「KyodoWeekly」7月27日号から★名ぜりふシリーズ【後編】『ローマの休日』「人生は思うようにならない」共同通信のニュースサイトに転載
https://www.kyodo.co.jp/national-culture/2020-09-02_3083436/
「KyodoWeekly」7月27日号から★名ぜりふシリーズ【後編】『ローマの休日』「人生は思うようにならない」共同通信のニュースサイトに転載
https://www.kyodo.co.jp/national-culture/2020-09-02_3083436/
『アジャストメント』(2011.4.15.東宝東和試写室)
原作はフィリップ・K・ディックで、原題は「アジャストメント・ビューロー=運命調整局」。全ての人の運命は謎の集団によって操作され、調整されている。謎の集団の正体は神に遣わされた天使たちなのか…。好きになった女性(エミリー・ブラント)との仲を執拗に引き裂こうとする彼らに、マット・デイモン扮する若手政治家が懸命に抗うというのが大筋。
全体としては、すれ違いの恋愛劇とSFミステリーを併せたような形になっている。筋が分からない間は、この後はどうなるとわくわくさせられるが、途中から展開が支離滅裂になり、最後は失速してしまう。
『ブレード・ランナー』(82)のアンドロイド、『トータル・リコール』(90)の模造記憶、『マイノリティ・リポート』(02)の予知能力者、そして本作の運命調整局など、ディックの原作は魅力的なアイデアにあふれているから、一見、映画化しやすいように思える。
例えば、本作のドアを開けたら別の場所という、ドラえもんの「どこでもドア」にも似たシーンは、確かに映画だからこそ表現できるものではある。
だが、ディックの作品の核となる支離滅裂で観念的な部分は、想像力を必要とする文学的な表現には向くが、視覚に訴える映像には向かないと思う。実際、本作も含めて、アイデア倒れで中途半端な出来になってしまった映画の方が多い気がする。