今週の朝ドラ「おちょやん」は、女優の高城百合子(井川遥)と元助監督の小暮真治(若葉竜也)が、千代(杉咲花)と一平(成田凌)の前に現れた。2人は、結婚して旅回りの芝居をしているが、時節に合わない芝居の内容から特高警察に追われているという。そんな2人を、千代と一平がかくまい、逃がしてやる様子が描かれた。また、藤山寛美をモデルにしたと思われる松島寛治(前田旺志郎)も登場してきた。
先日、新作映画『くれなずめ』に出演した若葉にインタビューした際に、彼が「『おちょやん』には、まだ出ます」と言っていたが、なるほどこういう出方だったのか。
ところで、このエピソードは、「愛の逃避行」と言われた、女優の岡田嘉子と共産主義者の演出家・杉本良吉のソ連への亡命を基にしたと思われる。これは、山田洋次監督の『キネマの天地』(86)でも挿話として描かれていた。
一平のモデルの渋谷天外が、当時共産主義にかぶれていいて、2人に逃走資金をカンパしたといううわさはあるようだが、千代のモデルの浪花千栄子との直接の接点は浮かんでこない。まあ、あくまで実話を基にしたフィクションなのだから、とやかく言うこともないのだが…。
岡田のことは、後年ソ連から帰国し、日本画壇の大家(宇野重吉)の昔の恋人役を演じた山田監督の『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』(76)、嵐寛寿郎と夫婦役を演じた大森一樹監督の『オレンジロード急行』(78)でその存在を知った。どちらも、品のいいおばあさんといった印象だったので、後から波瀾万丈の前半生を知って驚いた記憶がある。
浪花千栄子
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