硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

耳をすませば。 彼と彼女のその後  17

2013-07-25 07:36:35 | 日記
「いやいや、これは失敬。それも正しいです。雫さんにとっての西はアンティークショップの親爺さんなのだからね。」

「そうそう。それもお父さんの姿だもの。もしお父さんが医師を辞めてなかったら「地球屋」で雫さんとは知り合う事はなかったでしょう。だからこれも何かの縁なのよ。きっと。」

すると天沢君もそれに続いた。

「そうだね。地球屋があるのはお祖父ちゃんが医者を辞めたからだし、バイオリン制作の場所を提供してくれたおかけで今の僕があるのだし、きっとこれは縁だろうね。」

「縁ですか・・・。」

私は思った。父のお弁当を届けに出かけたあの日、デブ猫に出合い、気になって追いかけていったら、そこに地球屋があった。そこで見つけた男爵。そして西さんと出会い、古時計の中のドアーフの王とエルフの女王を見て感激した。

そして今日、西さん最期を見送り、西さんの物語を聞いた。これが登志子さんや天沢君が言う、縁というものなのだろうか、それともすべて偶然なのだろうかと。

「袖振りあうのも多生の縁という諺があるくらいだもの。やっぱり何か魅かれあうものがあるんでしょうね。戦地に赴いた司朗さんはそれを強く感じていたから、いつも誰かのために生きてきたのかもしれないわね。それは、登志子さんも航一さんも、久貢も那美さんも、そして聖司も雫さんも、身をもって知ったのではないかい。」

たしかにそうだ。西さんいつも誰かのために働いていた。「地球屋」だけが、自身のための唯一の道楽だったのかもしれない。でも、地球屋でさえも誰かのためのバイオリン工房であり、誰かのためのアンティークの修理場だったりする。そう思うと結局すべては誰かの為なんだと初めて気がついた。

「さて、他に聞きたい事はあるかい。話せるのはもうこれ位と思うけれどねぇ。」

私は喉の奥に引っ掛かっていた小骨のような事が気になってならなかった。でも、それを聞いたところでどうなるわけでもない事も重々理解していた。でも、待っていた人がいながら、志げさんと結婚した理由がどうしても知りたかった。だから遠まわしに話をしてみようと思った。