田中雄二の「映画の王様」

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「おちょやん」 岡田嘉子「愛の逃避行」

2021-03-26 12:28:42 | テレビ

 

 今週の朝ドラ「おちょやん」は、女優の高城百合子(井川遥)と元助監督の小暮真治(若葉竜也)が、千代(杉咲花)と一平(成田凌)の前に現れた。2人は、結婚して旅回りの芝居をしているが、時節に合わない芝居の内容から特高警察に追われているという。そんな2人を、千代と一平がかくまい、逃がしてやる様子が描かれた。また、藤山寛美をモデルにしたと思われる松島寛治(前田旺志郎)も登場してきた。

 先日、新作映画『くれなずめ』に出演した若葉にインタビューした際に、彼が「『おちょやん』には、まだ出ます」と言っていたが、なるほどこういう出方だったのか。

 ところで、このエピソードは、「愛の逃避行」と言われた、女優の岡田嘉子と共産主義者の演出家・杉本良吉のソ連への亡命を基にしたと思われる。これは、山田洋次監督の『キネマの天地』(86)でも挿話として描かれていた。

 一平のモデルの渋谷天外が、当時共産主義にかぶれていいて、2人に逃走資金をカンパしたといううわさはあるようだが、千代のモデルの浪花千栄子との直接の接点は浮かんでこない。まあ、あくまで実話を基にしたフィクションなのだから、とやかく言うこともないのだが…。

 岡田のことは、後年ソ連から帰国し、日本画壇の大家(宇野重吉)の昔の恋人役を演じた山田監督の『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』(76)、嵐寛寿郎と夫婦役を演じた大森一樹監督の『オレンジロード急行』(78)でその存在を知った。どちらも、品のいいおばあさんといった印象だったので、後から波瀾万丈の前半生を知って驚いた記憶がある。

浪花千栄子
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/e45110e1615f06038239587d9b5f018d

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『劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班』

2021-03-26 07:09:53 | 新作映画を見てみた

過去を変えた結果の違った現在

 謎の無線機が現在と過去の刑事をつなぎ、彼らが未解決事件を解決していく様子を描いた韓国ドラマをリメークしたテレビシリーズの劇場版。監督は『探偵はBARにいる』(11)の橋本一。

 2021年、高速道路でハイヤーが暴走し、政府高官(杉本哲太)が事故死した。長期未解決事件捜査班の三枝(坂口健太郎)や班長の桜井(吉瀬美智子)は、この事故が仕組まれた可能性があるとみて捜査を開始する。

 一方、2009年の東京でも政務官が相次いで交通事故で死んでいた。当局が事故として処理する中、刑事の大山(北村一輝)は、事件性を疑っていた。そして、23時23分、つながるはずのない無線機が再び鳴り出し、三枝と大山の交信が復活する。

 このシリーズのコンセプトは「過去を変えることで、現在も違った運命を迎える」ということ。それ故、キャッチコピーは「過去を変えて、未来を救え。」「諦めなければ未来は変わる」となる。 

 韓国ドラマの中には面白いアイデアのものが少なくない。だから、ハリウッドや日本も、こうしてリメークするのだろう。この映画の場合も、二つの異なった時代を並行して見せる、過去を変えた結果の違った現在を見せるという、映画ならではの表現方法が生かされている。

 ただ、無線機が現在と過去をつなぐという設定を知った時、ヒロインが落とした携帯電話が時空を超えて明治時代の若者とつながるが、2人は会話をするだけで決して会えないという『東京少女』(08)のことを思い出した。意外と、韓国ドラマの脚本家はこれを参考にしていたりして…。

【後記】などと書いたが、大元はアメリカ映画のオーロラの彼方へ』(00)なのだそうだ。

 

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