いよいよ公演まで1週間を切りました。
いや、
あと5日ですね。
モルドバのキシノウでは、日本文化週間のオープニングを飾り、
また、
ルーマニアのシビウ国際演劇祭でも初日の公演として上演してきました。
旅班の旅の思い出とともに、
東京公演へのお誘いと代えさせていただきます。
男=公家義徳(こうけよしのり)
社会主義時代の名残りがそのままに感じられる都市、モルドバ共和国の首都キシノウ。
ぼくたちはウジェーヌ・イヨネスコ国立劇場で2回の公演を行った。
東京演劇アンサンブルでぼくがはじめて参加した芝居は俳優教室公演、
アーノルド・ウェスカー作『かれら自身の黄金の都市』。
人間のための理想の都市をつくろうという物語だ。
「道路は広くまっすぐに、路地はゆるやかにうねっている。
広場は思いきり大きく、街角は親しみやすい。
街の中心に位置するのは、公園、音楽堂、劇場、プール。
ダンスホール、美術館、集会所です。」
それはキシノウの都市構造そのままのような気がした。
ああいいな、と思った。
しかし、イヨネスコ劇場の代表者であり、世界的な演出家でもあるペトル・ヴカレウさんは、
すべてを変えたいと言っていた。
社会主義時代を記憶するものはすべて、と。
「でも・・・」から始まるぼくのいくつかの質問にも、彼は静かに首を振るだけだった。
1989年。ベルリンの壁崩壊の年、ルーマニアでも革命が起こる。
その時シビウの演劇人は先頭に立って銃を手にしたという。
それは社会主義独裁政権を打倒するための戦いだった。
シビウ国際演劇フェスティバルは今年で20周年を迎えた。
ぼくたちの公演はそのオープニング初日。
しかし劇場は高校の体育館。
吊りものや仕掛けが多いこの芝居を体育館でやるなんて、並大抵のことではない。
でも他に条件の合う劇場はない。俳優、スタッフともに二日がかりの大変な仕込み。
そしてそのまま本番を迎える。開演は17時と22時。終演後の撤収は真夜中の2時半を超えた。
キシノウもシビウもカーテンコールはすべてスタンディングオベーションで迎えられた。
仕込みからバラシまでのスタッフワークに現地スタッフは驚いていた。もちろんすべてがうまくいったわけではないが、
東京演劇アンサンブルらしい不器用で真っ直ぐな仕事が、多くの人たちのこころを動かしたのは事実のようだ。
女=原口久美子(はらぐちくみこ)
古い建物と緑に囲まれたモルドバの街並みは、木々の間から吹いてくる風が澄んでいて、
時間がゆったり流れているような気がしてくる。
インフラが遅れているため、下水や道路の整備などが進んでいないということだが、
ほとんど信号機のない道路では、たいていの車が止まって歩行者を渡らせてくれる。
日頃あまり見かけない日本人に優しい笑顔で声をかけてくれて、
街のあちこちでやさしさに触れることが出来た。
しかし社会主義の匂いがまだ強く残るこの国を、根っこから、
体制ごと全て変えなければいけないとイヨネスコ劇場の総監督のぺトロ氏は言う。
そしてそれは「演劇」から始めるのだと。
占領と併合が繰り返されたこの土地……。
数年前東京で観たウジェーヌ・イヨネスコ劇場の『授業』を思い出した。
「暴力」と「狂気」「支配」の構図。
自身にも他者にも社会にも状況にも向けられる“厳しい”発信。
あたたかい手作りのおもてなしで歓迎してくれた彼らの中にある強い意志の詰まった、
すごい劇場で芝居をすることが出来たのだとあらためて思った。
シビウの国際演劇祭は今年20周年。
これだけの演劇祭を続けてきたことに対する自信と誇りにあふれていた。
自分たちで創り出す。自分たちで変えていく。
ここにも強い意志が込められている。
自分たちの公演で言えば、正直悔しい思いも、もどかしい思いもしたけれど、
とにかく自分たちのやれることを誠実にやってこれたと思う。
1回目の公演が終わってすぐ、
ボランティアで私たちをサポートしてくれた谷口さんが「とても感激しました」と言って来てくれた。
なんだかとても嬉しかった。
自信の無さから恥ずかしいような思いもあったが……嬉しかった。
単純だなぁ。
たくさんの人に支えられ、この2つの国で「櫻の森の満開の下」の芝居が出来たことを本当に感謝している。
モルドバとルーマニア……。
ゆったりした心地よさと、ひりひりするような感覚と、いろんな想いが交差した貴重な海外公演だった。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
東京演劇アンサンブル公演
桜の森の満開の下
作=坂口安吾
脚本・演出=広渡常敏
音楽=池辺晋一郎
演出補=志賀澤子
照明=大鷲良一
効果=田村悳
衣裳=小木節子
舞台監督=浅井純彦
制作=小森明子・太田昭
前売一般3800円
前売学生3000円
当日4500円
全席自由
上演時間1時間(遅れると入場できません)
8/27(火)19:30
8/28(水)19:30
8/29(木)19:30
8/30(金)休演
8/31(土)14:00
9/1(日)14:00
ブレヒトの芝居小屋
(西武新宿線・武蔵関駅より徒歩7分)
公演詳細HP
東京演劇アンサンブルウwebチケットサービス
いや、
あと5日ですね。
モルドバのキシノウでは、日本文化週間のオープニングを飾り、
また、
ルーマニアのシビウ国際演劇祭でも初日の公演として上演してきました。
旅班の旅の思い出とともに、
東京公演へのお誘いと代えさせていただきます。
男=公家義徳(こうけよしのり)
社会主義時代の名残りがそのままに感じられる都市、モルドバ共和国の首都キシノウ。
ぼくたちはウジェーヌ・イヨネスコ国立劇場で2回の公演を行った。
東京演劇アンサンブルでぼくがはじめて参加した芝居は俳優教室公演、
アーノルド・ウェスカー作『かれら自身の黄金の都市』。
人間のための理想の都市をつくろうという物語だ。
「道路は広くまっすぐに、路地はゆるやかにうねっている。
広場は思いきり大きく、街角は親しみやすい。
街の中心に位置するのは、公園、音楽堂、劇場、プール。
ダンスホール、美術館、集会所です。」
それはキシノウの都市構造そのままのような気がした。
ああいいな、と思った。
しかし、イヨネスコ劇場の代表者であり、世界的な演出家でもあるペトル・ヴカレウさんは、
すべてを変えたいと言っていた。
社会主義時代を記憶するものはすべて、と。
「でも・・・」から始まるぼくのいくつかの質問にも、彼は静かに首を振るだけだった。
1989年。ベルリンの壁崩壊の年、ルーマニアでも革命が起こる。
その時シビウの演劇人は先頭に立って銃を手にしたという。
それは社会主義独裁政権を打倒するための戦いだった。
シビウ国際演劇フェスティバルは今年で20周年を迎えた。
ぼくたちの公演はそのオープニング初日。
しかし劇場は高校の体育館。
吊りものや仕掛けが多いこの芝居を体育館でやるなんて、並大抵のことではない。
でも他に条件の合う劇場はない。俳優、スタッフともに二日がかりの大変な仕込み。
そしてそのまま本番を迎える。開演は17時と22時。終演後の撤収は真夜中の2時半を超えた。
キシノウもシビウもカーテンコールはすべてスタンディングオベーションで迎えられた。
仕込みからバラシまでのスタッフワークに現地スタッフは驚いていた。もちろんすべてがうまくいったわけではないが、
東京演劇アンサンブルらしい不器用で真っ直ぐな仕事が、多くの人たちのこころを動かしたのは事実のようだ。
女=原口久美子(はらぐちくみこ)
古い建物と緑に囲まれたモルドバの街並みは、木々の間から吹いてくる風が澄んでいて、
時間がゆったり流れているような気がしてくる。
インフラが遅れているため、下水や道路の整備などが進んでいないということだが、
ほとんど信号機のない道路では、たいていの車が止まって歩行者を渡らせてくれる。
日頃あまり見かけない日本人に優しい笑顔で声をかけてくれて、
街のあちこちでやさしさに触れることが出来た。
しかし社会主義の匂いがまだ強く残るこの国を、根っこから、
体制ごと全て変えなければいけないとイヨネスコ劇場の総監督のぺトロ氏は言う。
そしてそれは「演劇」から始めるのだと。
占領と併合が繰り返されたこの土地……。
数年前東京で観たウジェーヌ・イヨネスコ劇場の『授業』を思い出した。
「暴力」と「狂気」「支配」の構図。
自身にも他者にも社会にも状況にも向けられる“厳しい”発信。
あたたかい手作りのおもてなしで歓迎してくれた彼らの中にある強い意志の詰まった、
すごい劇場で芝居をすることが出来たのだとあらためて思った。
シビウの国際演劇祭は今年20周年。
これだけの演劇祭を続けてきたことに対する自信と誇りにあふれていた。
自分たちで創り出す。自分たちで変えていく。
ここにも強い意志が込められている。
自分たちの公演で言えば、正直悔しい思いも、もどかしい思いもしたけれど、
とにかく自分たちのやれることを誠実にやってこれたと思う。
1回目の公演が終わってすぐ、
ボランティアで私たちをサポートしてくれた谷口さんが「とても感激しました」と言って来てくれた。
なんだかとても嬉しかった。
自信の無さから恥ずかしいような思いもあったが……嬉しかった。
単純だなぁ。
たくさんの人に支えられ、この2つの国で「櫻の森の満開の下」の芝居が出来たことを本当に感謝している。
モルドバとルーマニア……。
ゆったりした心地よさと、ひりひりするような感覚と、いろんな想いが交差した貴重な海外公演だった。
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東京演劇アンサンブル公演
桜の森の満開の下
作=坂口安吾
脚本・演出=広渡常敏
音楽=池辺晋一郎
演出補=志賀澤子
照明=大鷲良一
効果=田村悳
衣裳=小木節子
舞台監督=浅井純彦
制作=小森明子・太田昭
前売一般3800円
前売学生3000円
当日4500円
全席自由
上演時間1時間(遅れると入場できません)
8/27(火)19:30
8/28(水)19:30
8/29(木)19:30
8/30(金)休演
8/31(土)14:00
9/1(日)14:00
ブレヒトの芝居小屋
(西武新宿線・武蔵関駅より徒歩7分)
公演詳細HP
東京演劇アンサンブルウwebチケットサービス