【講義用メモ】「海兵隊の猛者」への偏見と「女性の道具化」云々について

産経MSN 「もっと風俗活用を」と橋下氏　凍り付く沖縄の米軍司令官 2013.5.13 19:31

「日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長は１３日夕、米軍普天間飛行場（沖縄県宜野湾市）を視察し同飛行場の司令官と面会した際に（中略）「風俗業を活用してもらわないと、海兵隊の猛者の性的なエネルギーをコントロールできない」と伝えたという」

　…あー…橋下氏は，海兵隊員は過酷な任務に耐えるだけの肉体的鍛錬を積んだが，しかしそれをコントロールする精神的鍛錬を積んでいないと考えているのだな。なるほど，こーゆー侮辱を受けて「橋下氏によると、司令官は凍り付いたような表情をみせ」る程度には感情のコントロールができないとも言えますね。

　…私には，十分な訓練を受け終えたように思われるが。

「橋下氏は今月１日、同飛行場を視察」したというが，日本維新の会は大阪市長がなんで沖縄の米軍基地を視察するべき必然性があるんだというところから，しっかり彼に物の道理を教える教育係を配置する必要がある。

朝日新聞 橋下氏、米軍司令官に「風俗業活用を」　沖縄・普天間 2013年5月13日21時59分

「橋下氏は同日夕、こうした発言をめぐる質疑の中で「慰安婦制度じゃなくても風俗業は必要だと思う。（米軍の司令官には）『法律の範囲内で認められている中で、性的なエネルギーを合法的に解消できる場所は日本にあるわけだから、もっと真正面からそういう所（風俗業）を活用してもらわないと、海兵隊の猛者の性的なエネルギーをきちんとコントロールできないじゃないですか。建前論じゃなくて、もっと活用してほしい』と言った」と述べた」

　朝日の伝えるところでは，産経と少々文章表現が異なる。直接話法で伝えているのはむしろ朝日であろうか。

　なお朝日では「橋下氏によると、「司令官は凍り付いたように苦笑いになって『禁止している』と言った。『行くなと通達を出しているし、これ以上この話はやめよう』と打ち切られた」という」とあって，司令官氏が割と余裕を持って対応したらしいことを教えるようでもある。

朝日新聞 慰安婦問題、風俗業をめぐる橋下氏の発言要旨 2013年5月14日2時16分

　こちらはより直接話法的であろうか。

「（ぼくは）「そんな建前みたいなことを言うからおかしくなるんですよ。法律の範囲内で認められている中で、いわゆるそういう性的なエネルギーを合法的に解消できる場所は日本にあるわけだから、もっと真正面からそういう所を活用してもらわないと、海兵隊の猛者の性的なエネルギーをきちんとコントロールできない」と言った。（司令官からは）「行くなと通達を出しているし、これ以上この話はやめよう」と打ち切られた」

　司令官氏の大人の態度が際立った内容である。というか相手がひどいとどうしようもなく良く見えるともいう。確かに，この場合，司令官氏がその階級・職責に応じた訓練を身につけているのかどうかはわからないとはいえる―相手の質が悪すぎる。

　ところで

「なぜ日本の慰安婦問題だけが世界的に取り上げられるのか。日本は「レイプ国家」だと、国をあげて強制的に慰安婦を拉致し、職業に就かせたと世界は非難している」

　どこの”世界”なんだろうなーとも思うが，えらい狭い”世界”だなーと：

「ただ、日本国が、韓国とかいろんなところの宣伝の効果があって、レイプ国家だと見られてしまっている」

　あなたもその方向で宣伝してきたわけですよね，と誰か側近は苦言してあげるといいと思う。

　もちろん

BBC Japan WWII 'comfort women' were 'necessary' - Hashimoto 13 May 2013 Last updated at 22:06 GMT

　のように，『ほぅら英国だって”そう”報道してるじゃないかッ』，他にも例があるぞということはできるが。しかしまあ，「He said last year that Japan needed "a dictatorship"」とあって―

　―アナタがよけーな口を開くたびに，『うわぁ，日本っていま，リアルに独裁を求めるような政治家がウケてるのっ？！　うわーファシズムじゃん，やばいじゃん日本ー』って感情を世界にばらまく結果になるかとも思われますが。うん，『無能な働き者』ってフレーズがあたまに浮かぶことではある。
　ああ，とりあえず，橋下氏はオリンピックをやりたくないみたいですね。


沖縄タイムス 橋下氏発言に女性団体憤慨「最低の発想」 2013年5月14日 09時54分

「県女性団体連絡協議会の伊志嶺雅子会長（６９）も、橋下氏の発言は売春を肯定しているととらえる。その上で「戦時中であろうとなかろうと、女性を道具として使うこと自体がおかしい。男性が頑張っているから女性は我慢しろというのか」と反論した」

　ここにも微妙な人権意識が見える。
「慰安婦」の文脈で「男性が頑張っているから」とは，いったい何を頑張っているというのか。「「戦時中であろうとなかろうと、女性を道具として使うこと自体がおかしい」，というより，人間を道具として扱うことがそもそもあるべきではない。だから戦争はならぬものなのだ，なぜなら人間以外のなにかもののために人間を道具化するのだから。

　だから，この女性団体連絡協議会会長氏は，
1) 戦争（目的）を何かしら偉大なものと見做し，これに奉仕する男性を特権化している
1') 非戦時における男性の仕事を何かしら偉大なものと見なし，これに奉仕する男性を特権化している
　あるいは
2) 戦争の場面における男性（兵士）の人間疎外状況を無視して，女性の道具化をのみ非難し女性を人格として取り扱えと主張する点で，女性の特権化を意図している
　などの過失を犯している恐れがある。

　いやまー現実的には統計的には，どうも女性の方が収入が低い傾向にあるらしく，ということは”女は男に食わせてもらっている”という表現は一定の事実を表したものとは言えるだろうわけで，そんな状況に落としこめられている女性を解放する歴史的必然性というのは全くその通りだと思う。

　が，もちろん，広く言えば，女性解放運動とは人間疎外状況の解消を目指す動きの一翼であるはずで，そこの大前提（だと私は信じる）をオミットすると，女性という新しい人類を創出せざるを得なくなりかねないとも思われ，運動家は言葉づかいに注意すべきだよなーと思われるところ。


　さあ与党のコメント，はよ。
　うまくこの問題に対処するコメント出せば，わりと効率よくいろいろできるだろうよ。

　橋下氏の発言は言語道断である，女性を性の道具と見做すがごとき発言・立場は我々は一切取らないものである，女性の力の活用とは各人の能力（例示いくつか出す）の十分な発揮を言うのである，過酷な任務に取り組む人々についてはその厳しいdisciplineに我々は常に敬意を抱くものである―

　論点はこのくらいだろうか。


MSN産経 「党代表の発言ではない」文科相が批判 2013.5.14 10:30

「下村博文文部科学相は１４日の記者会見で、日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長が旧日本軍の慰安婦を容認する考えを示したことについて　（中略）　「日本の有力政治家の発言について世界で相当誤解されていると感じている中、非常にタイミングが悪い」と」注意を促し，「風俗業者の活用を求めたことについては「その辺のおじさんではないですから、もう少し（立場を）認識する必要があると思う」と述べた」。

　いっそ文科相が格調高い反論等を済ませてしまって，橋下氏に格の違いをいろいろと教えてあげても良かったかもしれない。或いは，防衛相あたりが，米軍への詫び事を言うついでに橋下氏に教育するとか。