編集者…というのが正しいのか、聞かれるといつも悩むんです
本の制作に関する何でも屋さんというのが正解でしょう
旦那様、古い付き合いのある印刷屋さんから、企業の年史のリライトというお仕事をいただいた
初め聞いたときに「リライト?」と思った
企業年史のお手伝いではたいていお話を聞くところから始まる
取材をして、出てきたお話の裏を取り、年表などとともに文章を起こす
御あいさつ文などは、書いていただいたものを“てにをは”や文章の前後、流れを直すことはあるが、
はじめから「リライト」という仕事は聞いたことがなかった
聞けば、お客さんが自分ですっかり本の体裁に作った見本のような冊子をもって来られ、
この通りに作ってほしいというご希望だったようだ
印刷屋としてはこのまま作ればいいのであれば簡単、手間いらず、…なのだが、
旦那がうんうんうなっているそのモトゲンをちらと読んで絶句してしまった
「これ年史?取引先とかにも配るの?」
素人の書いたものなので、同じ話が何度も出てきたり、語尾が統一されていなかったり、
文章として成り立っていない部分があるのも仕方がないのだが、
ちょっと引っ掛かる部分が最初の1ページだけでも満載で、ハラスメントと感じる表現もあちこちに見られ、
謙虚に自社のことを言っているようで、まわりまわってこれはどうなのということになっていたりする
どのページもそのありようで、
とにかく「ひどい」
これをこのまま本にして秘蔵するならまだしも関係各社に寄贈するという
それは…「いいものをつくる」ということを年史に込めている印刷屋は
このままでは自社の評判にも傷がつくと判断したようだ
旦那は初めは赤字を入れる格好でリライトしていたがとても間に合わず、編集と相談して、
すっかり直したもので見てもらうということでリライト作業を進めた
それでも旦那は「自分がいいと思って書いた文章に手を入れられるのは腹が立つものだから」と、
大いに苦労してなんとか書き手の個性が残るように残るように文章を作った
ところがやはりお客さんとしたら一生懸命に書いたものがすっかり変わって現れたから、
「どう直したか説明してほしい」となった
元の文章があって赤がいれてあるような、そんなものを想像していたようです
旦那曰く「そうだよなあ、それは書いた人にしたらそうだよ」
と言いながら、担当編集者と営業さんと出かけて行った
どうしたかなあ
うまく納得してくれたかなあ…
怒らせたら仕事がなくなる
企業で働く人だったら、まして人の上に立つような立場の人だったら、
文章を書くことにある程度の自信があるだろう
だけど、文章のプロである大作家でさえ編集者の校正がなければいいものは生み出せないのだ
雑誌の本当に1行程度の説明でも、素人の書いたものと、プロの仕事では違う
それは旦那と一緒に暮らすようになって、その仕事を観て実感としてある
リライトでも私は自分の文章に直すことはできるが、プロはその人の文章のまま直す
うまく説明できているといいなあ…薄暗くなってきて、そんなことを思いながら帰りをまっている