
自称「バラが恋人」という知人、半端なバラ愛好家ではなく大勢の教え子を抱えている。その人から鉢植えを貰ったのは10数年も前というか、昔になる。それには白いプラスティックの板に、私のハンドルネームがマジックで記され、根元に撒かれていた。我が家の南向きの軒下に置いた。
春も夏も秋も深紅の大柄なバラが咲き誇った。盛りの時期には終わった花のしまいにも時間が掛かったが、苦にはならなかった。どのくらい咲くか、バラから直線で30㍍くらい離れ家人が、「朝、窓を開けてバラを見るのが楽しみ」と、時には我が家の狭庭に足を運ばれていた。
そんなバラが、昨秋の花が終わったあと元気がなくなり、この春はミニバラほどの小さな花が数輪で咲き終わった。消毒や肥料は適宜施していたが、葉が次第に枯れて散った。よく見ると数本の小枝が次々と枯れていった。それでもと水や肥料など施したが幹を切って見ると枯れている。何千個の花を楽しませてくれたが終焉を迎えた。
処理するのに、銘板のあったことを思い出し丁寧に丁寧に根を処理していたら、それを取り付けた細い番線が存在を教えてくれた。マジックの文字は消えていたが、銘盤は成長した幹と同体のようになっており、完全な形ちでの回収は出来なかった。もっと咲きたいと思ったかもしれないが主の力の無さをわびながら、幹や根、守ってくれた土を丁寧に処理した。有難うと言いながら。
(今日の575) 家族なみ育てた思い悔いはなし