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暮るるよりさきにともれり枯木の町 大野林火
枯木は、すっかり葉が落ちてまるで枯れてしまったように見える木のことで冬木に比べ生命力が感じられないというが、枯木の町、には風が吹き日があたり人の暮らしがある。まだ空に明るさが残っているうちからぽつりぽつりとともる窓明り。ともれり、が読み手の中で灯る時、冬の情感が街を包んでゆく。この句は昭和二十六年の作だが同年、師であった臼田亜浪が亡くなっている。その追悼句四句の中に〈火鉢の手皆かなしみて来し手なり〉があるが、このかなしみもまた静かにそして確かに、悲しみとなり哀しみとなって作者のみならず読み手の中に広がってゆくだろう。『青水輪』(1953)所収。(今井肖子)
【枯木】 かれき
◇「裸木」(はだかぎ) ◇「枯枝」 ◇「枯木道」 ◇「枯木山」 ◇「枯木宿」 ◇「枯木立」
葉を落として枯れたように見える裸木状態の木である。しかも「枯木」という言葉のもつイメージは、「冬木」とも異なり、孤独で蕭条とした冬の気配を濃厚に伝える。
例句 作者
枯木中少年の日の径あり 川口松太郎
裸木となり一切を拒みけり 川崎陽子
しばらくもやさし枯木の夕附日 其角
枯木中仏に礼し僧帰る 高浜虚子
裸木となりゐて否も応もなし 武田芳枝
裸木のはるかに雲を恋ふるかな 青柳志解樹
裸木を叩けば骨の音がする 源 鬼彦
鶲来て色作りたる枯木かな 原 石鼎
枯木山底割つて川流れゐる 菅原章風
紅櫨と名札かけられ枯木なる 磯野充伯