その昔は濠という重要な役目を担っていたかも知れないが、今は公園の堀として、訪れる人に周辺の四季のたたずまいを映してみせる。
そこでは、色鮮やかな鯉が悠々と水の中を進む。いつから住み着いたか亀も年々その数が増えている。季節の水鳥も羽をやすめ先住の生きものとひと時を過ごしている。こんなときは水面がひときわ華やかになる。
この堀でいち番大きな生きものは白鳥。近づいても人を恐れる気配は全く見せず、そばへ寄ってくることもある。今、白鳥のその白さが堀の中でひときは映えている。
何かの植物が繁茂しているのか、堀がこれまで見たことのない鮮やかな緑色に覆われている。あの鯉も亀も見えない。緑色の下でどうしているのか、思いながらも水面下を伺うすべがない。
これまでに記憶のない堀の色を見ながら、猛烈な暑さを経験した自然の反応なのかと、澄み渡る秋空を映さない堀を後にした。
(写真:緑をバックに一心に羽を綺麗にしている白鳥)