「びっくりするでしょう。でも、本当にそうなのよ・・・。あれは、志げさんが亡くなるひと月前くらいの事だったかしら・・・。なにしろ不治の病だからね。日を追うごとに容態が悪くなって病の床に伏せっていたの。でも、志げさんはそれでも何かできる事はないかと考えていたらしいのよ。それである日、意を決したように「私が亡くなったら未来ある人ために検体にしてください。そして不治の病をなくしてください。」って司朗さんに頼んだのよ。さすがの司朗さんも「それは出来ない」って何度も断ったのだけれど、今度は志げさんが押し切ったのね。「そうしなければ、私は死にきれない」って言ってね。だから司朗さんも覚悟を決めたんだそうよ。」
それを聞いたお父さんは「そうか。研究に没頭していたという時期があったのは、それなのか。」と言って、何か腑に落ちたようだった。
「もちろん、志げさんのご両親も大反対してね・・・。でも、それ以上に志げさんの決意は固くてね・・・。本当に強い人だったわ。司朗さんが志げさんを選んだ理由はそこだったかもしれないわね。」
「それで・・・。亡くなった後は本当に検体に?」
「もちろんそうよ。検体の後の司朗さんは悲痛な面持ちで目が真っ赤だった。あんな司朗さんを観たのは後にも先にもあれっきり・・・。その後、互いに気を使ってか、疎遠になってしまってね。次に会ったのは、たしかあなたの結婚式だったわ・・・。次が夫の葬儀。それほどに会わなくなったのね。でも、風の便りで司朗さんの功績は伝わってきていたわ。たとえば、不治の病の原因を突き止めたとか、アメリカのなんとかっていう大学の先生と連絡を取り合って「マイシン」と言ったかしら。なにしろ特効薬を開発したとか、それを国内に普及させたとか、国立病院の院長も務められたとか。本当に一生懸命に生きていらしたわ。」
「西がストレプトマイシンの開発、普及に関わっていたというのは、噂では聞いてはいたが・・・。」
お父さんは驚きを隠せないようだった。それがどんなにすごい事かよくわからなかった私は素直に感心して、
「へぇ~。西さんて、すごい人だったんですね。ずっとアンティークショップのお祖父ちゃんだと思ってました。」と、言ったら皆が笑った。
ちょっと幼すぎたかなと反省。また、恥ずかしくなってしまった。
それを聞いたお父さんは「そうか。研究に没頭していたという時期があったのは、それなのか。」と言って、何か腑に落ちたようだった。
「もちろん、志げさんのご両親も大反対してね・・・。でも、それ以上に志げさんの決意は固くてね・・・。本当に強い人だったわ。司朗さんが志げさんを選んだ理由はそこだったかもしれないわね。」
「それで・・・。亡くなった後は本当に検体に?」
「もちろんそうよ。検体の後の司朗さんは悲痛な面持ちで目が真っ赤だった。あんな司朗さんを観たのは後にも先にもあれっきり・・・。その後、互いに気を使ってか、疎遠になってしまってね。次に会ったのは、たしかあなたの結婚式だったわ・・・。次が夫の葬儀。それほどに会わなくなったのね。でも、風の便りで司朗さんの功績は伝わってきていたわ。たとえば、不治の病の原因を突き止めたとか、アメリカのなんとかっていう大学の先生と連絡を取り合って「マイシン」と言ったかしら。なにしろ特効薬を開発したとか、それを国内に普及させたとか、国立病院の院長も務められたとか。本当に一生懸命に生きていらしたわ。」
「西がストレプトマイシンの開発、普及に関わっていたというのは、噂では聞いてはいたが・・・。」
お父さんは驚きを隠せないようだった。それがどんなにすごい事かよくわからなかった私は素直に感心して、
「へぇ~。西さんて、すごい人だったんですね。ずっとアンティークショップのお祖父ちゃんだと思ってました。」と、言ったら皆が笑った。
ちょっと幼すぎたかなと反省。また、恥ずかしくなってしまった。