名作映画をモチーフに、焼失した映画館と、映画で結ばれた人々を描いた連作短篇集。登場する映画は 『ニュー・シネマ・パラダイス』(88)『レオン』(94)『ハチ公物語』(87)『マディソン郡の橋』(92)『小さな恋のメロディ』(71)『愛と喝采の日々』(77)『ローマの休日』(53)『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)。
金城一紀の『映画篇』や、原田マハの『キネマの神様』と同様の、「映画と映画館が起こす奇跡」という題材を、手練れの脚本家が書くとこうなるのか、という感じがした。題材となった映画の選択は、自身の思い入れの強さからではなく、話にしやすいものを選んだような印象を受けたからだ。
だから、確かに、一気に読ませるうまさはあるのだが、作者自身が“映画は人生を変える”と信じながら書いたと思われる前者2編に比べると、映画への愛よりも、作為や便宜的なものを強く感じてしまうところがあった。
『キネマの神様』(原田マハ)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8028269b0cf5e5baa9d099d34fda3589
若い人が書いた映画館を舞台にしたライトノベルもある。
『古書街キネマの案内人 おもいで映画の謎、解き明かします』(大泉貴)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6d97b5672a79cf2dd48c688097bd7e6e
『名画座パラディーゾ 朝霧千映のロジック』(桑野和昭)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/beb69a8ba3e1c71f008eb5955dd5a974