a letter from Nobidome Raum TEE-BLOG

東京演劇アンサンブルの制作者が、見る、聞く、感じたことを書いています。その他、旅公演や、東京公演情報、稽古場情報など。

初日日和!!

2013-08-27 14:53:03 | 東京公演



本日は絶好の公演初日日和!
(そんなものあるのか?)

当日券もございます。
いつもより少し遅めの開演時間です。
ぜひ、足をお運びください。

東京演劇アンサンブル公演
桜の森の満開の下

19時半開演
ブレヒトの芝居小屋
tel:0339205232




女房7=奈須弘子(なすひろこ)



2013年5月29日から6月11日まで14日間に渡り、
「櫻の森の満開の下」の公演でモルドヴァのキシノウと、ルーマニアのシビウに行きました。
異国の地に立つと日本とは違う風に吹かれ、
今までの自分や日常のごたごたを全てリセットできるような、開放感と新しい期待感を感じます。
私の海外経験は劇団の公演以外ではないので、一人ではなく守られた中での経験になりますが、
同時に自分が日本人であることもより意識させられる場でもあります。
自分に何ができるのか、何をしていかねばならないのか、
その場にきた意味を公演することで与えられ試されます。
今回は私にとって半分日本に心を残しながら、自分は何故芝居を続けるのだろうと考える旅でもありました。
最初に行ったモルドヴァでは日本人が少ないそうで、街を歩いていると珍しそうに本当によく見られました。
遠巻きに見ていたかと思いきや、話す機会ができるとよく喋る。
ホテルのエレベーターで何度かルームキーパーの女性と一緒になり、
彼女は通じてないのもお構いなしにペラペラ話しかけ、
笑ってごまかす私の肩を豪快に抱きポンポンとたたく。



そんな人達に出会うと言葉は通じないけど共有したい、
私達の芝居を観てほしいという気持ちが湧いてきました。
街中を散策がてらチラシも配ったのですが、日本でするのとは違い配った時の反応を見るのが楽しかったです。
「櫻の森…」の始まりは豪華絢爛、緻密に手間隙かけてつくられた美しい金屏風、
日本の伝統文化が現れ、十数秒の沈黙の後に破られます。
なんというはかなさと潔さだろう!
破られることによって増す美しさ。
そして屏風を破って桜吹雪の中に飛び出す男と女。
破ること、破られること、そんな精神が私の中にも育まれたら。
モルドヴァ、ルーマニアの彼らはこの始まりをどう思ったろう…。
誰に向かってどんな芝居がしたいのか、見せたい人の顔が具体的に浮かぶのは強い動機になると改めて感じました。


途中立ち寄ったブラショフの町。



舞台監督=浅井純彦(あさいすみひこ)



モルドバのキシノウの会場は、以前ディスコかナイトクラブだった所で、
客席も固定席ではなく、舞台も基本的にはバトンはなく、
現在イヨネスコ劇場の人達が、会館としての形を整えるべく、少しずつ改造している劇場です。
イヨネスコ劇場に好意的だった前の大統領の時は、
ちゃんとした舞台と客席を持った、いわゆる普通の劇場をベースに活動していたのが。
今の大統領は、イヨネスコ劇場には批判的で、
その小屋には他の劇団が入り、数年前に今の小屋に移ってからは、
助成金も大幅に減らされ、劇団創設の時のメンバーも だんだん離れていき、
という厳しい状況の中で、今は運営しているようです。
元々劇場じゃないところだから、舞台上に昇降するバトンは無く、
そこに「桜の森の満開の下」の舞台をどうやって組むか。
下見の時、「どうしても無理ならば、他の会場を借りる事は、出来なくはないです」と言ってる目は、
「やれると言って!」のオーラがバシバシ、
返事は勿論「やります」(やれますではありません)。
照明バトンだけでなく、桜のバスケット用のバトン、人吊り用のバトンも、仮設しなければ。
やれると判断出来た裏付けは、普段体育館公演で培った技術、ノウハウ。
これが無かったら、大丈夫とは言えなかった。
今回行ってみると、1月末に下見に来た時よりも、
客席上のシーリングバトンと舞台奥のバックサス用のバトンが、増えていた。
資金がない中、少しずつでも自分達の使いやすい劇場にしていこうという、気持ちのあらわれです。
でも天井の上に人間がのぼって、電動のウィンチを数人で操作して、
バトンを上げ下げするので、まだまだ使いづらい感じでした。
僕達が、今回の公演の為に日本から持ち込んだ体育館公演用の滑車とロープ
(バトン6本分 W滑車4個、S滑車8個、鉄パイプ12本、細ロープ、雑ロープ、黒ロープ等々、
大道具をはじめ必要なもの全て、40フィートの一番大きなコンテナで、一月半かけて船で送りました)を仕込むと、
劇場の人から、なんとか、このまま残していけないだろうか、新しい同じ物を揃えるから。
と真剣に相談されました。
劇場の人たちの頑張ってる姿を目にすると、何とか残してあげたかったけど、
同じ物は向こうにはなく、日本から持ち込んだ物は、
個数も形もそのまま、日本に持ち帰らないといけないので、残すことは出来ませんでした。
お金もなく、でも自分達の工夫と、いい芝居を作りたい届けたいという情熱で、
そして何よりも、人なつっこさ優しさをもって接してくれた、
ペトルをはじめ、ウジーヌ・イヨネスコ劇場の人達に、連帯感にも似た気持ちを抱いたのは、僕だけではないはずです。
何とか力になれることがあれば。具体的な事が。何か。





舞台監督助手=尾崎太郎(おざきたろう)



『櫻の森の満開の下』は天井からの吊りものがとても多いそして大変!
桜の花びらを降らす為のバスケット、開閉する雲の絵柄の幕、役者を宙吊りにする為のワイヤー。
勝手の違う海外では大変さは倍増する。
ルーマニアでの公演会場はオクタヴィアン・ゴガ高校の体育館。
劇場ではないので吊りもののバトンは全て仮設しなければならない。
天井作業は、自走高所作業車で行う。シゲさん(松下重人)について僕も作業車に乗り込む。
運転するのは、なかなか大変。そこに現地スタッフが乗り込んできてくれる。
Mrプロッティーだ。プロッティーさんは身体は大きいが、いかつい感じはしない。気のいい巨人って感じ。
プロッティーが作業車を見事に運転するのを、シゲさんと僕が褒めると、自分の事をアイルトン・セナだと言う。
なかなかユニークなおじさんだ。



天井の梁の鉄骨に滑車を付けていくのだが、鉄骨に防寒材とそれを覆う布が張り付いていて邪魔だ。
どうにもならず、僕らは天井の布に小さく穴を開けてそこを通して滑車をつけ始めた。シゲさんが謝ると、
プロッティーは言った。
「ショー・マスト・ゴー・オン」よい舞台をつくる事が先決だ、気にするなと。
三人で滑車を取り付けた。
他の仕事とブッキングしていたのかスタッフさんが減っていくなか、
プロッティーは仕込みの最後まで付き合ってくれた。
食事も外に出ないで、一人でサンドイッチを食べていた。バラシも最後の最後まで一緒にやった。
記念に一緒に写真を撮った。
モルドバ、ルーマニアの街並みを歩いた事、それに何よりもラドスタンカ劇場の公演は忘れられない経験だった。
それとはちょっと違って、プロッティーさんの事は忘れたくない思い出だ。
「ショー・マスト・ゴー・オン」忘れないでおきたいと思う。





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東京演劇アンサンブル公演
桜の森の満開の下

作=坂口安吾
脚本・演出=広渡常敏
音楽=池辺晋一郎
演出補=志賀澤子
照明=大鷲良一
効果=田村悳
衣裳=小木節子
舞台監督=浅井純彦
制作=小森明子・太田昭

前売一般3800円
前売学生3000円
当日4500円

全席自由
上演時間1時間(遅れると入場できません)

8/27(火)19:30
8/28(水)19:30
8/29(木)19:30
8/30(金)休演
8/31(土)14:00
9/1(日)14:00

ブレヒトの芝居小屋
(西武新宿線・武蔵関駅より徒歩7分)

公演詳細HP

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