田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ダークナイト ライジング』

2020-09-27 15:01:32 | 映画いろいろ

『ダークナイト ライジング』(12)(2012.7.29.MOVIX亀有)

ちゃんとヒーロー論になっている


 
夫:“夢の夢”という多重世界を描いた『インセブション』(10)もそうだったけど、クリストファー・ノーラン監督の脚本と映像は、支離滅裂だけどパワフルで、どこか狂気を感じさせられるところがあるね。

妻:3Dにしなくても十分に迫力あります。トム・ハーディのガタイも迫力ありましたわ。

夫:前半は重苦しくて静かなタッチなんだけど、中盤からは一転して、スピード感にあふれたアクションを展開させて一気にラストまで押し切ってしまうという強引な力業を発揮していた。特にバットマン(クリスチャン・ベール)と敵役のベイン(トム・ハーディ)が繰り広げるタフな殴り合いがすごかった。パンチの重みがもろに感じられるような生身のアクションに好感が持てたよ。

妻:バスッ、ドスッ、という過剰な重低音演出に頼らない画面ね。

夫:ただ、今回も屈折に満ちていて暗かったね。バットマン=ブルース・ウェインはもちろん、ほかの登場人物たちも、善悪を問わず、みんなが過去をひきずり、心に傷を負っているという設定。だからバットマンとベイン、キャットウーマン(アン・ハサウェイ)とミランダ(マリオン・コティヤール)という対立する人物たちも、単純な正義対悪ではなく、コインの裏表みたいな複雑な存在として描かれていた。とは言え、その中にきちんとヒーロー論を展開させ、ちゃんと後継ぎも描くあたりにノーランの才気を感じるけど。

妻:暗くてもいいのよ。アメコミの世界なんだから、その暗さはカッコいい暗さなの。脚本はよくできていると思うよ。

夫:ところでこの映画における「ライジング」の意味は? まだ続きそうだけど…。

妻:「続く」か?

旧ブログ「お気楽映画談議」より

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『メメント』

2020-09-27 13:36:27 | ブラウン管の映画館

『メメント』(00)

 時間の逆行を描いたクリストファー・ノーラン監督の新作『TENET テネット』を見る前に、復習しておきたいと思っていた『メメント』が、折り良く「ザ・シネマ」で放送された。

 この映画の主人公は、妻を殺害した男への復讐の機会を狙う、前向性健忘(記憶が10分しか持たない)のレナード(ガイ・ピアース)。「Memento」とはラテン語で「忘れるな」という意味。 

 そんなこの映画は、レナードの行動を映すカラー映像と、モーテルの一室で電話をするレナードを映すモノクロ映像が交互に現れる。そして、カラー映像は物語の終わりから始めへと逆行し、モノクロ映像は始めから終わりへと進んでいく。つまり、物語のある一点に向かって時間軸の両端から描いていくという手法が取られているのだ。

 だから、頭の中が混乱しながらも、一体これはどう収拾をつけるのか、という興味が湧いて、つい最後まで見てしまう。けれども、見終わっても、すっきりとはせず、分かったような分からないような、もやもやしたものが残る。

 DVDには、時系列順にしたバージョンも収録されているようだが、それでは『ゴッドファーザーPARTⅡ』(74)『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(84)の時系列順版のように、魅力が半減するだろう。この映画の場合は、ある意味、もやもや感が魅力なのだから。

 ノーランはSF作の『インセプション』(10)『インターステラー』(14)はもとより、実録ものの『ダンケルク』(17)ですら、時間の流れや記憶にこだわっているが、それはデビュー間もないこの映画から始まっていたことになる。『TENET テネット』は、その集大成的なものなのか。さて、見に行くとするか。

【インタビュー】『ダンケルク』クリストファー・ノーラン監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/563b964893e573512ff2b9a1b807ec3e 

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