おっちーの鉛筆カミカミ

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サンタクロースの石川さん

2010年12月05日 01時58分24秒 | 小説・短編つれづれ
 石川さんは悩んでいた。
 今の世の中、何をプレゼントすれば子供達は喜んでくれるんだろう?
 石川さんは、今年の夏にフィンランドでサンタクロースの世界公式資格を取得したばかりである。
 資格を取る際、妻は意外と応援してくれた。しかし、友人の評価はさっぱりだった。
『気でも違ったか。今の子供は親に直接クリスマスプレゼントをねだるくらいだぞ。サンタクロースなんぞ、コスプレの一種だとしか認識しておらん』
 しかし石川さんは、子供たちに夢を与えたかった。それが若い頃からの夢だったのである。
 そうして仕事をリタイアした後、サンタクロースになる決心をした。海外に何ヶ月も滞在した。そして、血の滲むような努力をした。
「そうだ、このアイデアがいい」
 どうやらプレゼントの案が固まったらしい。
 石川さんは真っ赤なコスチュームに身を包み、家の屋根の上にのぼった。
 体はサンタクローズの衣装そのまま、ただし、頭には赤いほっかむりをしている。
 そして、片腕には千両箱のようなものを抱えている。
「ほうら子供たち、プレゼントだぞう~」
 千両箱の中から、石川さんは赤くて長いものを沢山ばらまいた。町中の屋根から屋根に飛び移り、至る所にそれを撒いた。
 しかし子供たちは、家の外に出てこない。
 そりゃそうである。12月の真冬の最中、夜に家を出て、靴下なんぞをわざわざ取りにくる子供が、いるわけがない。
「あんたそりゃ失敗するよ」
 落胆して自宅に戻った石川さんは、妻と話していた。
「しかしウチのご先祖の五右衛門様は、ああやって一般庶民に贈り物を与えていたのだぞ」
「それは小判をばらまいたって話でしょうが。靴下なんて撒いても、今の子供は見向きもしないでしょう?」
「靴下を贈ろうとした私の気持ちがお前に分かるのか?」
「わかりますよ。その靴下を枕元に置いてもらって、サンタクローズを信じる気持ちを子供たちに思い出させようって寸法でしょう」
「むぐ。その通り」
「で、もちろんその靴下の中に入れるプレゼントは用意してあるんで?」
「それは子供たちの親のすることだ」
「あんた馬鹿でしょ」
「いんや、俺は石川五右衛門だ……ゴホゴホ」
「風邪ですか? 顔が赤いですよ」
「あとはトナカイに任せよう」

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2 コメント

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クリスマス 矢菱虎犇さんへ (おっちー)
2010-12-05 12:48:08
ジングルベ~ル企画に参加させていただいて、ほんとありがとうございます!
 長いことご無沙汰でしたが、みなさんの相変わらずのご活躍を確認できて、僕は本当に嬉しいですよ。
 なーんて偉そうに言ってますが、ほんとご無沙汰ですみませんでした!
 それなのに今回の企画に誘っていただいて、矢菱さんには感謝、感謝です。
 まーこの先も忙しいですし、相変わらずマイペースで参るのですが、見限らずによろしくお願いします~!
 あ、そうそう、もう一作品アップしましたのでよろしくお願いします。
 今度はちゃんとコラボしています^^。
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おっちーさんへ (矢菱虎犇)
2010-12-05 08:27:21
石川五右衛門サンタクロース説ってのが何といっても斬新ですねぇ。
千両箱から庶民にお金をばらまいたんだから、やっている行為としてはサンタクロースと同じかも。服装も派手だし。
日本では宗教色をなくすためにいっそ五右衛門が巨大な蝦蟇に乗ってドロドロドロドロ・・・
あ、アレは児雷也か。
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