柔らかな光に包まれている大理石で施された静寂な空間に入り、棺に眠る西さんに最後の別れを告げる。斎場の職員さんが火葬炉の扉を開けゆっくりと棺を納めてゆく。
人はいつか死ぬ。そんな事は分かっているけれど、実際に身近な誰かが亡くなって、その身体が焼却されてゆく場面を見ていると、故人と会えない悲しみよりも、誰でもいつかはそこへ行きつくんだ。私も、そして天沢君も、と思った。
収骨までに少し時間が空いた。私は改めて西さんのご親族に挨拶をすると、「生前は御世話になりました。雫さんがここまで来てくださったのだから西もきっと大変喜んでいると思いますよ。本当にありがとう」と言われた。でも、御世話になったのは私の方であるので、恐縮してしまった。
ご親族とは、地球屋で何度かお会いした事があった。軽い会話しかしなかったけれど、覚えていてくれていたようである。
「そうだ。雫さんもご一緒に御茶などいかがですか。聖司。どうだろうか。」
「う~ん。そうだね。雫。どうする。」
斎場まで附き合わせて頂いただけでも十分なのに、改めて西さんのご親族一同が集う場所に部外者の私がいるのはすこし気が引ける。そう思ったから、
「お誘いいただいてとてもうれしいのですが、気持ちがあまり落ち着かないから、収骨まで隣の公園で散歩しようと思います。本当にごめんなさい。」と、御断りをした。
「そうか。それは残念だね。雫さんしか知らない西の事を聞きたかったんだけれどね・・・。西は自身に対しても僕に対しても厳しい人だったけれど、聖司や雫さんにはとても優しかったと聞いていたんでね・・・。本人ともっと会話すればよかったのだけれど、疎遠になってしまってね・・・。で、突然のことだったでしょう。だから、晩年はどんな人柄であったのだろうかとね。」
天沢君のお父さんはそう言って深いため息をついた。その様子を見て西さんと天沢君のお父さんとの間に何かがあったのだろうと察した。だから、私が思っている事を話しておこうと思った。
「本当にごめんなさい・・・。私、 西さんにはとても助けられました。事あるごとに地球屋に行って、何を買うわけでもなく愚痴や泣き言を溢しに行ってました。そんな時、西さんは何も言わずに聴いてくれて、そして少しだけアドバイスをくれるんです。それがいつも路頭に迷いそうになっている私に射す一筋の光でした。だから・・・。私・・・。こうやって今もきちんと生きていられているんだと思います。感謝しなければならないのは私の方なのです・・・。本当にありがとございました。」
人はいつか死ぬ。そんな事は分かっているけれど、実際に身近な誰かが亡くなって、その身体が焼却されてゆく場面を見ていると、故人と会えない悲しみよりも、誰でもいつかはそこへ行きつくんだ。私も、そして天沢君も、と思った。
収骨までに少し時間が空いた。私は改めて西さんのご親族に挨拶をすると、「生前は御世話になりました。雫さんがここまで来てくださったのだから西もきっと大変喜んでいると思いますよ。本当にありがとう」と言われた。でも、御世話になったのは私の方であるので、恐縮してしまった。
ご親族とは、地球屋で何度かお会いした事があった。軽い会話しかしなかったけれど、覚えていてくれていたようである。
「そうだ。雫さんもご一緒に御茶などいかがですか。聖司。どうだろうか。」
「う~ん。そうだね。雫。どうする。」
斎場まで附き合わせて頂いただけでも十分なのに、改めて西さんのご親族一同が集う場所に部外者の私がいるのはすこし気が引ける。そう思ったから、
「お誘いいただいてとてもうれしいのですが、気持ちがあまり落ち着かないから、収骨まで隣の公園で散歩しようと思います。本当にごめんなさい。」と、御断りをした。
「そうか。それは残念だね。雫さんしか知らない西の事を聞きたかったんだけれどね・・・。西は自身に対しても僕に対しても厳しい人だったけれど、聖司や雫さんにはとても優しかったと聞いていたんでね・・・。本人ともっと会話すればよかったのだけれど、疎遠になってしまってね・・・。で、突然のことだったでしょう。だから、晩年はどんな人柄であったのだろうかとね。」
天沢君のお父さんはそう言って深いため息をついた。その様子を見て西さんと天沢君のお父さんとの間に何かがあったのだろうと察した。だから、私が思っている事を話しておこうと思った。
「本当にごめんなさい・・・。私、 西さんにはとても助けられました。事あるごとに地球屋に行って、何を買うわけでもなく愚痴や泣き言を溢しに行ってました。そんな時、西さんは何も言わずに聴いてくれて、そして少しだけアドバイスをくれるんです。それがいつも路頭に迷いそうになっている私に射す一筋の光でした。だから・・・。私・・・。こうやって今もきちんと生きていられているんだと思います。感謝しなければならないのは私の方なのです・・・。本当にありがとございました。」