日々のことを徒然に

地域や仲間とのふれあいの中で何かを発信出来るよう学びます

卒業式

2024年04月03日 | エッセイサロン
2024年4月3日 中国新聞セレクト「ひといき」掲載

 「お兄ちゃん、卒業式に来てもらえる」。式の直前に、高校3年生だった下の妹から頼まれた。
 この半年前に入院中の父が急逝、病身な母は父の死による心労も加わり伏せりがちだった。工場で働いていた私は3交代という勤務をしていた。記憶にある妹のすまなさそうな話し方からは、どうしようかと考えた末の頼みだったと思う。私は承諾した。           ‘
 卒業式は厳粛に進んだ。年配の父母に挟まれた若い身空を感じた。突然、降ってわいたようにあることに気付いた。今もはつきりと記憶している。
 「兄でもあるが、これからは親代わりとしても弟妹を守っていかなければいけない」と。身を引き締める何かを授かったような感じだった。「卒業式に参列してよかった」。今も思う。
 父の死の後、長男として家族を守るという心構えでいたが、それとは違った、より重さを感じるものだったと思う。    
 卒業式からほどなく私は結婚した。妻もよく理解し協力してくれ、弟や妹の結婚式はもとより、親戚や地域との付き合いなど多くの場で親代わりを果たした。            
 能登半島地震の被災地で行われた卒業式の報道を見て、その意味の深さを改めて思い返した。 

 (今日の575)老けている言われた裏に苦労あり
コメント (2)
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