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【なぜなに❔薬科教室】 調子コイて「咳止めシロップ」に頼り過ぎる前に 知っておくべき基本知識。

2020年11月15日 | 日記
必ず知っておきたい「せき止めシロップ」の正体。

きょうび、医者に通うカネの無いニート族とか、タバコのせいだからと診療にかからない愛煙家とか、年がら年じゅう日々咳き込みがちでも「せき止めシロップ」を常用してゴマかしてる人の数は少なくないだろう。

今年に入って以降はコロナ禍騒ぎで、ますます人前でゴホンゴホンとやってられない空気が満ち、その圧迫感から逃れようと同シロップ漬けになってる人もいるかもしれない。

が、用法用量の記載によれば「せき止めシロップ」は一般に(成人の場合)、1回10mlを最多でも「1日につき、4時間おきに6回」のペースを越えて服用してはならない。通常は、食後に3回服用してください、と説かれている。働きに出てる日中、すぐにコンコンと喉が咳いてくるから(といって)2₋3時間おきに頻繁に、それこそ4回も5回もゴクリ……というのはなんである。

なぜ、頻繁に飲んじゃダメか。

それには「せき止めシロップ」の役目と成分に対する正しい理解が要る。簡単に定義して、世の「せき止めシロップ」とは何か。ひとまずの説明だと…

「せき止めシロップ」は1杯当たり、ジキニンやパブロンゴールドに代表される「総合感冒薬の顆粒」1包から、鎮痛解熱成分のみを取り除き、10mlの溶液に濃縮した感冒薬である。

…というコトが言える。基本、ごくありきたりの風邪薬なのであって、せき専門に効く特製シロップなのではない。ゆえに何杯も(=何包も)タテ続けに飲んだら絶対に身体の調子がオカしくなる。製薬メーカーや店頭の薬剤師が(飲み過ぎるなと)神経質になって当然の理屈なのだ。

ざっと主成分は、下の画像に並べたようなモノ。単に内容だけじゃなく含量や含有比も、感冒薬顆粒とシロップで大きく変わるところはない。


ちなみに、頭痛も緩和してくれる総合感冒薬は、これにアセトアミノフェンやイブプロフェン、ロキソプロフェンといった(TV-CM等でおなじみの)鎮痛効果の主成分を足して作られるワケだ。

さて。…上掲成分のうち1行目の「ジヒドロコデインリン酸塩」は、言ってしまえば「神経麻痺剤」の一種で、微量なら"せき中枢"を麻痺らせて「せき止め」に使える。弱い麻薬、とも言い換えられようか。

ただ、勧められた用量を守らず「とんでもない量」を一度に飲んじまうと「さらに広範囲の中枢神経抑制薬物」すなわち、モルヒネやヘロインを摂取したような"体調"や感覚をも惹き起こしかねない。無謀なガブ飲みを繰り返せば、常習性や依存性すら生じると言う。
 
 
そんな危険ドラッグが、あんなに甘い理由(ワケ)

とは言うが……良薬が口に苦いだけじゃなく、麻薬だって口に苦い。

フツー、「中枢神経抑制剤」なんて口から飲めたモノではない。ふだんから(パブロンゴールドなど)総合感冒薬の顆粒を直飲みしてるかたなら、その種の「なんとか酸塩」の化合物がどんだけニガい味がするかよくご存じであろう。「せき止めシロップ」の場合、それだけの量の成分が10ml当たりにギュっ❕ と濃縮されてんだから、なおさら飲めっこない。

のに、それが「あんなにも💗甘い」ってのが「せき止めシロップ」の売りであり怖さだ。

実は…それを実現したのが、かのサッカリン。砂糖の300~400倍甘いと言われる人工甘味料の王様なんだな。

この「甘さ爆弾」と混ぜちまえば、あれだけの強い苦みだって打ち消すことができる。あとは仕上げに、白糖と黒糖フレーバーで砂糖っぽい風味を整え、舌への清涼感を与える薬品として(チューインガムにも添加される)ソルビトールをチョイ加えれば……あ~らら不思議「美味しいシロップ仕様❔❔」の出来上がりだ。

と言うように、である……ご存じ「せき止めシロップ」は「せき止めシロップ」であって「せき止めシロップ」ではなかった。その両極端の意味合いを理解して(コロナじゃないが)正しく恐れ、正しく用いる必要がある。

シロップを毎食後3回飲んでるなら、総合感冒薬を(錠剤タイプにせよ顆粒タイプにせよ)併用してはイケない。逆に、頭痛を和らげたくて感冒薬を服用してるならシロップは1日(添付の小カップで)1杯か2杯にとどめるべきである。何度も記すが「シロップだろと感冒薬だろと、基本的に同じ薬」だから、合わせ飲むと過剰摂取の心配が増す。

昨今、たかが「せき止めシロップ」に専属の薬剤師が出てきてあーだこーだ注意を聞かされないと入手できなくなりつつあるのは、それだけの「誤用悪用による弊害が世間に生じてきつつある現実の裏返しなのだ。心しておこう…❕
=了=

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