遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉269 小説 埋もれて(3) 他 政治 その大衆化 

2019-11-17 14:00:48 | つぶやき
          政治 その大衆化(2019.11.14日作)

   この国の政治は大衆化している
   政治が大衆化するーー悪い事ではない
   誰もが政治に係わり 参加出来る
   困る事は 大衆化の中
   政治とは何か ?
   理念を持たない人間が 安易に
   政治の場 国会に登場する事だ
   政治家 国会議員を選ぶ
   芸能人 タレントの 人気投票ではない
   国家 政治への 明解 確かな理念を持たない人間
   その人間達が 権力 名誉 名声 その
   欲望 虚栄心 のみで議員になり 国民の金
   税金を使うーー 国民に対する
   最大級の愚弄行為であり 侮辱
   裏切り行為だ この国日本 今
   この国日本の国政に携わる者達の中
   真の政治家 確たる理念を持った人間は
   果たして 何人いるだろう
   十パーセント ? 二十パーセント ?
   あるいは
   一パーセント ? 二パーセント ?


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          埋もれて(3)

 医師は二か月目だと言った。   
 陽子に取っては思い掛けない喜びだった。
 長男の悟が生まれると、夫はすぐに二人目を望んだのだったが、なぜか恵まれないままに四年が過ぎていた。
 陽子自身も諦めかけていた矢先の事だっただけに、喜びはひとしおだった。
 そして、翌年七月に男の子が生まれた。
 陽子は悪戯盛りの悟に手を焼きながらも、思い掛けず恵まれたもう一つの新しい命を見つめる日々に、悟の時にも増しての母としての喜びを噛み締めていた。慌ただしい日々の中で陽子は、高杉春江への関心もなくしていた。

「こんなものが来ていたよ」
 勤めから帰った夫が往復はがきを差し出して言った。
 高校時代の同窓会通知だった。
「高校の同窓会通知だわ」
 陽子は、はがきに眼を落したまま、呟くように言った。
「いつなの ?」
 夫は陽子の呟きを聞いて、上着を脱ぎながら尋ねた。
「十一月の第二日曜日になっている」
「じゃあ、まだ先だ」
 夫は機嫌よく言った。
「でも、返事は早くしなくちゃ」
「出席するの ?」
 夫は言った。
「どうしようかなあ」
 陽子は迷った。まだ生まれて四か月程の孝に思いが走った。
「主席すればいいじゃないか」
 夫はためらう事もなく言った。
「でも、孝もいるし」
 迷いは消えなかった。
「大丈夫だよ。一日ぐらい、おれだって見てやれるよ」
 陽子は同窓会には一度も出席していなかった。母の看病で神経をすり減らしていた陽子にしてみれば、同窓会どころの話しではなかった。同級生達と顔を合わせる事さえも避けたい気持ちが強かった。母を亡くしてからも、悲しみを抱いた心は知らず知らずのうちに孤独の中に籠りがちになっていた。
 だが、その母も亡くなってから既に、十年の歳月が過ぎていた。その上に今では、母を失った哀しみを補って余りある幸せがあった。同級生達と顔を合わせても、対等に明るく話しが出来るような気がした。

          二

 同窓会の日の朝、陽子は五時に起きて洗濯を済ませ、食事の支度をした。
 普段の日曜日よりは二時間以上も早く起きてしまった夫と食事をして、孝のためのミルクを作り、午前九時少し前に家を出た。
 市川市の自宅から千葉市内にある会場のホテルまでは、電車を利用して一時間程だった。十一時に始まる時間までには充分間に合うだろう。
 すっかり忘れてしまっていた、独身気分の外出に陽子の気持ちは上ずっていた。
 足が地に着かない感覚を覚えて戸惑った。             
 バスの中でも電車の中でも、周囲の視線がしきりに気になった。       
 普段、着慣れない真新しい服や、履き慣れないハイヒール。濃い目の口紅や厚めのファンデーション。更に、付け慣れないイャリングにネックレスーー、それらの総てが気持ちにしっくり来なくて落ち着かなかった。               
 今更ながらに、華やいだ世界とは無縁の生活に埋(う)もれていた自分の日常が思い遣られて惨めな気分になった。久し振りの独身気取りや、二十年振りに同級生達と会う事への気持ちの昂ぶりも、その惨めさの中でたちまち萎えていた。夫と子供がいる家庭だけが自分には、唯一、心休まる場所であり、似合っている場所に思えて来て、里心にも似た心の揺れを覚えた。
 タクシーで会場のホテルへ着いた時には、ロビーのあちこちに再会を懐かしむ同級生達の輪が出来ていた。その様子を見ると陽子は、いつの間にか、電車の中で抱いた気持ちの揺れも忘れていた。正面玄関の回転扉を押して中へ入る時には、期待と微かな不安で胸の鼓動が速くなった。
「あら ! 宇津木さんよ、珍しい !」
 誰かの甲高い声がして、その声に釣られたように同級生たちの眼が一斉に陽子に向けられた。
 陽子は思わぬ視線の攻勢にたじろいだ。それでも、記憶に繋がる何人かの顔を眼にすると、すぐに高校時代の自分に還っていた。奇妙にさっぱりと、惨めな自分を忘れる事が出来た。
 高校時代の陽子はいつも主役だった。誰もが、その主役を認めていた。
 何人かの女性達が陽子の傍へ走り寄って来た。
「お久し振り !」
「珍しいじゃない ! 何年振り ?」
 そんな言葉が昂揚した気分の中で飛び交った。
 ひとしきりの手を取り合ったり、肩を抱いたりの挨拶が済むと、陽子は眼が合う誰彼にとなく会釈した。男性の中にも、女性の中にも、全く思い出せなくなった人が何人もいた。二十年の歳月がそれぞれに思い掛けない特徴を描き出しながら、誰の上にも確実に過ぎ去った時の流れを刻み付けていた。
「今日は鈴木春江さんも来るわよ」 
 誰かが言った。
「そうそう、そんな事を言ってたわね」
 田口道代が応じた。
 陽子は胸を突かれた。と同時に、一瞬のうちに理解した。
 今まで解けなかった高杉春江を見た時の気持ちの落ち着きのなさが、瞬く間に氷塊してゆくのが分かった。
「あの人、最近、随分、テレビや新聞などに出るようになったわね」
 三上達子が言った。
「誰 ? 鈴木さん ?」
 陽子は聞いた。
「そうよ。高杉春江っていう名前で出ているでしょう」
 田口道代が言った。
「あの人、鈴木さんだったの ?」
 陽子はその時、なぜか、心の何処かに諦念にも似た気持ちを抱きながら、静かに聞いた。
「そうよ」
「だって、昔の面影がぜんぜんないじゃない」
 陽子は穏やかに言った。
「大学を出て、少しお勤めをしたんだけど、すぐに結婚しちゃったの。それで、旦那さんが仕事の関係でアメリカへ行ったものだから、春江さんも一緒に行って、向こうでまた、大学に入ったらしいの。それが、五、六年前に帰って来て、N短大で教えるようになったのね。それから少ししてからよ。テレビなんかに出るようになったのは」 
 三上達子が言った。
「高校時代は目立たなかったけど、今ではあの人、わたし達クラスの出世頭よ」 
 田口道代が称賛を込めた口調で言った。
 陽子はその言葉を聞きながら、この時初めて、自分の中に小さく生まれる嫉妬の心を覚えた。一介の主婦にしか過ぎない自分と、華やかに脚光を浴びる春江の生活とが意識の中で対比された。
 高校時代の春江は陽子のライバルでさえなかった。
 陽子は思いがけず動揺する心を懸命に抑えながら、何気なくと努める笑顔がぎごちなく強張った。現在の春江を羨望せずにはいられなかた。マスコミなどで華々しく活躍する事は、かつて陽子が夢見た事であった。
 高杉春江はみんなが会場へ向かおうとする十時、間際になってようやく姿を見せた。
 
 

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                              KYUKOTOKKYU9190様

         有り難う御座います

         涼風鈴子ディスクジョッキー
         相変わらず、好調ですね。
         でも、ちっょと暴走気味ではないですか。
         そのめちゃくちゃが、また、おかしい。
         次回も楽しみにしています。


  


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