田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『宇宙戦争』

2019-12-10 11:44:05 | 映画いろいろ
『宇宙戦争』(05)(2005.7.18.品川プリンスシネマ)


 「『宇宙戦争』は、スピルバーグが『激突!』(71)の頃の恐怖に戻っただけ…」という映画評を読んだ。確かに『未知との遭遇』(77)『E.T.』(82)で、それまで敵対、侵略というイメージが強かった異星人を、あえて友好や友情という視点から描いてみせた彼が、何故いまさら古典に戻ったのかという点に興味があったのだが、もともと彼は『激突!』や『ジョーズ』(75)、あるいは『ジュラシック・パーク』(93)で観客を大いに怖がらせていたのだ。
 
 なるほど、その延長線上に『宇宙戦争』を置けば分からないことはないか。まあ見てみないことには話しにならないが。
 
 というわけで、品川プリンスシネマのレイトショーで『宇宙戦争』を見た。
 
 見てみると、これまでスピルバーグがさまざまな映画の中で用いてきた手法が、いろいろな形で盛り込まれた作品になっていた。
 
 例えば、冒頭の姿なき恐怖の見せ方は『激突!』や『ジョーズ』、容赦なくたたみかけ、見る者を一気に極限状態に引き込む手法は『プライベート・ライアン』(98)、未知の巨大なるものに対するカメラ・アングルは『未知との遭遇』、トム・クルーズのピンチの連続からの脱出劇は『インディ・ジョーンズ』シリーズといった具合。
 
 中でも、最も近いのは『ジュラシック・パーク』のタッチだろうか。いずれにせよ、映像や音の使い方、色使いなどはさすがにうまい。ラストの失速と、取って付けたような家族の再生劇に多少の不満は残るものの、同時多発テロを経験したアメリカが抱く“見えない恐怖”を最初に具体化した映画であり、悪夢を映像化した映画としても忘れ難いものとなった。
 
 そのスピルバーグが『宇宙戦争』についてのインタビューで、興味深いコメントをしていた。
 
 「1970~80年代には、空を見上げて美しいと思ったが、今は緊張し恐怖を感じる。現代は、ここ数十年で恐ろしい場所になった。私の映画は、その時代を反映する。今、気楽な映画を作るのは無責任だと思う」
 
 「(H・G・ウェルズの原作は)宇宙人の侵略に託して、社会批判が込められているから、世の中が不安になると注目を集めてきた。出版は19世紀末の英国の植民地支配の時代、(オーソン・ウェルズの)ラジオ劇は第二次大戦の直前、初の映画化は冷戦の最中。そして今、9.11の影におびえている」

 なるほどと思ったら、今度はロンドンで多発テロが起きた…。
 
     
 
【インタビュー】『レディ・プレイヤー1』スティーブン・スピルバーグ監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0252d427482eb27bb9e501c5b7b8acce 
 
【コラム】「1980年代が再びブームに スピルバーグの映画から」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/85e114aac84e6082e0b867b9fbf80cd5
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『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』 のんにインタビュー

2019-12-10 09:56:29 | 仕事いろいろ
 『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の、のんにインタビュー。
 

 ついでに「スペシャルライブ付き特別試写会」を取材。
https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1207741
 
 『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f00547298647c7c4bc6b12076f7f5f96
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『男はつらいよ 旅と女と寅次郎』

2019-12-10 06:13:58 | 男はつらいよ
『男はつらいよ 旅と女と寅次郎』(83)(1983.8.22.蒲田ロキシー)


 今回は、本物の都はるみと、彼女が演じた歌手のイメージが重なり過ぎて、何だか『男はつらいよ』を見た気がしない。寅さんが脇役になってしまっているのだ。ここまでくると、いよいよ労作尽きた感がある。
 
 マドンナに都はるみ、という話を聞いた時から嫌な予感はしていたのだが、これでは以前よく作られていた歌謡曲映画とあまり変わらない。今までのシリーズが保ってきた味を消してしまったと言っても過言ではない。
 
 一体、山田洋次は何を意図してこの映画を作ったのだろうか。それはシリーズ31作ともなれば、マンネリも、ネタ切れもやむを得ない。むしろ、ここまで一定のレベルを保ってきたこのシリーズの出来には驚くべきものがあるのだが、苦しさのあまりとはいえ、いまさら寅さんの世界に、有名人の孤独や悲哀を描くことに何のプラスがあったのか、という疑問が拭えなかった。 
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