田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『追憶映画館 テアトル茜橋の奇跡(伴一彦)

2020-09-25 11:09:08 | ブックレビュー

 名作映画をモチーフに、焼失した映画館と、映画で結ばれた人々を描いた連作短篇集。登場する映画は 『ニュー・シネマ・パラダイス』(88)『レオン』(94)『ハチ公物語』(87)『マディソン郡の橋』(92)『小さな恋のメロディ』(71)『愛と喝采の日々』(77)『ローマの休日』(53)『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)
 
 金城一紀の『映画篇』や、原田マハの『キネマの神様』と同様の、「映画と映画館が起こす奇跡」という題材を、手練れの脚本家が書くとこうなるのか、という感じがした。題材となった映画の選択は、自身の思い入れの強さからではなく、話にしやすいものを選んだような印象を受けたからだ。

 だから、確かに、一気に読ませるうまさはあるのだが、作者自身が“映画は人生を変える”と信じながら書いたと思われる前者2編に比べると、映画への愛よりも、作為や便宜的なものを強く感じてしまうところがあった。

『キネマの神様』(原田マハ)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8028269b0cf5e5baa9d099d34fda3589

若い人が書いた映画館を舞台にしたライトノベルもある。

『古書街キネマの案内人 おもいで映画の謎、解き明かします』(大泉貴)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6d97b5672a79cf2dd48c688097bd7e6e

『名画座パラディーゾ 朝霧千映のロジック』(桑野和昭)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/beb69a8ba3e1c71f008eb5955dd5a974

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『DESTINY 鎌倉ものがたり』「金曜ロードショー」

2020-09-25 07:14:36 | ブラウン管の映画館

 今日の「金曜ロードショー」は、監督、脚本の山崎貴をはじめ、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズのチームが、再び西岸良平の漫画を映画化した『DESTINY 鎌倉ものがたり』(17)。田中泯の貧乏神がなかなか良かった。

【ほぼ週刊映画コラム】『DESTINY 鎌倉ものがたり』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/c1d02b056247284d42b5301a6160edd6

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『大いなる西部』

2020-09-25 07:02:58 | 1950年代小型パンフレット

『大いなる西部』(58)(2012.10.17.鎌倉市川喜多映画記念館)



 一時期、妻と共に「お気楽映画談議」というブログをやっていた。その時の記事から。

 夫…この映画の主人公はグレゴリー・ペック扮する東部から西部にやって来たマッケイ。ところが、本来ヒーローであるはずの彼の行動や言動が何だか身勝手に見えて感情移入ができないんだな。むしろ彼と敵対するチャールトン・ヘストン演じる西部の牧童頭リーチの方が魅力的だし、行動や心情にも一本筋が通っている。というわけで、この映画はヒーロー西部劇としてはちょっと異端なんだね。プロデューサーも兼任したペックが、あえて自分を損な役回りにしたのだとすれば、それはそれですごいと思うけど…。

 妻…初めて見た時はペックのさわやかさにやられてしまいましたが、今回は違ったぞ。マッケイの空気読めなさ加減にうんざり。人の忠告を聞かない、自分が大好きな男なんだから。

 夫…この映画はペックVSヘストンというヘビー級の対決に加えて、水源地をめぐるバール・アイブスとチャールズ・ビックフォードの旧世代の親父同士の対決、マッケイを間に挟んだジーン・シモンズとキャロル・ベイカーの女同士の対決が描かれているけど、そんな中、一人で右往左往するチャック・コナーズのドラ息子も結構いいんだよね。

 妻…チャック・コナーズのダメダメぶりがかわいいです。

 夫…後は、対立する両家の間をひょうひょうと渡り歩く牧童を演じたメキシコ人俳優のアルフォンソ・ベドヤがいいね。彼はジョン・ヒューストン監督の『黄金』(48)などにも出ていた名脇役だけど、残念ながらこの『大いなる西部』が遺作なんだね。

 妻…そんな人いたっけ? 毎度、顔と名前が一致せん。『黄金』は私のベスト映画の一本ですが…

 夫…ペックが乗る荒馬の世話をしていて、ラストでペックとシモンズと共に馬に乗って去っていく彼だってば。

 夫…この映画の日本公開当時(1958)の批評を読むと「ウィリアム・ワイラー監督の横綱相撲」なんてことが書いてあって、すこぶる評判がいい。寂しいことに、今やワイラーの名前は、オードリー・ヘプバーンの『ローマの休日』(53)の監督としてしか語られないところがあるけれど、当時は巨匠中の巨匠という存在だったんだよね。

『これぞ映画遺産!!次世代に残したい名作映画96』 


パンフレット(58・松竹事業部(SHOCHIKU KAiKAN CENTRAL THEATRE 1959 NO33.))の主な内容は
「大いなる西部の六人」「大いなる西部」印象的の場面/ルファス・ヘネシイ/激闘シーンに実に十四時間を費やす/物語/出演者の横顔/大いなる西部に就いて(南部圭之助)/ウィリアム・ワイラー大河監督とその足跡/西部劇の歴史・西部劇百科(南圭生)

 

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