おっちーの鉛筆カミカミ

演劇モノづくり大好きおっちーのブログです
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雨粒と息子

2006年11月13日 00時22分37秒 | 小説・短編つれづれ
 昔、蛙の親子が住んでいました。
 蛙の親子は、ナマズが好きでした。
 ナマズが好きといっても、蛙がナマズをとって食うわけではありません。
 かといって、ナマズも蛙をとっては食いません。
 蛙の親子は、池に住むナマズと大の仲良しだったのです。

 ある日、ナマズは蛙のお母さんに言いました。
「なあ、おれも子供が欲しいなあ」
 蛙のお母さんは黙っていました。
「どうしたら子供できるかなあ」
 すると、蛙の息子が言いました。
「知らないの? 子供は卵から生まれるんだよ」
「へえ、そうなの?」
 蛙のお母さんは黙っていました。
「どうしたら卵を産めるかなあ」
 今度は蛙の息子も黙ってしまいました。
「知らないの?」
「ううん、ごめん、わからない」
 蛙の息子はナマズに答えました。
 突然、空から雨が降ってきました。
 大粒の雨でした。
「これはひどい」
 ナマズは水の中に潜り、蛙の親子は急いで岩の陰に隠れました。

 ある日、一匹になってしまった蛙の息子と、ナマズが並んで話をしていました。
「なあ、俺って蛙はどこから来たんだろう」
 蛙の息子がナマズに聞きました。すると、ナマズはすぐに答えました。
「決まってるだろ。お母さんのお腹の中さ」
 蛙の息子はゲコゲコ鳴き始めました。
 ナマズがいつの間にかいなくなっても、蛙の息子はまだ鳴いていました。
 その声は、遠く地平線の彼方まで届いていくようでした。




 今日、部屋の整理をしていたら出てきたノートにこんな短編があるのを発見しました。
 早速投稿。

 ではまた。

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