10月16日、
福島原発 生業訴訟原告団・弁護団による、
福島県庁への要請行動に同行しました。
県庁内の一室は100名を越える原告団に、弁護団、
「原発なくそう! 九州玄海訴訟、川内訴訟」の弁護団の方など、
合わせて150名ほどの人でいっぱいになり、報道陣の方もたくさん詰めかけました。
県側は知事は出席せず、
原発事故被災行政に関係する様々な課の管理職がずらりと並んで対応しました。
この日の原告団・弁護団の最大の主張は、
「年間被曝線量20ミリシーベルト以下なら我慢しなさい」という国の考えを県(知事)は認めないでほしい、
ということでした。
20ミリシーベルトで線を引くことには3つの側面があるといいます。
「20ミリ以下なら大丈夫ということになる」
「だから20ミリ以下なら被害とはみなさない」
「だから20ミリ以下なら賠償や支援も打ち切る」
国は実際に、この考えに沿うように避難指示の解除や賠償の打ち切りなどの方針を発表しています。
原告団のある女性はこう言われました。
「小高(南相馬)から松川へ避難していた人が、
“帰るしかない、もう補償が出ないんだから”と、
庭に小屋を建てて帰る準備をしていました。
県は国に、福島の人々を何と思っているのか、と言ってくれないんですか?
私の孫は高校の合格発表を、あの事故の直後の雪の中で見ていました。
甲状腺ガンのことを考えると不安でたまりません。
この不安を抱えて黙っていなければならないのですか?」
これに対して県側は、
原発事故について、国には原発政策を進めてきたものとしての責任が、
東電には加害者としての責任がある、
と明言したものの、
20ミリシーベルトという国の方針については、
国が決めたことだから県としては言うことはない、と回答を拒みました。
原告団のある男性はこう言われました。
「国の所管だから言うことはない?
あの事故のとき、SPEEDIのデータは福島県にも届いていた。
しかし県は国が公表しないから県もしないと言ったな。
おんなじじゃないか。」
弁護団
「20ミリシーベルトという基準を、県としては問題視したことはあるのか」
県
「…………」
弁護団
「この数値は高すぎるのでは?
という申し入れを国にしたことはあるのか」
県
「……把握していません」
弁護団
「国の方針について、県は“それはおかしい。
20ミリシーベルトは高すぎる”とか考えないのか。
聞きたいのはその一点なんですよ。
国に対して、この基準を撤回しろ、
とわれわれは言ってもらいたいのだが、
その気はないのですか」
県
「今日は答えられません。
皆さんのお気持ちは受け止めました。
県としてはこれからも県民に寄り添って、真摯に対応していく考えです」
原告
「前もって要請項目を書面で提出した上でこうやって来ているのに、話を聞きました、
だけじゃ意味がないんだよ!」
………といった調子で埒があきませんでした。
原告団・弁護団は、県(知事)が福島県内だけでなく、
あらゆる原発の廃止を求めてほしい、とも要請しました。
県側の答えは、
「県は方針として脱原発を打ち出している。
無責任に原発廃止を求めるのではなく、
再生可能エネルギー推進を掲げて全国に働きかける、
それが福島のすべきことと考えている。
県外の原発について発言する立場にない。」
というものでした。
弁護団は、
「では世界中の核兵器廃絶を訴える広島と長崎の市長は無責任なことを言っているのか。
原発事故の被災地である福島のトップが全原発の廃止を言わなくて誰が言うのか、と言いたい。」
と訴えましたが、県側の答えは変わりませんでした。
この日、
「原発事故については国と東電に責任がある」
「20ミリシーベルト以上、以下に関わらず、損害があるかぎり補償すべきと考える」
「避難指示区域外からの自主避難者については、国の補償が打ち切られた後、県独自の支援策を講じる」
「避難指示が解除になったからといって、帰らなければならないとは考えていないし、
帰らないという選択をされた方にもケアの方策を立てなければと考えている」
など、県の踏ん張りが感じられる応答もあったのですが、全体としては、
「国と東電との交渉をいま、われわれがやっている。県が前面に立ってやってくれないのか」
という原告団の声が、至極まっとうに聞こえる2時間半でした。
最後に原告団の中島団長が県の管理職の人たちにこう訴えました。
「先日、沖縄の翁長知事は、日本はいま日常(民主主義)から非日常(中央集権)に紙一重で変わる一瞬を止めきれるかどうかの局面にあるといわれた。
福島もいま、紙一重のところに立っています。
どうか沖縄の姿勢を見習って、われわれの申し上げたことを政策課題として取り組んでいただきたい。」
国が推し進める“20ミリシーベルト受忍論”がこの裁判で認められると、
もしもこの先福島のような事故が起きたとき、
この数字が先例となってさらに多くの犠牲者を生むことになる―――
原告団の方たちが求めているのは賠償だけではありません。
全原発の廃炉です。
それぞれが抱える事情や立場を乗り越えて、その目は遠く未来を見ています。
今月22日、福島文化センターにおいて、
生業訴訟の原告団・弁護団主催で『銀河鉄道の夜』を上演します。
この方たちの前で舞台に立つことを恐ろしく、また誇りに思います。
宮澤賢治のことばと福島の人たちの間に立って、
本当の幸いを求める心が共鳴する空間を作り出すことができるか。
私たちにとって大きなチャレンジです。
この公演と生業訴訟については、
「生業を返せ! 地域を返せ!」福島原発訴訟原告団・弁護団のwebサイトをご覧下さい。
「原告団・弁護団の活動」をクリックすると、「銀河鉄道の夜」のお知らせを見ることができます。
文責:竹口範顕
福島原発 生業訴訟原告団・弁護団による、
福島県庁への要請行動に同行しました。
県庁内の一室は100名を越える原告団に、弁護団、
「原発なくそう! 九州玄海訴訟、川内訴訟」の弁護団の方など、
合わせて150名ほどの人でいっぱいになり、報道陣の方もたくさん詰めかけました。
県側は知事は出席せず、
原発事故被災行政に関係する様々な課の管理職がずらりと並んで対応しました。
この日の原告団・弁護団の最大の主張は、
「年間被曝線量20ミリシーベルト以下なら我慢しなさい」という国の考えを県(知事)は認めないでほしい、
ということでした。
20ミリシーベルトで線を引くことには3つの側面があるといいます。
「20ミリ以下なら大丈夫ということになる」
「だから20ミリ以下なら被害とはみなさない」
「だから20ミリ以下なら賠償や支援も打ち切る」
国は実際に、この考えに沿うように避難指示の解除や賠償の打ち切りなどの方針を発表しています。
原告団のある女性はこう言われました。
「小高(南相馬)から松川へ避難していた人が、
“帰るしかない、もう補償が出ないんだから”と、
庭に小屋を建てて帰る準備をしていました。
県は国に、福島の人々を何と思っているのか、と言ってくれないんですか?
私の孫は高校の合格発表を、あの事故の直後の雪の中で見ていました。
甲状腺ガンのことを考えると不安でたまりません。
この不安を抱えて黙っていなければならないのですか?」
これに対して県側は、
原発事故について、国には原発政策を進めてきたものとしての責任が、
東電には加害者としての責任がある、
と明言したものの、
20ミリシーベルトという国の方針については、
国が決めたことだから県としては言うことはない、と回答を拒みました。
原告団のある男性はこう言われました。
「国の所管だから言うことはない?
あの事故のとき、SPEEDIのデータは福島県にも届いていた。
しかし県は国が公表しないから県もしないと言ったな。
おんなじじゃないか。」
弁護団
「20ミリシーベルトという基準を、県としては問題視したことはあるのか」
県
「…………」
弁護団
「この数値は高すぎるのでは?
という申し入れを国にしたことはあるのか」
県
「……把握していません」
弁護団
「国の方針について、県は“それはおかしい。
20ミリシーベルトは高すぎる”とか考えないのか。
聞きたいのはその一点なんですよ。
国に対して、この基準を撤回しろ、
とわれわれは言ってもらいたいのだが、
その気はないのですか」
県
「今日は答えられません。
皆さんのお気持ちは受け止めました。
県としてはこれからも県民に寄り添って、真摯に対応していく考えです」
原告
「前もって要請項目を書面で提出した上でこうやって来ているのに、話を聞きました、
だけじゃ意味がないんだよ!」
………といった調子で埒があきませんでした。
原告団・弁護団は、県(知事)が福島県内だけでなく、
あらゆる原発の廃止を求めてほしい、とも要請しました。
県側の答えは、
「県は方針として脱原発を打ち出している。
無責任に原発廃止を求めるのではなく、
再生可能エネルギー推進を掲げて全国に働きかける、
それが福島のすべきことと考えている。
県外の原発について発言する立場にない。」
というものでした。
弁護団は、
「では世界中の核兵器廃絶を訴える広島と長崎の市長は無責任なことを言っているのか。
原発事故の被災地である福島のトップが全原発の廃止を言わなくて誰が言うのか、と言いたい。」
と訴えましたが、県側の答えは変わりませんでした。
この日、
「原発事故については国と東電に責任がある」
「20ミリシーベルト以上、以下に関わらず、損害があるかぎり補償すべきと考える」
「避難指示区域外からの自主避難者については、国の補償が打ち切られた後、県独自の支援策を講じる」
「避難指示が解除になったからといって、帰らなければならないとは考えていないし、
帰らないという選択をされた方にもケアの方策を立てなければと考えている」
など、県の踏ん張りが感じられる応答もあったのですが、全体としては、
「国と東電との交渉をいま、われわれがやっている。県が前面に立ってやってくれないのか」
という原告団の声が、至極まっとうに聞こえる2時間半でした。
最後に原告団の中島団長が県の管理職の人たちにこう訴えました。
「先日、沖縄の翁長知事は、日本はいま日常(民主主義)から非日常(中央集権)に紙一重で変わる一瞬を止めきれるかどうかの局面にあるといわれた。
福島もいま、紙一重のところに立っています。
どうか沖縄の姿勢を見習って、われわれの申し上げたことを政策課題として取り組んでいただきたい。」
国が推し進める“20ミリシーベルト受忍論”がこの裁判で認められると、
もしもこの先福島のような事故が起きたとき、
この数字が先例となってさらに多くの犠牲者を生むことになる―――
原告団の方たちが求めているのは賠償だけではありません。
全原発の廃炉です。
それぞれが抱える事情や立場を乗り越えて、その目は遠く未来を見ています。
今月22日、福島文化センターにおいて、
生業訴訟の原告団・弁護団主催で『銀河鉄道の夜』を上演します。
この方たちの前で舞台に立つことを恐ろしく、また誇りに思います。
宮澤賢治のことばと福島の人たちの間に立って、
本当の幸いを求める心が共鳴する空間を作り出すことができるか。
私たちにとって大きなチャレンジです。
この公演と生業訴訟については、
「生業を返せ! 地域を返せ!」福島原発訴訟原告団・弁護団のwebサイトをご覧下さい。
「原告団・弁護団の活動」をクリックすると、「銀河鉄道の夜」のお知らせを見ることができます。
文責:竹口範顕