
冬晴れへ手を出し足も七十歳 坪内稔典
冬晴れへ足と手を出して、ああ、自分も七十歳なのだなぁ。と感慨を込めて空を見上げる情景とともに、この「手を出し足も」が曲者だと思う。「手も足も出ない」となると。まったく施す手段がなくなって窮地に陥るという意味だが、この言葉を逆手にとって、手も足も出すのだから、なに、七十歳がどうした、これからさ、という気概が感じられる。また「手を出し」でいったん休止を入れて「足も」と音だけで聞くと、伊予弁の「あしも」と重なり。早世した子規と作者が「あしも七十歳ぞ」と唱和しているようだ。「霰散るキリンが卵産む寸前」「びわ食べて君とつるりんしたいなあ」言葉の楽しさ満載の句集である。『ヤツとオレ』(2015)所収。(三宅やよい)
【冬晴れ】 ふゆばれ
◇「冬日和」 ◇「冬晴るる」
冬の冴えわたった晴天。語感は、その晴れようの鋭さ、厳しさを伝える。冬晴れの下でのくっきりとした物象のたたずまいには印象鮮明なものがある。
例句 作者
寒晴や句会なき日は一老人 大牧 広
切通し抜けて田に出る冬日和 藤田あけ烏
冬晴れや朝かと思ふ昼寝ざめ 日野草城
天照るや梅に椿に冬日和 鬼貫
冬晴れて那須野は雲の湧くところ 渡辺水巴
冬晴れの水音鋭がり来る日暮 岸田稚魚
鉄橋に水ゆたかなる冬日和 飯田蛇笏
寒晴や安全ピンといふ不安 千田百里