もう2年も経つのかと思える2018年の西日本大豪雨。
特に広島市の西部一帯は(物的被害は当然のこと)甚大な人的被害を負った。
この地図にも指し示したが、個人的に最もショッキングだったのは居住者12人が亡くなった「大原ハイツ」(安芸郡熊野町川角)の土石流被害だ。
現場は広島市から10キロ圏内にある、小高い丘陵を造成したベッドタウンだ。こういう住宅街というのはサラリーマン目線で言うと、いつの日か「何とか"ヶ丘"の分譲地に庭付きの戸建てを買いたい」ってな人生サクセス願望っ。その中核を占めるバラ色🌹なイメージだ。
ふつー庶民ってもんは、見上げるような裏山とか崖の下は警戒して(わざわざ そこに)家を持とうと思わない。たいして堤が高いワケでもない河川の支流の傍とかも、家を買うなら「自治体のハザードマップで氾濫が想定されてる地区じゃないか」まず事前に調べるだろう。
けど、小高い丘陵にある造成地だとせいぜい盛り土がヤバいかも❔と「地盤の心配」はしても、水害や土砂被害まではまず考えない。考えが及ばない。崩れるよーに思える高所が見当たらないのだから。
実際は違う。なだらかに上る山腹……何キロか先の(昔造られた人工の)ため池が決壊すれば、いっきに巨石を含む土石流が猛スピードで地を駆けてくることもある。まさに、津波の何十倍も狂暴な力を持つ「陸つなみ」となって。
大原ハイツでは(土石流"第2波"のコース最前域に建っていた)5軒が瞬時に土石に圧し潰(つぶ)され、幼い子供を含む12人が犠牲となった。聞いたこともない地鳴りが聞こえたときには、もう遅いのである。そんな「潜在的かつ致命的な居住リスク」を(宅地の購入に際し)不動産業者から説明されていた住人など皆無だったろう。
小高い丘の、閑静な住宅街───それは、わたしのなかで「ひとつの憧憬」のメッキも轟音をたてつつ崩落させた被災ニュースであった。
=了=