「・・・そう。母は幸せだったのね。安心した。」
「司朗さんは本当に献身的でね・・・。志げさんは身体が弱かったから、志げさん自身も出産は無理と思っていたらしいのよ。でも貴方を身ごもった・・・。だから、二人はとても悩んでいたわ・・・。でもね。降ろす事で命を長らえるよりも命を掛けてもこの世に新たな生を授けたいと互いに思ったのね。こういう言い方すると仰々しいかもしれないけれど、本当に命がけなんですもの覚悟が要ったと思うわ。 だから司朗さんも志げさんを懸命に支えていたわ。」
「そうだったの・・・。私、ちっとも知らなかった。」
「そうでしょうね。だから、あなたが無事生まれた時、とても喜んでいたわ。私も二人の幸せがずっと続くといいなと思っていたわ。」
「叔母様。母はどんな女性だったの。」
そう尋ねる登志子さんを見て、早くに亡くした母の面影を取り戻そうとしているのかもしれないと思った。
「そうねぇ・・・。細くて色白で綺麗な人だったわね。結婚して借家住まいになってから時々尋ねたけれど、良く気がついて、よく働く人でね。感心したわ。」
「それはおぼろげに覚えているわ。いつもおいしい料理を作ってくれたり、お洋服を仕立ててくれたり、それと、よく本を読み聞かせてくれたわ・・・。 風邪を引いて寝込んだときはそばにいてくれて、それでいて、お父さんの事も精いっぱい愛していたように思うわ。」
登志子さんの語りを聞いて、やっぱり奥さんも素敵な人だったんだと思った。
「そうね。あなたのおぼろげな記憶は間違っていないわ。間違いなく二人は相思相愛だった・・・。」
皆が西さんと奥さんの物語に聞き入っていっていた。おばさまが語る話はここに集う人には新鮮なのだろう。ちらっと天沢君の横顔を覗くと真剣な眼差しでおばさまを見ていた。
「ねえ叔母様。もう少し聞いていいかしら。」
「ええ。この際だから何なりと。」
「お父さんと、母が知り合ったのが病院でしたのなら、二人は職場恋愛? 母は看護婦さんだったの?」
おばさまは、少し微笑みながら話を続けた。
「そう思った? 実は違うのよ・・・。志げさんは患者さんで、ずっと入院していてそれで知り合ったのよ。もちろん患者と医師だから、体の具合もよくわかっていた。二人の間にどんなロマンスがあったのかは分からないのだけれど、志げさんは自身の将来が無い事を思って、頑なに交際を拒んでいたそうよ。」
「司朗さんは本当に献身的でね・・・。志げさんは身体が弱かったから、志げさん自身も出産は無理と思っていたらしいのよ。でも貴方を身ごもった・・・。だから、二人はとても悩んでいたわ・・・。でもね。降ろす事で命を長らえるよりも命を掛けてもこの世に新たな生を授けたいと互いに思ったのね。こういう言い方すると仰々しいかもしれないけれど、本当に命がけなんですもの覚悟が要ったと思うわ。 だから司朗さんも志げさんを懸命に支えていたわ。」
「そうだったの・・・。私、ちっとも知らなかった。」
「そうでしょうね。だから、あなたが無事生まれた時、とても喜んでいたわ。私も二人の幸せがずっと続くといいなと思っていたわ。」
「叔母様。母はどんな女性だったの。」
そう尋ねる登志子さんを見て、早くに亡くした母の面影を取り戻そうとしているのかもしれないと思った。
「そうねぇ・・・。細くて色白で綺麗な人だったわね。結婚して借家住まいになってから時々尋ねたけれど、良く気がついて、よく働く人でね。感心したわ。」
「それはおぼろげに覚えているわ。いつもおいしい料理を作ってくれたり、お洋服を仕立ててくれたり、それと、よく本を読み聞かせてくれたわ・・・。 風邪を引いて寝込んだときはそばにいてくれて、それでいて、お父さんの事も精いっぱい愛していたように思うわ。」
登志子さんの語りを聞いて、やっぱり奥さんも素敵な人だったんだと思った。
「そうね。あなたのおぼろげな記憶は間違っていないわ。間違いなく二人は相思相愛だった・・・。」
皆が西さんと奥さんの物語に聞き入っていっていた。おばさまが語る話はここに集う人には新鮮なのだろう。ちらっと天沢君の横顔を覗くと真剣な眼差しでおばさまを見ていた。
「ねえ叔母様。もう少し聞いていいかしら。」
「ええ。この際だから何なりと。」
「お父さんと、母が知り合ったのが病院でしたのなら、二人は職場恋愛? 母は看護婦さんだったの?」
おばさまは、少し微笑みながら話を続けた。
「そう思った? 実は違うのよ・・・。志げさんは患者さんで、ずっと入院していてそれで知り合ったのよ。もちろん患者と医師だから、体の具合もよくわかっていた。二人の間にどんなロマンスがあったのかは分からないのだけれど、志げさんは自身の将来が無い事を思って、頑なに交際を拒んでいたそうよ。」