集積5店 相乗と競争
三越にとって大阪への再出店は悲願でもあった。北浜で約300年続けた店を05年に閉じた後もギフトサロンを残し、客をつなぎとめてきたからだ。
店づくりを主導した伊勢丹も、関西での実力は立証済みだ。1997年にJR京都駅ビルに進出し、既存店は客を次々と奪われた。近鉄百貨店は07年に閉店。四条河原町阪急も昨夏、閉店に追い込まれた。
初のダブルネームとなる三越伊勢丹は、大阪・関西人の好みをより強く意識して必勝を期す。会員カードは、同居率の高さから家族聞で融通できる特約を新設した。飲食店は、東西のダシの違いに配慮して地元の店舗のみを集めた。
強豪の進出で、既存店は相乗効果を見込む半面、個性の打ち出しに必死だ。
三越伊勢丹と駅を挟んで向かい合う大丸梅田店は、上層階にユニクロや東急ハンズなどのテナントを入れ、「脱百貨店」路線にかじを切った。3月半ば以降、前年同期に比べ入店客数は7割増、売上局は5割近く伸びた。
阪急阪神百貨店を傘下にもつエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングの椙岡俊一会長は4日、「大阪の街の規模に見合った駅になった」と評価。ただ、「梅田最大の売り場面積」に向けて建て替え中の阪急うめだ本店は、工事の遅れで完成が半年ほど伸び、12年秋の予定だ。
一方、三越伊勢丹や大丸は、九州や中四国からの集客も視野に入れる。梅田の求心力の高まりは、周辺都市にある商業地の空洞化を招く可能性もある。大丸松坂屋百貨店の山本良一社長は「梅田店が頑張る分、心斎橋や神戸、京都の3店は若干、マイナスになるだろう」とみる。(田中美保)
JR、京都の成功再現狙う
JR西日本が4日に開業した関西の新しい玄関口「大阪ステーションシティ」は、百貨店のJR大阪三越伊勢丹など駅直結の商業施設も集積。京阪神や北陸、九州など広い地域からの集客を加速させたい考えだ。3月12日には大阪への直通列車を増やす大幅なダイヤ改定に踏み切った。
ダイヤ改定では、大阪と、和歌山や関西空港、奈良、兵庫・宝塚とを、乗り換えなしで結ぶ昼間の直通快速を大幅に増発した。3月12日には山陽・九州両新幹線の直通運転もスタート。さらに北陸と大阪を結ぶ特急「サンダーバード」の利用も活発になるとみる。
ダイヤ改定の背景には、JR京都駅に直結して1997年に開業した百貨店「ジェイアール京都伊勢丹」の成功体験がある。京都伊勢丹の開業に合わせて、京都駅発着の列車をダイヤ改定で増強。京都の乗降客数は増え続け、96年度から2008年度までに15%以上伸ばした。
JR西は11年度、三越伊勢丹の売り上げやテナント収入などで690億円の増収効果を見込む。このうち運輸収入は50億円増だ。
(佐藤亜季)
三越にとって大阪への再出店は悲願でもあった。北浜で約300年続けた店を05年に閉じた後もギフトサロンを残し、客をつなぎとめてきたからだ。
店づくりを主導した伊勢丹も、関西での実力は立証済みだ。1997年にJR京都駅ビルに進出し、既存店は客を次々と奪われた。近鉄百貨店は07年に閉店。四条河原町阪急も昨夏、閉店に追い込まれた。
初のダブルネームとなる三越伊勢丹は、大阪・関西人の好みをより強く意識して必勝を期す。会員カードは、同居率の高さから家族聞で融通できる特約を新設した。飲食店は、東西のダシの違いに配慮して地元の店舗のみを集めた。
強豪の進出で、既存店は相乗効果を見込む半面、個性の打ち出しに必死だ。
三越伊勢丹と駅を挟んで向かい合う大丸梅田店は、上層階にユニクロや東急ハンズなどのテナントを入れ、「脱百貨店」路線にかじを切った。3月半ば以降、前年同期に比べ入店客数は7割増、売上局は5割近く伸びた。
阪急阪神百貨店を傘下にもつエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングの椙岡俊一会長は4日、「大阪の街の規模に見合った駅になった」と評価。ただ、「梅田最大の売り場面積」に向けて建て替え中の阪急うめだ本店は、工事の遅れで完成が半年ほど伸び、12年秋の予定だ。
一方、三越伊勢丹や大丸は、九州や中四国からの集客も視野に入れる。梅田の求心力の高まりは、周辺都市にある商業地の空洞化を招く可能性もある。大丸松坂屋百貨店の山本良一社長は「梅田店が頑張る分、心斎橋や神戸、京都の3店は若干、マイナスになるだろう」とみる。(田中美保)
JR、京都の成功再現狙う
JR西日本が4日に開業した関西の新しい玄関口「大阪ステーションシティ」は、百貨店のJR大阪三越伊勢丹など駅直結の商業施設も集積。京阪神や北陸、九州など広い地域からの集客を加速させたい考えだ。3月12日には大阪への直通列車を増やす大幅なダイヤ改定に踏み切った。
ダイヤ改定では、大阪と、和歌山や関西空港、奈良、兵庫・宝塚とを、乗り換えなしで結ぶ昼間の直通快速を大幅に増発した。3月12日には山陽・九州両新幹線の直通運転もスタート。さらに北陸と大阪を結ぶ特急「サンダーバード」の利用も活発になるとみる。
ダイヤ改定の背景には、JR京都駅に直結して1997年に開業した百貨店「ジェイアール京都伊勢丹」の成功体験がある。京都伊勢丹の開業に合わせて、京都駅発着の列車をダイヤ改定で増強。京都の乗降客数は増え続け、96年度から2008年度までに15%以上伸ばした。
JR西は11年度、三越伊勢丹の売り上げやテナント収入などで690億円の増収効果を見込む。このうち運輸収入は50億円増だ。
(佐藤亜季)