関心空域 ━━ す⊃ぽんはむの日記

元「関心空間」の日記(引っ越し後バージョン)です♪

《CDジャケ自作》フランソワーズ・アルディ/青春時代 EN ANGLAIS (1968)

2018年04月18日 | 日記
60年代パリは人気ファッション・モデルのひとりであり、かつイエイエ・ブームに沸いた大衆音楽界のアイドル歌手の一角、70年代末以降はフレンチ・ポップ界の主導的アーチストとして現在(74歳)も現役で活躍するフランスの女性シンガー、フランソワーズ・アルディ

彼女についても当ブログ、これまでにも様々な角度から幾度となく取り上げてきた。片や《関心空間》時代のメンバーさんに、60年代のフランス文化事情に長けたかたが相当数おいでになり、それはもう親切で多岐に渡るご教示もいただき、知見を補完する恩恵にも恵まれてきた。今(もまだ)小生のブログを覗きにいらっしゃってるか?は兎も角、あらためて篤く御礼を申し上げたい。

さて、そこで今後だが……少しずつ、「自分の知るアルディー姐の音楽作品ネタ」も書き連ねておこう、と思う。極端な話、自分が事故や急病で(明日にも)死んだとしても、ネット上から「ファンのひとりとして伝え話せること」は書き遺し、日本のファン諸氏と知見や"アイテム"を常日頃から共有しておきたいと思っている。あとまで(ブログが削除されずに閲覧可能な状態で)遺るのが、たかだか数年であれ、数週間であれ。

「作品篇」初投稿となる今回は、本邦紹介をEPIC(ソニー)さんが担ったアルバム作品群のなかではマイナーであろう、1968年発表の『青春時代』(Françoise Hardy / En Anglais)。1966年『イン・イングリッシュ』に続く英語曲アルバムの、2作目にあたる。

本稿終盤に細かな「日本だけの諸事情」についてまとめた。そのような事情のせいで『イン・イングリッシュ』は8年後に東宝レコードから。『青春時代』も8年後の76年、エピックレコードからの"遅延リリース"となってしまう。まだしも前者の(74年時点における)『イン・イングリッシュ』の発売は、当時日本で知られていたヴォーグ時代(=アルディのアイドル活動時代)の音源が(日本のフレンチPOPファンの間ではギリギリ?)聴かれてもいた時期で、英語曲盤は「それらの時代の楽曲を英語で歌いました」的な理解で(少なくとも、アイドル時代からの旧ファン層には)ストレートに耳に入った。

しかし後者の76年、という年代になると、日本でエピックさんが『私の詩集』(71年)や『私生活』(72年)※ともに日本リリースは73年 など、アルディがアーティスティックな音楽活動に専念しはじめてからの楽曲を矢継ぎ早にプロモートしていて、まさに前述の74年、かのユーミンが極めて私的なリスペクト曲『わたしのフランソワーズ』を歌うに至って≪アンニュイ系シンボル≫としてのアルディ像が"急速に定着した"そのあと!…というタイムラインに入ってしまっていた。そこで、この英語盤第2弾については、日本だけ「異様な体裁」に改変されてゆく。すべてはエピックさんのプロモート陣の「せっかく確立してくれた≪アンニュイ系シンボル≫としてのイメージを壊すまい」と謀っての意図からであったろう。

発表年1968年における『青春時代』は、制作期間中にリアルタイムにヒットしていたニルヴァーナの『Tiny Goddes』、このアルバムのために作られた彼女のための「新曲」2曲を含む12曲。まあ、フツーに英語曲をまとめて歌いました、というフレッシュな企画アルバム。それゆえ、本国盤オリジナルのジャケットデザインも、ピリっと尖った精彩を放っていた。日本盤CD化(90年)に大幅に遅れること2016年に!? これがようやく「EU盤」として初CD化されたのだが、当時のエディットをそのまま活かした外観。わたしも迷わず購入した。


まさに!これが、ヴォーグレコードからLP『青春時代』が発売された当時の!まんま空気感だったのだが……これが8年後、日本では「見事に牧歌調のほのぼのアルバム」みたいなデザインに差替えられて、初LPリリース。


エピックさんに言わせれば、「昔の、アイドル時代のアルディが〈尖ったイメージ〉では困る」というのだろう。プロモーターと言うのはタレントのイメージ戦略も徹底的に極めてナンボ、の商売。それを いちいち責めるのは本望でない。ただ、日本のアルディ・ファンとしたら、そこんとこまで鳥瞰して「いろいろな方向から(ときには裏側からも)彼女の虚像と実像とのギャップを」愛でられる存在ではありたいなと思うワケで。

ならば…!? わたしはそこで思い立ったw

世のなかには、EPICさんが90年にCD化した『青春時代』を持ってないアルディ・ファンもいるだろう。その人が2年前に出たEU盤CDを購入し、日本盤『青春時代』風にイメージを飾ってみたいと思うかもしれない。それもまた「ひとつのアルディ愛」として認めよう。どころか、この場で【CDジャケ自作】のお手伝いまでしてあげようではないかっ
 
 
制作したのは下図、3つの元画像パーツ。


①表ジャケ クリックすると精細度版(大サイズ)の画像にリンクします。


②裏ジャケ クリックすると精細度版(大サイズ)の画像にリンクします。
※なお、このパーツは日本盤LPやCDには無かった小生のオリジナル作品です。使わせていただいたアルディ60年代当時の横顔写真の版権は、その道の大御所であり彼女の生涯の友人でもある写真家ジャン=マリー・ペリエ氏が有します。© Jean-Marie Périer
 


③ジャケ帯 クリックすると精細度版(大サイズ)の画像にリンクします。

ついでだから? ジャケ帯の裏に解説文を付けてみたw EU盤には英語/仏語でしか載ってないので。(と言っても)その記述を和訳したワケでなく、まったく我流に一から自分で説明してみた。カバー元の原曲情報を調べてみたり、きょうびらしくYoutubeで元アーチスト版を聴き直し、改めて気付かされたり勉強になったり…再認識させられること頻(しき)りである。


以上で【自作キット】は終わりだが、一点だけ(どうしても)お断りしておくことがある。

表ジャケは基本、日本LP盤のデザインに準拠しているが「完全にコピー」というワケではない。なかでも異なっているのは表面中央の、「逆光のなかで憂いのポーズ」をするアルディの画像。

これまた元になったポートレイト写真【画像:左】を見ると、アルディの向かって右手の先(=写真の下方)はセーターの袖口までずっと"地色"の灰色のまま、ナチュラルな色合いで写っている。だが、邦盤LPのそれは(セーターの袖先から右手全体に至るまで)異様に、まるで黄色い消毒液に漬けた?かのごとく不自然に「黄ばんで」いる。
 
日本盤ジャケの制作者が意図的に「着色した」のであろう点に、もはや疑いの余地もない。
 
何でわざわざ、そんな改変を?? おそらく…だが、関わったエディターはオリジナルのままの青っぽい絵柄だと「さめざめとしてて、温かみのある懐かしPOP調の楽曲にイメージが合わない」と考えたのではないか。

わたしの感覚からすると、その(当時のジャケ制作陣の)行いは「美術家として無頓着、無造作すぎる」と思う。何より、撮った写真家に対し失礼で、仮にも撮影者が気難しい人なら(それを知った場合、無断改悪だと主張し)訴えられても不思議はないし、法廷で争えば9割かた敗訴・販売差し止めもあり得たろう。70年代当時のエピックさんは、単に運が良かったのだ。

…というワケで、100%オリジナル写真通りではないにせよ、ここに復刻した表ジャケでは当該「黄ばみ効果」を大きく薄めている。そこが日本盤LPやCDとは「違うんだよ」ということは確たる信条の下に申し上げておく次第である。 =了=
 
 
巻末付録【本作の歴史的背景】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

フランソワーズ・アルディは、60年代フレンチPOPアイドルのなかでは一番、英国出身のジェーン・バーキンを「近くで見ていた人物」であり、異国語たるフランス語曲を操る彼女への尊敬の念もあり、自らも1966年の『IN ENGLISH』以降、数年刻みで英語盤LPをリリースしてきた。いわゆるアイドル歌手として「モデル←→POP歌手」のマルチ芸能活動していた頃の発表音源(ヴォーグ盤)の日本市場における版権を所有していたのは東宝レコード(当時)であったが、東宝は初英語曲アルバムである『IN ENGLISH』こそ日本でもLPリリースするも、2年後に続いた続編アルバム『EN ANGLAIS』に関しては邦盤化を見送った。
 
その後、東宝は採算悪化に伴いレコード事業から撤退。73年から(ソノプレス・レーベルからも出始めた)アルディのアルバムを国内に紹介していたEPICソニーが、76年からは新規ヴォーグ盤についての本邦版権も取得する。だが、実際には76年以降にリリースされるヴォーグ盤の"新作"LPは無く、彼らが出せるのは(東宝レコードが邦盤化しなかった)1966年の旧盤『EN ANGLAIS』のみであった。フランス本国での制作発売から既に8年もの時間を経ていたが、EPICソニーは当該アルバムを「幻の異色アルバム、発掘!!」と銘打って1976年に「本邦初」LP化する決定を下した。当然ながら曲目に「懐かし感」が否めなかったため、タイトルを日本独自に『青春時代』とし、ジャケのデザインも(先進的でクールな単色調だったオリジナル・ジャケでは"、中身の印象とギャップがある"として)あえて野暮ったい、日本の初期フォークアルバム調のデザインに変更された。


あとにしてみれば、本家フランス市場より遥かに「遅れてリリースされた=新し目の作品と認知された」ことで、結果的に日本市場でだけ『EN ANGLAIS』が跳び抜けて「早い時期にCD音源化される」ことに繋がった。フランス本国で「フランソワーズ・マニア」を自認するコアなファンらは、2016年までの長きに渡り、日本から"輸入盤CD"として『青春時代』を取り寄せることに奔走しなければならなかった。
 
= 文責: す⊃ぽんはむ©2018 =
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