田中雄二の「映画の王様」

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『映画の森』★名ぜりふシリーズ【後編】『ローマの休日』「人生は思うようにならない」転載

2020-09-02 15:19:31 | 映画の森

「KyodoWeekly」7月27日号から★名ぜりふシリーズ【後編】『ローマの休日』「人生は思うようにならない」共同通信のニュースサイトに転載

https://www.kyodo.co.jp/national-culture/2020-09-02_3083436/

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『アジャストメント』

2020-09-02 07:02:37 | ブラウン管の映画館

『アジャストメント』(2011.4.15.東宝東和試写室)

 原作はフィリップ・K・ディックで、原題は「アジャストメント・ビューロー=運命調整局」。全ての人の運命は謎の集団によって操作され、調整されている。謎の集団の正体は神に遣わされた天使たちなのか…。好きになった女性(エミリー・ブラント)との仲を執拗に引き裂こうとする彼らに、マット・デイモン扮する若手政治家が懸命に抗うというのが大筋。

 全体としては、すれ違いの恋愛劇とSFミステリーを併せたような形になっている。筋が分からない間は、この後はどうなるとわくわくさせられるが、途中から展開が支離滅裂になり、最後は失速してしまう。

 『ブレード・ランナー』(82)のアンドロイド、『トータル・リコール』(90)の模造記憶、『マイノリティ・リポート』(02)の予知能力者、そして本作の運命調整局など、ディックの原作は魅力的なアイデアにあふれているから、一見、映画化しやすいように思える。

 例えば、本作のドアを開けたら別の場所という、ドラえもんの「どこでもドア」にも似たシーンは、確かに映画だからこそ表現できるものではある。

 だが、ディックの作品の核となる支離滅裂で観念的な部分は、想像力を必要とする文学的な表現には向くが、視覚に訴える映像には向かないと思う。実際、本作も含めて、アイデア倒れで中途半端な出来になってしまった映画の方が多い気がする。

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『嵐を呼ぶ男』

2020-09-02 07:00:37 | ブラウン管の映画館
『嵐を呼ぶ男』(57)(1987.7.19.)
 
 
 熱血漢だが心は優しい国分正一(石原裕次郎)が、女性マネージャー(北原三枝)に才能を見いだされ、一流のジャズドラマーを目指す姿を描く。「俺らはドラマー やくざなドラマー」の歌も有名な、石原裕次郎の代表作。
 
 昭和30年代の映画全盛期、タフガイと呼ばれ、一世を風靡した石原裕次郎だが、それに間に合わなかった俺たちの世代にとっては、テレビの「太陽にほえろ」のボス役が最も印象深い。とはいえ、映画出演の初期は、この映画のように家族との関係に悩むナイーブな青年を、ジェームズ・ディーンを意識しながら演じていたようだ。
 
 この映画は、井上梅次監督が自身の小説を基に映画化したものだが、アイデアはジェームズ・キャグニー主演の『栄光の都』(40)から頂戴しているらしい。当時は著作権が今ほどうるさくなかったこともあるが、日活は他にも『赤い波止場』(58)『望郷』(37)から、『赤いハンカチ』(60)『第三の男』(49)から、『銀座の恋の物語』(62)『めぐり逢い』(57)から、『夜霧よ今夜も有難う』(67)『カサブランカ』(42)から、という具合に、欧米の映画からアイデアを頂戴しながら日本的な映画に仕立て上げるという、エネルギッシュなしたたかさを示している。裕次郎はそれを体現したスターだったとも言えるだろう。
 
 この映画も『狂った果実』(56)同様、脇役の岡田真澄が光る。エッセイストの冨田均が名付けた、五反田の助川ダンス横の“裕次郎坂”がちらっと映る。
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