斎場の扉が開くと、いつの間にか太陽は西に傾いていて、北風に揺れる木々の影が冷たい道路に伸びていた。日中の暖かな日差しはどこかに過ぎ去り、吐く息がまた白くなるほどに空気が冷えていた。寒さを感じ手に持っていたコートを羽織ろうとすると、天沢君が「貸してごらんよ。」と言うからコートを渡すと、そっとコートの両肩をつまみ、後ろから「袖を通していいよ。」と、言ってくれた。私は照れながら両手を少し後ろに回しコートの袖を通すと、天沢君は慣れた手つきでコートを後ろからすっと掛けてくれた。
「あっ。ありがとう。」
「どういたしまして。」
「なんだか手なれた感じがするんだけれど・・・。」
「今度は雫かよ。まいるなぁ。」
「冗談だよ。イタリアの伊達男さん。」
登志子さんの物言いが少しうつってしまったのかもしれない。それでも、こうやって話せる事がとてもうれしかった。だから今度は天沢君の近況が知りたくなった。
「ところで、仕事の調子は順調?」
「うん。いろいろ大変だけれど順調だよ。今度、東京にも工房を開こうと計画しているんだ。追悼ミサまでに物件の確認やら商談やらを一通りこなす予定だよ。」
「へぇ~。天沢君すごい人になってしまったんだね。」
「そんなことないよ。僕よりももっとすごい人がいっぱいいるんだよ。」
自分の工房を出す。私からすればとても大変な事なのに、さらりと答えてしまうところが憎いなと思った。これはモテる筈だ。「イタリアの伊達男」まんざら嘘ではなさそうだと思ったけれど、それよりも彼の話の続きが聞きたくなった。
「バイオリンを作る人って、そんなに沢山いるの?」
「うん。沢山いるよ。バイオリン制作学校に通ってた時も、日本人の先輩がいたよ。あと、韓国、中国、東南アジア系の人、アメリカ、ドイツ、オーストリア、フランス、何しろ多国籍だったよ。」
「へぇ~。そうなの。全然知らなかった。」
「バイオリン製作って、クラシック音楽に関わってないと分からないからしかたがないよ。」
「私、勉強不足でした。ごめんなさい。」
そう言うと、天沢君は微笑んで、
「別にあやまらなくていいよ。それが普通だよ。」と、言った。
何処までも優しい人であると同時に、本当にカッコよくなってしまったなぁと思った。
「あっ。ありがとう。」
「どういたしまして。」
「なんだか手なれた感じがするんだけれど・・・。」
「今度は雫かよ。まいるなぁ。」
「冗談だよ。イタリアの伊達男さん。」
登志子さんの物言いが少しうつってしまったのかもしれない。それでも、こうやって話せる事がとてもうれしかった。だから今度は天沢君の近況が知りたくなった。
「ところで、仕事の調子は順調?」
「うん。いろいろ大変だけれど順調だよ。今度、東京にも工房を開こうと計画しているんだ。追悼ミサまでに物件の確認やら商談やらを一通りこなす予定だよ。」
「へぇ~。天沢君すごい人になってしまったんだね。」
「そんなことないよ。僕よりももっとすごい人がいっぱいいるんだよ。」
自分の工房を出す。私からすればとても大変な事なのに、さらりと答えてしまうところが憎いなと思った。これはモテる筈だ。「イタリアの伊達男」まんざら嘘ではなさそうだと思ったけれど、それよりも彼の話の続きが聞きたくなった。
「バイオリンを作る人って、そんなに沢山いるの?」
「うん。沢山いるよ。バイオリン制作学校に通ってた時も、日本人の先輩がいたよ。あと、韓国、中国、東南アジア系の人、アメリカ、ドイツ、オーストリア、フランス、何しろ多国籍だったよ。」
「へぇ~。そうなの。全然知らなかった。」
「バイオリン製作って、クラシック音楽に関わってないと分からないからしかたがないよ。」
「私、勉強不足でした。ごめんなさい。」
そう言うと、天沢君は微笑んで、
「別にあやまらなくていいよ。それが普通だよ。」と、言った。
何処までも優しい人であると同時に、本当にカッコよくなってしまったなぁと思った。