読書日記

いろいろな本のレビュー

金正日の正体 重村智計 講談社現代新書

2008-10-23 22:40:38 | Weblog
 
金正日の正体 重村智計 講談社現代新書



 重村氏はもと毎日新聞記者で三十年前から北朝鮮について取材し、記事を書いてきた人物。拓殖大学教授を経て、現在早稲田大学教授。早稲田は自分の母校だ。本書の売りは、金正日に影武者がいる(最大四人)ということと、本物は既に死亡している可能性があるということ。これが本当ならすごいスクープだ。ピューリッア賞ものだ。もう一つ面白かったのが、金正日は1982年から東京へ遊びに来ていたという話。赤坂のレストラン・シアター「コンドンブルー」でショーを見ていたらしい。喜び組のダンスはここでの振り付けをパクッたものだという証言を紹介している。また引田天功のマジックもここで見て感動し、後年北朝鮮に招待したというのもある。金正日の長男の金正男が日本に入国しようとして成田の税関で捕まり、強制送還されたのはそう昔の話ではない。多分父親から「東京はええでえ」と聞かされていたのだろう。
 現北朝鮮の指導者が日本フリークで、アキバオタクの一種だと思うと何か奇妙な感じだ。早く拉致した人々を返しなさいと強談判したら返しそうな気もするが、多分、軍のOKが出ないのだろう。これ以外にも、重村氏は新聞記者時代に培った人脈の情報をもとに色んな話を紹介してくれている。書物だけで研究し発言している大学人とは一線を画している。氏の偉いところは早くから朝鮮総連の正体を見抜いていたことだ。総連が拉致の実行を手助けしていたことを早くから警告していたが、総連にたぶらかされていたマスコミ・政党はそんなことはありえないと、今から思えば犯罪的なコメントを発表するばかりだった。
 金正日は最近、脳梗塞で重篤な状態だと言われるが、本書の指摘のようにもう既に死亡しているのだろうか。本物が死んだら影武者四人も消されるのだろうか。なんだか忍者の世界になってきた。とにかく目が離せないことは確かだ。