と言いつつ、これも2週間前の「少し古い出来事」になってしまったのだが…。
世に「フェイクニュース」という用語が溢れて数年経つだろうか。いわゆるネス湖の怪獣みたく、捏造デマ情報は(それよりも)ずっと昔っからある。「フェイクニュース」と敢えて言う場合は、従来のデマ騒動に「SNSを通じて世界に拡散」というファクターが加わった場合だろう。
で。
日本におけるSNSの先駆けと言われてたサービスのひとつが『関心空間』で、(当ブログで何度も書いているように十数年前から)かつての自分もそこの「住人」だった。
その時期……具体的には2008年の夏、わたしは同年4月に英国などで報じられていた「とある未来的な建築プロジェクト」についてテキストにまとめ、『関心空間』のキーワードとして登録した。それはフランス発。ある若手建築家が、パリ/エッフェル塔管理機構の求めた展望台リフォームのデザイン・コンペに提案した「花びらのような展望テラス」構想に関してだった【画像】。
このプロジェクトが、今では「エイプリルフール向けの捏造情報(フェイク)だった」と結論づけられていたのだ。
いやエイプリルフール用のニュース、というネットの論調には(個人的に)疑問もある。拡散の元は英国ザ・ガーディアン紙(とその電子版)の記事だったらしいが、掲載日は3月24日である。つまりAF-DAYの1週間も前。こんな前倒しに流布し始めて、4月1日に「エイプリル・フール(の嘘ニュース)でしたァ」とバラせば、それは「エイプリル・フール」企画で通ってしまうのだろうか?? そんなこと言い出したら1年、いつバラ撒いたフェイク報だろうと「エイプリル・フール」に成り得てしまう。それは間口、広げすぎなんじゃないか。
それと、どの程度までの"捏造レベル"を以て「フェイクニュース」と見做すか、その定義の問題も残る。フェイクニュースには必ず「一部に真実も混ぜる」ことで人を騙しやすくする手法を採ることが知られているが、このエッフェル塔「改」ネタの場合、実に「内容の半分」が真実なのである。フェイクと言えばフェイクだろうが、フツーによくある「一部誤報」にも限りなく近い。
では具体的に(このニュースの)何が誤りだったのか?
結論を先に言うと、塔を管理する公団側が「展望台を拡張しようと計画し、デザイン・コンペを主催した」という事実は存在しなかったのだ。ただ、①公団の担当者がインタビューに応じ「現在タワーのエレベーターの平均待ち時間が、ピーク時には1時間を超えています」と語ったこと。②ある若手建築家が勝手に(誰に頼まれたワケじゃなく一方的に)花びら状の展望テラスをエッフェル塔にどうか?…という「増築コンセプト」をプレゼンした。その2点が真実であるに過ぎなかった。
ニュースの「捏造犯」は、これら二つの事象をつなぎ合わせて「一本の偽ストーリー」に紡ぎ直した。記事の文章には、この公団職員が(展望室の収容人数を増やすことで)地上から展望階へのアクセスの「利便性の向上が見込まれる、としている」などといった一節が(さももっともらしく)加筆されていた。つい文章の流れで管理者たる国が「増築ありき、で計画を進めている」と思い込まされてしまうではないかっ
んまあ(程度の差はあれ)大手新聞紙も、二次配信したデザイン情報サイトも、はたまた「新しモノ好き」の小生も、見事に無防備に信じ込まされてしまったもんである。それも既に、10年も前に…とは。騙される手法まで「新しいモノに目がないね」などと茶化す声が聞こえてきそうで、本当に赤面するばかりという目下の心境なのである。激しく自戒。
世に「フェイクニュース」という用語が溢れて数年経つだろうか。いわゆるネス湖の怪獣みたく、捏造デマ情報は(それよりも)ずっと昔っからある。「フェイクニュース」と敢えて言う場合は、従来のデマ騒動に「SNSを通じて世界に拡散」というファクターが加わった場合だろう。
で。
日本におけるSNSの先駆けと言われてたサービスのひとつが『関心空間』で、(当ブログで何度も書いているように十数年前から)かつての自分もそこの「住人」だった。
その時期……具体的には2008年の夏、わたしは同年4月に英国などで報じられていた「とある未来的な建築プロジェクト」についてテキストにまとめ、『関心空間』のキーワードとして登録した。それはフランス発。ある若手建築家が、パリ/エッフェル塔管理機構の求めた展望台リフォームのデザイン・コンペに提案した「花びらのような展望テラス」構想に関してだった【画像】。
このプロジェクトが、今では「エイプリルフール向けの捏造情報(フェイク)だった」と結論づけられていたのだ。
いやエイプリルフール用のニュース、というネットの論調には(個人的に)疑問もある。拡散の元は英国ザ・ガーディアン紙(とその電子版)の記事だったらしいが、掲載日は3月24日である。つまりAF-DAYの1週間も前。こんな前倒しに流布し始めて、4月1日に「エイプリル・フール(の嘘ニュース)でしたァ」とバラせば、それは「エイプリル・フール」企画で通ってしまうのだろうか?? そんなこと言い出したら1年、いつバラ撒いたフェイク報だろうと「エイプリル・フール」に成り得てしまう。それは間口、広げすぎなんじゃないか。
それと、どの程度までの"捏造レベル"を以て「フェイクニュース」と見做すか、その定義の問題も残る。フェイクニュースには必ず「一部に真実も混ぜる」ことで人を騙しやすくする手法を採ることが知られているが、このエッフェル塔「改」ネタの場合、実に「内容の半分」が真実なのである。フェイクと言えばフェイクだろうが、フツーによくある「一部誤報」にも限りなく近い。
では具体的に(このニュースの)何が誤りだったのか?
結論を先に言うと、塔を管理する公団側が「展望台を拡張しようと計画し、デザイン・コンペを主催した」という事実は存在しなかったのだ。ただ、①公団の担当者がインタビューに応じ「現在タワーのエレベーターの平均待ち時間が、ピーク時には1時間を超えています」と語ったこと。②ある若手建築家が勝手に(誰に頼まれたワケじゃなく一方的に)花びら状の展望テラスをエッフェル塔にどうか?…という「増築コンセプト」をプレゼンした。その2点が真実であるに過ぎなかった。
ニュースの「捏造犯」は、これら二つの事象をつなぎ合わせて「一本の偽ストーリー」に紡ぎ直した。記事の文章には、この公団職員が(展望室の収容人数を増やすことで)地上から展望階へのアクセスの「利便性の向上が見込まれる、としている」などといった一節が(さももっともらしく)加筆されていた。つい文章の流れで管理者たる国が「増築ありき、で計画を進めている」と思い込まされてしまうではないかっ
んまあ(程度の差はあれ)大手新聞紙も、二次配信したデザイン情報サイトも、はたまた「新しモノ好き」の小生も、見事に無防備に信じ込まされてしまったもんである。それも既に、10年も前に…とは。騙される手法まで「新しいモノに目がないね」などと茶化す声が聞こえてきそうで、本当に赤面するばかりという目下の心境なのである。激しく自戒。