重い扉をゆっくり開くと、故人の働きを讃えている牧師の声が静かな教会に響いていた。
慌てて買った喪服にぎこちなさを感じながら最後尾の列に座り、これは悪い冗談なのではないかと思いながら、十字架に架けられたイエスの像を見上げた。
悲しみはもうない。生前、西さんの前でいっぱい泣いて、いっぱい話を聞いてもらったのに、ここへきてまた泣きごとを言ったら、また西さんに心配かけてしまい天国へいけなくなってしまうと思ったからだ。
そして、これまでの出来事を思い出してみた。猫を追いかけ、初めて「地球屋」を訪れた時の事。無理を言って初めて書いた物語を読んでもらった時の事。高校生活の愚痴。大学での苦悩。就職活動が上手くいかず泣きついた事。そして失恋。そして新しい恋の始まりと結婚の相談。振りかえってみたら、西さんはさぞかし迷惑だったのではないかと思い、恥ずかしくなって下を向いた。
その時、また教会の扉が静かに開いた。誰だろうと顔を上げ振り返ると、西さんと出会った頃の面影を残した男性が茫然とした様子で立っていた。
その姿を見たら、失恋した時と同じように心が締め付けられとても苦しい気持ちになった。
彼は背がぐんと伸び、とてもハンサムになっていたが、表情は悲しみで満ちていた。私は声をかけようと思ったけれど、喉元で何かが引っかかっていて声が出なかった。
すると、誰かが静かに手招きし、その方へ足早に歩いてゆき腰を下ろした。
西さんの葬儀なのに、鼓動が速くなり顔も少し火照っているのが自分でも判った。そんな自分が少し嫌だった。
牧師の声かけと共に皆が起立し賛美歌を合唱した。私も知っている曲であったので前列の背のポケットあった讃美歌の歌詞を手に取り大声で歌った。歌声は西さんが天国に行けるように神様に届いただろうか。私の救い主でもあった西さんが天国に行けなかったら私が神様に掛け合ってやろうというくらいの意気込みで賛美したのだからきっと届いただろう。
でも、そんな風に思いながらも、彼の後姿が気になって仕方がなかった。
黙祷をささげる。瞳を閉じて故人にお礼を言うはずだったけれど、私は内なる神に問いかけてしまった。「私はどうしたいの」と。そして、「これは愚問だ!」とすぐに自身を否定した。
喪主の挨拶が済み、献花が始まった。皆、西さんとの最後の別れを惜しんでいた。彼もまた悲痛な面持ちで涙をぬぐいながら花を一輪、棺の中に納めていた。
もし西さんがいなければ、リウターイオとしての彼は存在していなかったかもしれない。でも、彼がイタリアに行かなければ、私の初恋は成就出来たかもしれない。そんな気持ちが私の中で振り子のように止め処なく動いていた。
慌てて買った喪服にぎこちなさを感じながら最後尾の列に座り、これは悪い冗談なのではないかと思いながら、十字架に架けられたイエスの像を見上げた。
悲しみはもうない。生前、西さんの前でいっぱい泣いて、いっぱい話を聞いてもらったのに、ここへきてまた泣きごとを言ったら、また西さんに心配かけてしまい天国へいけなくなってしまうと思ったからだ。
そして、これまでの出来事を思い出してみた。猫を追いかけ、初めて「地球屋」を訪れた時の事。無理を言って初めて書いた物語を読んでもらった時の事。高校生活の愚痴。大学での苦悩。就職活動が上手くいかず泣きついた事。そして失恋。そして新しい恋の始まりと結婚の相談。振りかえってみたら、西さんはさぞかし迷惑だったのではないかと思い、恥ずかしくなって下を向いた。
その時、また教会の扉が静かに開いた。誰だろうと顔を上げ振り返ると、西さんと出会った頃の面影を残した男性が茫然とした様子で立っていた。
その姿を見たら、失恋した時と同じように心が締め付けられとても苦しい気持ちになった。
彼は背がぐんと伸び、とてもハンサムになっていたが、表情は悲しみで満ちていた。私は声をかけようと思ったけれど、喉元で何かが引っかかっていて声が出なかった。
すると、誰かが静かに手招きし、その方へ足早に歩いてゆき腰を下ろした。
西さんの葬儀なのに、鼓動が速くなり顔も少し火照っているのが自分でも判った。そんな自分が少し嫌だった。
牧師の声かけと共に皆が起立し賛美歌を合唱した。私も知っている曲であったので前列の背のポケットあった讃美歌の歌詞を手に取り大声で歌った。歌声は西さんが天国に行けるように神様に届いただろうか。私の救い主でもあった西さんが天国に行けなかったら私が神様に掛け合ってやろうというくらいの意気込みで賛美したのだからきっと届いただろう。
でも、そんな風に思いながらも、彼の後姿が気になって仕方がなかった。
黙祷をささげる。瞳を閉じて故人にお礼を言うはずだったけれど、私は内なる神に問いかけてしまった。「私はどうしたいの」と。そして、「これは愚問だ!」とすぐに自身を否定した。
喪主の挨拶が済み、献花が始まった。皆、西さんとの最後の別れを惜しんでいた。彼もまた悲痛な面持ちで涙をぬぐいながら花を一輪、棺の中に納めていた。
もし西さんがいなければ、リウターイオとしての彼は存在していなかったかもしれない。でも、彼がイタリアに行かなければ、私の初恋は成就出来たかもしれない。そんな気持ちが私の中で振り子のように止め処なく動いていた。