竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
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もつと軽くもつと軽くと枯蓮  藺草慶子

2019-12-14 | 今日の季語


もつと軽くもつと軽くと枯蓮  藺草慶子

緑あふれる蓮の葉、高貴で香しい蓮の花の時期を通り過ぎ、蓮の骨ともいわれる枯蓮は、耐えがたい哀れを詠むのが倣いである。ところが掲句は一転して、蓮は枯れることで軽くなろうとしているのだと見る。日にさらされ尽くした蓮は、風に触れ合う音さえも軽やかである。それはまるで植物としての使命を終えたのちに訪れる幸福な時間にも思われる。黄金色に輝く杖となった蓮の「もっともっと」のつぶやきは、日のぬくみとともに作者の胸の奥にも静かに広がっていることだろう。『櫻翳』(2015)所収。(土肥あき子)

【枯蓮】 かれはす
◇「枯はちす」 ◇「蓮枯る」 ◇「蓮の骨」
枯れ果てた蓮の姿。冬になると、葉柄が腐って葉身を支えきれずに折れたように垂れ下がる。夏場の爽やかで華やかな姿はすっかり影をひそめ、水面にうなだれて広がる荒涼とした褐色の光景は、残骸のようで痛ましく哀れである。

例句 作者

枯芭蕉日をかへすことなくなりぬ 佐々木有風
枯蓮のうごく時きてみなうごく 西東三鬼
枯蓮の水来て道にあふれけり 久保田万太郎
蓮枯れて水に立つたる矢の如し 水原秋櫻子
枯蓮田暮れて風音のみ残る 滝 佳杖
ひとつ枯れかくて多くの蓮枯るる 秋元不死男
美しき空とりもどす枯蓮 小川千賀
枯蓮にてのひらほどの水残る 三村純也
枯蓮の赤らむ沼と見てはるか 阿部みどり女
かな文字の風情を水に枯蓮 塘 柊風