関心空域 ━━ す⊃ぽんはむの日記

元「関心空間」の日記(引っ越し後バージョン)です♪

ひとことで「レトロ調デザイン」と言っても、その時代を生きてた世代には「…???」なことが実は、あったりしませんか?

2018年04月23日 | 日記
「レトロ調」と称するデザインの商品は、いつの時代にもある。

よく、流行の〇年周期だとかトレンドウォッチャーが言うが、そういうタイミングで「あとの世代」が「前の世代」の趣向に憧れるという事は、たしかに旧来から営々とあるのだろう。それが音楽ならカバーされたり、映画やドラマならリブートされたり……といった具合に。

もちろん、家電製品のデザインにも「レトロ調」の試みは多い。そろそろ片づける時季を迎えたスポット暖房器具とて、例外ではない。例えば、通販で紹介されていた『レトロでおしゃれ ノスタルジック電気ヒーター』、なる商品もそうである【画像】。


見れば、たしかに電熱ヒーターでありながら、パネル前面に50~60年代の家庭用ラジオ(?)みたいなつまみ状のダイアルを配している辺りが、レトロっぽいと言えばレトロっぽい。

が、実際に半世紀前の家庭に「こんな感じの電熱ヒーター」が在ったか? と言えば、300%NOだ。

この商品にフューチュアされている「石英管遠赤ヒーター」なる暖房用加熱デバイスが(一般家庭向けの白物電化にも)本格的に普及しはじめたのは、たかだか90年代後半になって以降のことである。60年代や70年代には登場していない。電熱コンロは在ったが(電熱線周りに発火熱を放散するので危険が高く)ストープ代わりには使えず、家庭では圧倒的に(灯油式の)石油ストーブに暖を頼っていた。

石英管 遠赤ヒーター の構造図


さらに重箱のスミを突つかせてもらうと、この電気ヒーター、ダイアルの並ぶ操作パネルを本体に組み付けているのは、プラスのトラス小ねじ。


このタイプのネジは今でこそ、家電の組み立てに主流のネジだ。製造ラインに電動ドライバーが当たり前に使われる時代になり、トルクが同心円方向に均一に伝わりやすく、電動ドライバーの先にも瞬時にハマりやすい「その形状」が、自動化の進む組立現場に適していた。

だが60年代あたりまで、ねじを締め付けていたのは主に「工員の手が回すドライバー」である。その多くは(今では見かけにくい)マイナスねじ。手で回す場合、当時のプラス小ネジの頭の硬度では(手動ドライパーの先との滑転から)十字溝を潰してしまいやすく、プラスねじは敬遠されたのだ。

まぁ、例を挙げればこんな感じ。



また21世紀の現代でも、高級自動巻き時計など手作業で組み上げる精密工芸品の多くにはマイナスねじが用いられている。



そうした辺りまで、つまり隅々に至るまで「かつての時代を投影し尽くした」復刻デザイン商品……というのは、なかなか存在しない。上っ面(つら)が何となくレトロっぽいだけで、よく見りゃ「やっぱり今だから作れる商品でしかない」ということの方が、圧倒的に多い気がする。

そういう実情もあって、レトロ調はレトロ調でしかなく、やはり年代を(実際に)経てきたヴィンテージ物こそがヴィンテージ物になり得るのであろう。今さらながら、それを再確認する想いである。

韓国LGが'13年に出した"4本脚"のレトロ液晶TV

 

映画『ワイルド・ワイルド・ウエスト』(1990年) より


コメント
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