a letter from Nobidome Raum TEE-BLOG

東京演劇アンサンブルの制作者が、見る、聞く、感じたことを書いています。その他、旅公演や、東京公演情報、稽古場情報など。

TEEリレートークVol.5 「アットホーム過ぎやしないか?」 洪美玉

2018-10-27 11:36:22 | 劇団員リレートーク


ああー、この劇団の扉を叩いてから19年も経ったのだ。
芝居やめようと思っていた時、この劇団のブレヒト作品「セチュアンの善人」を見た。
衝撃だった。



試験を受けに行った時、現在劇団代表、入江洋祐が道まで私を迎えに来て下さっていた。
方向音痴の雰囲気を漂わせていたのだろうか(笑)
新入生歓迎会、小教室と呼ばれる公演の時にはロビーになる空間、溢れんばかりの劇団員。
集団に慣れていなかった私にとっていささか苦痛だった。
大勢で飲む、食べるのに慣れていなかったのだ。
そしてその日のうちに厨房で洗い物。
あれっ? 歓迎会ではなかったのか?
あまりにもアットホームな雰囲気に拒否反応が起きていた…。
きょ、距離が近すぎる…。

今では信じられない。
私の今の芝居小屋への誘い文句は
「初日と楽日はお客さんフリーで飲んだり、食べたり出来るから、
厨房で劇団員が腕をふるって美味しい料理が出るよ!」である。
さすがに歳をとってきて、貧乏暇なしになってきて劇団でダラダラ飲むことは少なくなった。
でも場があることによって人が集い、時間のリミットが無いことで語り合い、
(時にはぶつかり合いにも発展するのだが…)多くの大切な出会いをくれました。



芝居の話全然ないじゃない?と思われるかもしれませんが、引き続き芝居に関係ありません(笑) でも実はあるんだなー。
芝居小屋は芝居だけではなくたくさんのイベントを企画してきた。
私が入る以前もあったと思うけど、
今から14年前、劇団創立50周年に憲法大集会をやったのは私にとってのエポックメイキングである。



その精神を引き継ぎたい、この劇団だからこそ出来るイベントを企画してきた。
イスラエル、パレスチナ、在日朝鮮人、沖縄、清算していない日本の植民地主義、日本軍性奴隷、福島、日の丸、君が代問題などなど…。
この国が、世界が抱える問題を当事者にこの小屋に足を運んでもらいながら実施してきた。
イベント終わって、即解散ではなく話せる時間が持てる。
昨今、政治的内容だと借りるのを拒否される公共施設とは対極のブレヒトの芝居小屋。
私にとって、どの立場に身をおいて世界を見つめるのかという視点を育てる種をまいてくれた貴重な、貴重な場所です。





いつまでもいられるとたかをくくっていましたが、来年6月に完全退去!
贅沢な空間でした。
事務仕事バリバリしている人も、
一生懸命ウォーミングアップしている人も、
ちょっと調子悪い人、
機嫌悪い人も、
ぼーっとしている(飲み過ぎか?)人も、
おしゃべりに夢中な人も受け入れる場所。
なかなかこのような場所に出会うのは困難だと思いますが、人が場を育てるのですよね、きっと。
ブレヒトの芝居小屋=ブレヒトラウム、新しい空間、余地、スペースを作り出すため、応援基金へのご協力を引き続きよろしくお願いします。

ここでの本公演は残すところあと2回となりました。
(12月13日から16日まで芝居小屋で産声をあげた『空の村号』私は13、16に出演します。
チケット予約はこちらから
1月12日は一日限りのスープ劇場『怒りを込めて振り返れ』もあります。)
いつも来てくださっている方も初めての方も是非最後のブレヒトの芝居小屋空間を味わいにいらして下さい。

次回は大先輩、原口久美子です。きりっとして、でも可愛らしい(怒られますかね…)先輩です。
ポツリと言うダメ出しに納得させられます。
ミシンの名人!修理、メンテナンス、劇団の古株ミシンは原口さんにひれ伏します。