参院での安全保障関連法案の審議が28日の特別委員会で本格化した。民主党は「法的安定性」に照準を合わせ、集団的自衛権行使をめぐる安倍政権の立場が過去の国会答弁などと矛盾していると追及。「法的安定性は関係ない」と発言した礒崎陽輔首相補佐官の更迭も重ねて求めた。安倍晋三首相は防戦に追われた。
民主党の福山哲郎幹事長代理は同日の質疑で、政府が集団的自衛権の行使を否定した1972年の見解を変更したことをただした。「基本的な論理は維持しつつ、72年見解の当てはめを変えた」と述べた首相に対し、福山氏は「これが法的安定性を損なうことではないか」と反発、「ご都合主義の当てはめの論理」と断じた。
法的安定性とは、安定的な法の適用を確保することで、法に対する信頼を保護する原則。憲法学者から安保法案に対し、「法的安定性を欠くため違憲」との指摘が相次ぎ、報道各社の世論調査で内閣支持率は軒並み急落。こうした中で礒崎氏の発言も飛び出し、民主党は「安倍政権の体質を浮き彫りにするチャンス」(幹部)と捉えた。
安倍政権は、集団的自衛権行使を否定した過去の政府答弁などが、全面的な行使を念頭に置いていると主張してきた。これに関し、福山氏は2004年の政府答弁書や86年の内閣法制局長官答弁などでは限定的な行使も明確に否定していたことを指摘。さらに福山氏は、礒崎氏の更迭を要求したほか、横畠裕介内閣法制局長官にも矛先を向け、「解釈変更を許したことは万死に値する」と非難し、辞任を促した。
首相は礒崎氏の更迭を拒否する一方、菅義偉官房長官が注意した経緯を説明。政権側は当初、礒崎氏の発言を「安全保障環境の変化を十分踏まえる必要があるとの認識を示したもの」(菅氏)と問題視しない構えだったが、与党内からも批判が出るに至り軌道修正した。