『ダークナイト ライジング』(12)(2012.7.29.MOVIX亀有)
ちゃんとヒーロー論になっている
夫:“夢の夢”という多重世界を描いた『インセブション』(10)もそうだったけど、クリストファー・ノーラン監督の脚本と映像は、支離滅裂だけどパワフルで、どこか狂気を感じさせられるところがあるね。
妻:3Dにしなくても十分に迫力あります。トム・ハーディのガタイも迫力ありましたわ。
夫:前半は重苦しくて静かなタッチなんだけど、中盤からは一転して、スピード感にあふれたアクションを展開させて一気にラストまで押し切ってしまうという強引な力業を発揮していた。特にバットマン(クリスチャン・ベール)と敵役のベイン(トム・ハーディ)が繰り広げるタフな殴り合いがすごかった。パンチの重みがもろに感じられるような生身のアクションに好感が持てたよ。
妻:バスッ、ドスッ、という過剰な重低音演出に頼らない画面ね。
夫:ただ、今回も屈折に満ちていて暗かったね。バットマン=ブルース・ウェインはもちろん、ほかの登場人物たちも、善悪を問わず、みんなが過去をひきずり、心に傷を負っているという設定。だからバットマンとベイン、キャットウーマン(アン・ハサウェイ)とミランダ(マリオン・コティヤール)という対立する人物たちも、単純な正義対悪ではなく、コインの裏表みたいな複雑な存在として描かれていた。とは言え、その中にきちんとヒーロー論を展開させ、ちゃんと後継ぎも描くあたりにノーランの才気を感じるけど。
妻:暗くてもいいのよ。アメコミの世界なんだから、その暗さはカッコいい暗さなの。脚本はよくできていると思うよ。
夫:ところでこの映画における「ライジング」の意味は? まだ続きそうだけど…。
妻:「続く」か?
旧ブログ「お気楽映画談議」より