『宇宙戦争』(05)(2005.7.18.品川プリンスシネマ)
「『宇宙戦争』は、スピルバーグが『激突!』(71)の頃の恐怖に戻っただけ…」という映画評を読んだ。確かに『未知との遭遇』(77)や『E.T.』(82)で、それまで敵対、侵略というイメージが強かった異星人を、あえて友好や友情という視点から描いてみせた彼が、何故いまさら古典に戻ったのかという点に興味があったのだが、もともと彼は『激突!』や『ジョーズ』(75)、あるいは『ジュラシック・パーク』(93)で観客を大いに怖がらせていたのだ。
なるほど、その延長線上に『宇宙戦争』を置けば分からないことはないか。まあ見てみないことには話しにならないが。
というわけで、品川プリンスシネマのレイトショーで『宇宙戦争』を見た。
見てみると、これまでスピルバーグがさまざまな映画の中で用いてきた手法が、いろいろな形で盛り込まれた作品になっていた。
例えば、冒頭の姿なき恐怖の見せ方は『激突!』や『ジョーズ』、容赦なくたたみかけ、見る者を一気に極限状態に引き込む手法は『プライベート・ライアン』(98)、未知の巨大なるものに対するカメラ・アングルは『未知との遭遇』、トム・クルーズのピンチの連続からの脱出劇は『インディ・ジョーンズ』シリーズといった具合。
中でも、最も近いのは『ジュラシック・パーク』のタッチだろうか。いずれにせよ、映像や音の使い方、色使いなどはさすがにうまい。ラストの失速と、取って付けたような家族の再生劇に多少の不満は残るものの、同時多発テロを経験したアメリカが抱く“見えない恐怖”を最初に具体化した映画であり、悪夢を映像化した映画としても忘れ難いものとなった。
そのスピルバーグが『宇宙戦争』についてのインタビューで、興味深いコメントをしていた。
「1970~80年代には、空を見上げて美しいと思ったが、今は緊張し恐怖を感じる。現代は、ここ数十年で恐ろしい場所になった。私の映画は、その時代を反映する。今、気楽な映画を作るのは無責任だと思う」
「(H・G・ウェルズの原作は)宇宙人の侵略に託して、社会批判が込められているから、世の中が不安になると注目を集めてきた。出版は19世紀末の英国の植民地支配の時代、(オーソン・ウェルズの)ラジオ劇は第二次大戦の直前、初の映画化は冷戦の最中。そして今、9.11の影におびえている」
なるほどと思ったら、今度はロンドンで多発テロが起きた…。
【インタビュー】『レディ・プレイヤー1』スティーブン・スピルバーグ監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0252d427482eb27bb9e501c5b7b8acce
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【コラム】「1980年代が再びブームに スピルバーグの映画から」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/85e114aac84e6082e0b867b9fbf80cd5
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