『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』(85)(1987.12.28.)
今回は、マドンナの栗原小巻が離島の教師を演じている。寅さん版の『二十四の瞳』といった感じで、山田洋次がシリーズ内でよく描く、寅さんと学校とのからみがここでも描かれているが、現代の若者像も含めて、少々甘い気がしないでもない。
それは、最近のこのシリーズに感じ始めた、変わらぬ故郷や家族に対するいとおしさとは別に、常に感じる歯がゆさとも似ている。これは、もはや寅さん一人のエピソードでは成り立たなくなったシリーズの限界を示しているのかもしれないし、山田洋次の弱点を露呈している気もする。
ところで、このところ、タコ社長(太宰久雄)の娘の朱美役で美保純が出ているが、ドラムの役割を果たしてきた社長に元気がなくなってきたことと、レギュラー陣の動きが緩くなったので、そのカンフル剤的な役目を期待しているのだという。確かに、この映画は朱美で持っているところもある。