のある当地に戻ってきた。糖尿病の治療を中断しているという。HbA1cが12.8%だった。さっそくインスリン治療を開始(再開)して通院していたが、仕事のあるところに行ってしまうと治療が中断した。2012年に戻ってくると、HbA1c14.1%だった。また治療を再開したが、その後仕事のある遠隔地に行った。

 今年の3月に受診した時はHbA1c10.9%だった。治療(インスリン強化療法)を再開した。インスリンはまだありますと言って、持っていかない時もあった(ちゃんと使えばなくなっている)。それでも6月にHbA1c7.8%と下がっては来た。7%未満を目指していこうと思ったら、下半身の浮腫が出現した。確かにその前から血清蛋白・アルブミンが少しずつ低下してはいた。血清総蛋白4.4g/dl、血清アルブミン1.6g/dlと低蛋白血症で、尿蛋白は9~10g/日、血清クレアチニンは1.9~2,2mg/dlだった。

 仕事があって入院できないというので、先月末から利尿薬を投与して経過をみていたが、浮腫は軽減していない。やっと入院する気になって、今日入院した。どこまで利用薬が効いてくれるのか。血清クレアチニンはまだ透析導入の値ではないが、近い将来の透析が見えてきた。腎臓内科医と相談する予定だが、あまりいいことにはならない見込みだ。もっと治療をちゃんと受けていれば、と思う。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

内耳性めまいには違いない

2015年07月08日 | Weblog

 54歳男性が月曜日の早朝に回転性めまいで救急搬入された。日曜日の当直(宿直)だった循環器科医が診察して、頭部CTで異常がないのを確認して、良性発作性頭位性めまい(BPPV)として内科で入院させた。月曜日に病院に来ると、めまいの患者さんを入院させたので後はよろしくと言われた。

 病室に診に行くと、両眼にタオルを当てて仰臥位になっていた。目を開けると回転性めまいが起きて持続するという。無理に開眼してもらうと水平性の眼振を認めた。この方は夫婦でコンビニ(OOストップ)を経営している。午前2時ごろに夜食を食べて、携帯電話を見ていたら急に回転性めまいが出現した。特に、起立したわけでも、振り向いたわけでもない。携帯電話を見るのに多少下を向いたかもしれないが。頭痛はなく、耳鳴が以前からあって変化はなしで、難聴もなかった。明らかな神経症状はない。楽になりそうな体位をいろいろ試したが、動いたせいでかえってめまいはひどくなって、嘔吐した。

 じっとして動かなくてもめまいが持続しているのでBPPVではない。前庭神経炎なのだろうかと思った。上気道感染の先行はないが、前庭神経炎の半数程度にしかないらしい。耳鼻咽喉科外来の先生(外部からの応援医師)に診てもらったが、前庭神経炎?ということだった。その後に頭部MRIも行ったが、小脳脳幹梗塞はなかった。内耳性めまいには違いない。

 翌日には回転性めまいは軽減して、浮遊感になった。嘔気は治まり、食事摂取できるようになっていた。3日目の今日はさらに軽快した。食事は全量摂取できるので、点滴は今日までで終了とした。患者さんから、めまいの注射(メイロン)はどうなりますかと訊かれたので、めまいでいつも使ってはいるものの、実は効果は疑問なので中止しても問題ありませんと伝えた(変な説明だ)。ちょうど病室に奥さん(高血圧症で外来に通院中)が来たので、退院をいつにするか相談した。家に戻っても自宅静養にならないので、しっかり治るまで入院させてほしいという希望だった。

 誤嚥性(たぶん)肺炎で入院したアルコール性肝硬変で腹水貯留のある77歳男性は、約1週間の抗菌薬投与で解熱軽快した。入院時に喀痰吸引した時に、コーヒー残差様の吐物が引けたこともあり、上部消化管内視鏡検査を行った。軽度の食道静脈瘤Li・F1-2・RC(-)と胃粘膜の浮腫・出血性びらん散在を認めた。空腹を訴えたので、食事を出したら、案外ムセもなく8割の摂取だった。細菌性腹膜炎だった可能性も否定はできないが、腹痛・腹部圧痛がなく(ないこともあるが)、明らかな感染巣(肺炎)があったので、今回は違うようだ。どうでもいいことですが、個人的にはSpontaneous bacterial peritonitis(SBP)の訳は特発性より原発性が好みです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今度頭痛があったら受診すること?

2015年07月07日 | Weblog

 昨日、急性心筋梗塞の患者さんを心臓血管センタ-のある専門病院に転送した。夕方にはFAXで返事が来て、冠動脈造影の結果、左冠動脈前下行枝の血栓性閉塞、右冠動脈の慢性完全閉塞(!)を認め、前者に対してカテーテル治療を行ってステントを留置した、と報告が来ていた。いつも迅速な対応をしてもらえる病院で、大変助かっている。また、土曜に入院した巨大子宮筋腫の患者さんは、腹痛が続いて婦人科医が付き添って県内有数の総合病院に転送したそうだ。

 昨日の夕方、41歳女性が頭痛で受診した。内科クリニックで片頭痛発作時にイミグラン点鼻薬が処方されいて、持参していた。今後痛くなったら、薬を使用しないで当院を受診する様にと指示されていたそうだ。何でも診る先生だが、基本的には消化器科なので、一度は専門医に診てもらった方がいい、そして症状がある時の方がいいということなのだろう。ただ、飛び込みで受診しても、うまく専門医に当たるわけでもないし、片頭痛の診断は主に問診だと思うので、普通に神経内科の新患外来に紹介してもらう方がいい。

 頭痛がひどいので、イミグラン点鼻薬を今使ったばかりだという。15年前から数か月に1回頭痛がある。今年はこれで2回目。両側のこめかみが痛くなる。頭痛の性状は、明らかな拍動性ではなく、ぎゅうっと痛いと表現された。拍動性と表現してほしいが、圧迫されるようなと表現する場合もある。嘔気嘔吐を伴い、頭痛が始まると半日から1日くらい寝込んでしまう。前兆はない。音過敏や光過敏は最初のころあったかもしれないが、このごろはない。製麺工場の事務をしているが、月初めが忙しくて、頭痛発作が起きる傾向があるという。今日の頭痛はいつもの頭痛と同じ(性状が)だった。

 コンピュータ画面を見ると、10年前に別の開業医の先生から、当院の放射線科に頭部CTの依頼が来ていた。結果は異常なし。詳しい経緯はわからないが、頭痛で受診して、器質的疾患(二次性頭痛)除外のために依頼されたのだろう。嘔気もあり(嘔吐はしてない)、外来待合スペースで座っているのも辛そうなので、念のため一般的な血液検査とプリンペラン静注(片頭痛で使用するちょっと効く)をしたかったので、小さな点滴をして静かな点滴室で休んでもらうことにした。

 しばらくして見に行くと、頭痛は軽減していた。嘔気も治まった。頭痛の回数から判断すると、今の対応で継続していいと思ったが、上記の経緯があるので、神経内科の新患日(応援の偉い先生)に診てもらうことにした。その日の午前中にMRIが一枠空いていたので、頭部MRI検査後に受診とした。診察の結果は、頭部MRI異常なしで、発作時の対応は今の通りでよしとなりそうだが、その旨をかかりつけの先生に報告しておくことにしよう。私が言うより、神経内科のお墨付きの方が、その先生も安心するから(結構細かい先生です)。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

胃痙攣ではない(急性心筋梗塞)

2015年07月06日 | Weblog

 60歳男性が内科クリニックから紹介されて受診した。先週の金曜日の午後に心窩部痛が出現して、そのクリニックを受診した。紹介状は、「受診時はブスコパンで少しよくなった。今日は痛みが治まっているが、胃痙攣だと思われるので、上部消化管内視鏡検査を依頼したい。」という内容だった。

 この患者さんは昨年秋に、そのクリニックから糖尿病の悪化で紹介された。HbA1cが11%で随時血糖は1000だった。高血糖高浸透圧症候群の診断で入院して、内科の若い先生が担当した。点滴とインスリン持続点滴から、インスリン強化療法を行って、血糖は改善した。その後はインスリンは中止して、経口血糖降下薬で外来通院となった。DPP4阻害薬+メトホルミンで、外来になってからもHbA1cは下がり続けて、HbA1cが5.8%になった。案外真面目に治療に取り組んだことになる。脂質異常症はスタチンで、高尿酸血症は内服なしで正常化した。

 今日外来を受診すると、血圧が90mmHgに低下していた。ふらふらするという。普段の血圧が120~130mmHgだから、血圧が低下している(心源性ショッックです)。金曜日は午後3時半ごろに、突然心窩部痛(肋骨弓のあたり)が出現した。冷汗もあった。クリニックを受診して、胃薬を処方されて帰宅したが、疼痛は翌日夜まで続いたそうだ。今日はまったく疼痛は感じないという。食欲がないことを気にしていた。自分で車を運転して来院していた。

 外来の診察室のベットに横になってもらって、心電図をとった。V1-3で右脚ブロック様の変化?を認めた。深いQから高いRになって、そこから鋭角に下がっているのでST上昇といいにくい形だった。V5-6は幅広いS波でいかにも右脚ブロック様だった。むしろaVRが普通にST上昇の形をしていた。昨年の入院時の心電図とは全く違う。Ⅱ・Ⅲ・aVFは鏡面像としてのST低下がある。循環器科医は今日一人が不在で、もう一人が再来を診ていた。昨年のと今日の心電図を見てもらって、(当院で緊急心カテができない体制なので)心臓センターのある病院へ搬送することになった。トロポニンTの陽性のみを確認して搬送となった。あとで検査結果が出て、CK(CK-MB)・AST・LDHが上昇して、BNP1200だった。酸素飽和度は室内気で94%で浮腫はなかった。

 昼に搬送先から当院の循環器科医に連絡が来て、今から心カテになるが、左LADの根本かLMTの病変が予想されると言っていたそうだ。危ない危ない。

 ところで、胃痙攣というのが本当にあるのかというと、多分ある。自分が高校生の時と研修医の時に緊張して突然心窩部痛が起きたことがあるから。10~15分くらい続いて消失した。その時は尿が出にくくなった記憶がある。今は緊張すると、心窩部違和感と胸が詰まった感じ(chest tightness)がする。小心者であることには変わりはない。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

そんな患者さんが来てましたか

2015年07月05日 | Weblog

 今日は日直で病院に出ている。昨日の土曜日は日直が消化器科の先生で、宿直が内科の若い先生だった。日直では、3年前から婦人科で巨大な子宮筋腫を指摘されていた41歳女性が腹痛で受診していた。腹部造影CTで見ると、筋腫の上部に造影されない球形の腫瘤があった。3年前のMRIでその部分はないので、今回筋腫内(嚢胞ができていた?)の出血でできたものを見ているのではないかという。腹痛は心窩部痛で、普段症状はないことからも、筋腫内出血が起きたための症状と思われる。被膜があるので破裂ではない。産婦人科の当番は大学病院からの応援医師だったので、週明けに産婦人科常勤医と相談になる。手術するにしても産婦人科スタッフの多い病院に転院になりそうだ。

 当直では、心肺停止の74歳男性が救急搬入されていた。当院内科に高血圧症などで通院していた(別の若い内科の先生が担当)。血圧は安定していたようだ。自宅で嘔気を訴えて、そのまま横臥したそうだ。意識がなくなり、家族が救急要請した。救急隊到着時、心肺停止が確認された。当院搬入後に、心肺蘇生術に反応なく、死亡確認となった。Autopsy imagingとして頭部CTを行うと、脳幹出血だった。これほどの脳幹出血はそうそう見ない。これではほとんど即死だろう。当直お疲れ様でした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夫が亡くなりました

2015年07月03日 | Weblog

 水曜日の内科再来に糖尿病の70歳女性が受診した。この方は10年前に隣町の病院からHbA1cが11%で紹介されてきた。入院治療はしたくないと外来で経口血糖降下薬で治療を開始した。1年経過して血糖は改善せず、しぶしぶ同意してインスリン導入のために入院した。

 混合製剤(30R)朝10単位夕6単位くらいの量で入院中は良好な血糖になった。退院すると、みるみる血糖は悪化した。肥満があり減量や食事療法の順守で血糖は改善するはずだが、それが難しい。糖尿病教育入院はいやということで、5年経過した。その間、「入院しませんか」「「できません(したくない)」ということを繰り返した。せめて外来でインスリン朝夕の2回打ちからインスリン強化療法への変更を提案したが、それもいやがった。

 そうこうしているうちに胸痛が出現するようになった。循環器科で心臓カテーテル検査を行うと3枝病変で石灰化も目立った。冠動脈バイパス手術が好ましいと判断された。いつも紹介している心臓センターのある病院ではなくて、夫がICD植え込み術を受けた別の循環器病センターを希望してそこで手術を受けた。その病院には糖尿病専門医がいて、混合製剤からインスリン強化療法に変更した。入院中の食事療法順守と強化療法で血糖コントロール良好となって退院した。その後、外来に通院しているうちにまた悪化した。食べてインスリンを相当量打つので、むしろ肥満が進んだ。

 糖尿病教育入院を勧めているうちに、今年の3月に気が付いたら整形外科病棟に大腿骨頸部骨折で入院していた。入院中は食事療法が守られるので、むしろ外来のインスリン量では低血糖が続いて、かなり減量した。入院中はHbA1cが6.1%と初めて見るような値だった。退院後、初めての外来でHbA1c7.5%になっていた。これまでのHbA1c8%台よりはいいが、やっぱり外来になると食事がなあと思った。

 ふだん元気な人だが、その日は元気がなかった。「運動する気にならないんです」という。事情を訊いてみると、入院中(整形外科手術後にリハビリ病棟にいたので3か月)、夫が亡くなったという。「どこが悪かったんですか」と訊くと、「自分で・・・」。自宅近くで縊首したそうだ。夫は2年前に別の病院で大腸癌の手術をして、その後に抗癌剤治療も受けていた。PET-CTで再発は認めなかったという話だが、詳しくはわからない。再発せず、治癒したかもしれないと思えばもったいない。

 自分が入院して不在の時のできごとなので、それを気にしていた。この方の家族は息子夫婦と孫で今時としては多い8人家族だった。自分が入院したことを気に病んでいるので、「大勢の家族と一緒に生活しているので、妻が入院して寂しい思いをしたという訳ではないと思いますよ(否定はできないが)。」と伝えた。

 今年別の患者さんから、「実は最近妻が亡くなりまして」という報告を聞いた。昨年は「息子が悪性リンパ腫で亡くなって」というのもあった。高齢の両親(80歳代後半から90歳以上)が亡くなったという話だと、「長生きされましたね」だが、配偶者や子供の話だと「残念でしたね」というしかない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

糖尿病のコンサルト

2015年07月03日 | Weblog

 外科系の入院患者さんで、糖尿病の治療依頼が内科に来る。昨日は外科と整形外科から依頼があった。

 外科の患者さんは、S状結腸憩室炎で入院した38歳男性でBMI32のメタボ体型。母親が糖尿病で治療を受けているそうだ。内科クリニックに高血圧症と高脂血症(脂質異常症)で通院している。糖尿病も指摘されていたが、治療はちょっと待ってくださいと拒否していた。治療を開始すると糖尿病患者と確定してしまうのがいやなのか。糖尿病であることは治療の有無に関係ないのだが。

 HbA1cが9.0%だった。血清クレアチニンが1.2~1.3mg/dlなのが気になった。尿タンパクは陰性(微量アルブミンは検査が出てなかったので出しておこう)。通常ならメトホルミンで治療開始だが、無難にDPP4阻害薬(トラゼンタ5mg)で治療を開始した。減量による改善が見込まれる人だが、カロリー制限は難しそうだ。食生活はごはん(米飯)をいっぱい食べて、おかずは少ないという食べ方だった。糖質制限ならできそうなので、まずごはんを半分にしてみてはと提案した。憩室炎自体は軽快していて1週間の経過で退院になるので、、通院している内科クリニックに診療情報提供書を出して治療を継続してもらうことにした。

 整形外科の患者さんは54歳男性で、踵骨骨折で入院した。手術は終わっていて、抜糸後はリハビリになるが、3週間くらいの見込みらしい。この方は糖尿病と高血圧症ですでに内科クリニック(隣の隣の町)に通院していた。35歳から糖尿病の治療をしていて、体型はBMI21で肥満はない。通常の2型糖尿病でいいのか。昨年末に自衛隊を辞めてトラックドライバーに転職した。内服薬はトラゼンタ、グルファスト、メデット(メトホルミン)、ベイスンが出ていた。それまではトレシーバ7単位をしていたそうで(つまりBOTだった)、HbA1cが7.1%くらいだったという。転職してからインスリン注射をやめたのは低血糖を心配してのことらしい。グルファストの処方も、SU薬からの切り替え(低血糖を避ける目的で)なのかもしれない。今回入院時のHbA1cは10.2%と上昇していた。

 手術があるので、整形外科医は内服を中止してヒューマリンRのスライディングスケールにしていた。手術が終了して、HbA1cが良好な値なら普段の治療に戻すのだが、血糖コントロール不良なので内科に治療を依頼したのだった。とりあえず、内服薬を再開して、それで血糖がどの程度になるかみてから決めることにした。血糖が高い時のみヒューマリンRで補正することにした。仕事をしていると、超速効型インスリン毎食前は無理だという。来週からトレシーバを(7単位より少なめの4単位くらいから)戻すことになる。SU薬が入らなければ低血糖にはなりにくいと思うが、どうだろうか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

むしろ腹水

2015年07月02日 | Weblog

 施設に入所していた77歳男性が誤嚥性肺炎疑いで紹介されてきた。今月初めに入所したばかりだった。大酒家でアルコール性肝硬変がある。今年3月に発熱と腰痛で救急外来を受診して、腰椎(L3-4)の化膿性脊椎炎と診断された。幸いに8週間抗菌薬を投与して治癒した(整形外科に入院したが抗菌薬の指示は内科で出していた)。

 娘さんと二人暮らしで、元気な時は娘さんの電車通勤の送り迎えをしていた。朝に送って行って、昼にちょっと飲んで、少し醒めた頃にまた迎えに行くという生活だった。日中は飲まないで、せめて午後7時ごろに帰る娘さんを迎えに行ってからちょっとだけ飲むように勧めてはいた。本来は禁酒だが、楽しみがほかにないので絶対に飲酒はやめないと宣言していた。

 前回の入院で認知力低下が進行して(もともと認知力は低下していたようだが)娘さんのいない日中に自宅で一人では過ごせなくなった。以前から申し込みをしてたらしく、退院して直接施設に入所できた。これで飲酒できなくなるので、肝臓も安心かと思っていた。

 今回は3日前に嘔吐して、その後から発熱が続いていた。食欲も低下して、昨日から酸素吸入(1L/分程度)をしていた。胸腹部CTで見ると、左下肺に肺炎があるようだが、それほどではなかった。むしろ腹水が目立った。肝機能障害としてはAST・ALTは正常域にあるが、血清ビリルビンが若干高い。血清アルブミンが低い。肝細胞癌はなさそうだ。外来にひとりで通院(もともと腰痛持ちで病院内は車椅子を動かして移動)していたころと比べると、やせて大分衰弱している。なんだか肝硬変末期の雰囲気がある。

 施設内で不穏があって、暴言と、筋力はあまりないのであまり怖くはないが暴力行為があったという。介護衣を着せられていたそうだ。施設の看護師さんから病棟の看護師さんが申し送りを聞いて対策を考えていた。今のところは大人しく点滴を受けていた。娘さんが病院に来たので、肺炎は軽度だが肝硬変・腹水があり、入院期間がどのくらいになるか予想しがたいことを説明した。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする