芥川賞のニュースを聞いて、「おおこれは読まなければ!」といろんな意味で思って、やっと読みました。

いろんな意味で、というのはまず外国語教師として、そして学習者として「外国語で書いた小説ってどのくらいの完成度なのかな~?」というのがひとつ。
もうひとつは、時代的なものです。
「嘘つきアーニャ」でも書きましたが、私は大学入学が90年なのですが、ちょっと珍しい環境でした。
外国語学部の中の日本語学科で、日本人15人と留学生30人で勉強していたんです。
日本人は年が近い人が多いのですが、留学生たちはたいていかなり年上でした。
母国で大学を卒業し、兵役も終え、なかには社会人経験者もいます。
私よりも一回り上といえば、韓国では学生運動も盛んだったようで、政治的な話をされると当時の私にはちんぷんかんぷんでしたが、今になってコン・ジヨン好きなあたりにつながっていたりして。
ターバンの色は好みでコーディネートしていいこと、
内モンゴルと外モンゴルの間にはわだかまりがあること、
韓国ではモンゴルについての勉強はできないこと(当時)
台湾にもフランスにも兵役があること・・などなどその頃知りました。
田舎の高校を卒業したばかりの私にはかなりカルチャーショックでした。
そして、中国からの学生と言えば、ちょうど天安門事件の直後ですから、リアルタイムです。「あの先輩は事件がらみで母国に帰れないらしいよ・・」なんてうわさも聞きました。
そのときはぴんと来なかったんですよね。
今思えば、光州事件にしても天安門事件にしても、
たとえば国会議事堂前でデモをしている市民や大学生にむかって自衛隊が戦車で突っ込む・・というのは私たちには理解を超えることで、
当時の韓国・中国でも信じられない・信じたくない話だったと思います。
さて。
小説の日本語はカンペキで逆に日本人にはこの文章は書けない、これは情景詩の伝統がある中国らしい表現力ではないのかな。
中国の風景と漢詩が効果的に出てきて、読んでいると黄土の乾いた土地とか、朝もやのかかる湖とか、水墨画のような風景が浮かびます。
narinyaさん、ぜひ読んでみてね!
テーマは民主主義を熱望する当時の学生の熱気と天安門後の挫折感ですが、もうひとつのテーマは親子関係なのかな、と思いました。
主人公の恩師である甘先生は、民主化活動のために亡命して家族を捨てます。
その行動は国のために、といっても結局成果をあげているわけではありません。
民主化活動を名目に亡命ビザを取得して日本で成功するもの。
民主化活動で出会った人脈で財を成すもの。
経済活動が悪いとはいえないし、それがひいては家族を守るためだとも思えます。
国をとるか、家族をとるか。
主人公は結局宙ぶらりんのまま、国の家族を思い出し、目の前の子供たちに微笑みます。
どちらにしても、宙ぶらりんのままでも、ヒーローになれなかった人物像がやけにリアルで胸に迫ります。
私たちはこんな二者択一を迫られることはなかったし、これからもないだろうけど・・悩むかな?悩まずに家族を選べるでしょうか。
この文章を韓国語で。

いろんな意味で、というのはまず外国語教師として、そして学習者として「外国語で書いた小説ってどのくらいの完成度なのかな~?」というのがひとつ。
もうひとつは、時代的なものです。
「嘘つきアーニャ」でも書きましたが、私は大学入学が90年なのですが、ちょっと珍しい環境でした。
外国語学部の中の日本語学科で、日本人15人と留学生30人で勉強していたんです。
日本人は年が近い人が多いのですが、留学生たちはたいていかなり年上でした。
母国で大学を卒業し、兵役も終え、なかには社会人経験者もいます。
私よりも一回り上といえば、韓国では学生運動も盛んだったようで、政治的な話をされると当時の私にはちんぷんかんぷんでしたが、今になってコン・ジヨン好きなあたりにつながっていたりして。
ターバンの色は好みでコーディネートしていいこと、
内モンゴルと外モンゴルの間にはわだかまりがあること、
韓国ではモンゴルについての勉強はできないこと(当時)
台湾にもフランスにも兵役があること・・などなどその頃知りました。
田舎の高校を卒業したばかりの私にはかなりカルチャーショックでした。
そして、中国からの学生と言えば、ちょうど天安門事件の直後ですから、リアルタイムです。「あの先輩は事件がらみで母国に帰れないらしいよ・・」なんてうわさも聞きました。
そのときはぴんと来なかったんですよね。
今思えば、光州事件にしても天安門事件にしても、
たとえば国会議事堂前でデモをしている市民や大学生にむかって自衛隊が戦車で突っ込む・・というのは私たちには理解を超えることで、
当時の韓国・中国でも信じられない・信じたくない話だったと思います。
さて。
小説の日本語はカンペキで逆に日本人にはこの文章は書けない、これは情景詩の伝統がある中国らしい表現力ではないのかな。
中国の風景と漢詩が効果的に出てきて、読んでいると黄土の乾いた土地とか、朝もやのかかる湖とか、水墨画のような風景が浮かびます。
narinyaさん、ぜひ読んでみてね!
テーマは民主主義を熱望する当時の学生の熱気と天安門後の挫折感ですが、もうひとつのテーマは親子関係なのかな、と思いました。
主人公の恩師である甘先生は、民主化活動のために亡命して家族を捨てます。
その行動は国のために、といっても結局成果をあげているわけではありません。
民主化活動を名目に亡命ビザを取得して日本で成功するもの。
民主化活動で出会った人脈で財を成すもの。
経済活動が悪いとはいえないし、それがひいては家族を守るためだとも思えます。
国をとるか、家族をとるか。
主人公は結局宙ぶらりんのまま、国の家族を思い出し、目の前の子供たちに微笑みます。
どちらにしても、宙ぶらりんのままでも、ヒーローになれなかった人物像がやけにリアルで胸に迫ります。
私たちはこんな二者択一を迫られることはなかったし、これからもないだろうけど・・悩むかな?悩まずに家族を選べるでしょうか。
この文章を韓国語で。