空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

2009年8月下旬のヒラン情勢

2009-08-31 08:41:55 | ソマリア関連
 激動の時期ではありましたが,この期間の「勝敗」は政府(エチオピアの援助付き)側の優勢勝ちと言ったところで評価は落ち着くかと思います。なお,承前:「2009年8月20日以降数日間のモガディシュ戦闘事情 」(8月23日),「2009年8月23日にはモガディシュは静穏に;Aweysは政府側との会談の存在の噂を否定 」(8月23日)。

Garowe Online Somalia-Ethiopia troops jointly chase out Islamist insurgents from town Aug 29, 2009 - 4:39:35 PM

 ベレトウェイン,8月29日。ソマリア暫定政府軍+エチオピア軍が市西部を圧した反政府側勢力を追い出した様子。重武装のheavily-armedエチオピア軍の車列が金曜夜から市に進入,さほどの抵抗もなく―多少の小競り合い程度で―市を確保した模様。反政府側は南部に逃走。

 この件に関するソマリア・エチオピア政府の公式声明はなし。尤も,エチオピアは基本,ソマリア領内への自国軍展開の事実を否定する例ではあります。また,―地元住民の懸念として伝えられていますが―彼らがさらにソマリア内部に作戦する可能性も考慮に入れねばならないでしょう。

 まあ,火中の栗を拾う趣味もあまりあるまいが。なお反政府側(アルシャバブ・Hizbul Islam)の公式声明はなし。常には威勢よく復讐・反撃を述べるところ,これは相当に危機感を持っている故かと推測。

Shabelle Media Network Ethiopian troops make military bases in Beledweyn town 8/29/2009 5:03:00 PM

 これによれば,エチオピア軍は市西部(反政府側の占領地だった!)に(規模はさておき)baseを設定したと。なお政府側兵士の乱行も伝えられ,発砲して(民間人かと思われる)2名を殺害(理由は不明),略奪・大学に侵入しコンピュータを破壊,金銭を奪うなどおまいらどこの山賊かと。

Shabelle Media Network Calm returns to Beledweyn town 8/30/2009 9:38:00 AM

 こちらによればエチオピア軍の基地の設営は市外の様子。ベレトウェインは平穏をとりもどした―という記事タイトルですが,どこまでの平穏だそれは,という気はせんでもない。とりあえず交通等々は正常に復帰したんではあろう。

 …この軍事的進展(エチオピア軍の直接介入)は親政府の施政者Sheikh Abdirahman Ibrahim Ma'owの(モガディシュから,3か月ぶりの)ベレトウェイン帰還に引き続くもの:

Garowe Online Somalia: Hiran region's Islamist governor returns home amid tension Aug 28, 2009 - 1:48:40 PM

 Maowはモガディシュから空路ムドゥグ,ガルカヨに赴き,ガルガドゥド経由で陸路ベレトウェインに赴いたとのこと。つまりAhlu Sunnah支配地域だな。ということはモガディシュ―ベレトウェイン間の陸路の安全は,政府側としては必ずしも保障できないということだろうか。

 しかし,市の安寧が保障されない時点であえて現場に戻って,でその直後に市の確保がなると。このタイミングは大変に調整されたものかと思うのが常識的判断というべきでしょう。

 ヒラン情勢については20日前後から動きがありまして,このころ,Hizbul Islamがベレトウェイン西部を確保(暗殺された故治安相Omar Hashiの地盤東部は政府側の手中),戦闘の焦点Bulo Burteでは反政府側が政府側の攻勢を防ぎ止めるなど― 一進一退の情勢でした:

Garowe Online Govt forces clash with insurgents in central Somalia town Aug 20, 2009 - 10:21:43 AM

 Mahas争奪ではAhlu Sunnahがアルシャバブと―恐らく互角の勝負。ベレトウェインではエチオピア軍の介入があり,反政府側は一時撤退:

Garowe Online Somalia: Unrest prevails in Hiran region  Aug 21, 2009 - 11:07:10 AM

 こうした混乱の中,6人組の男たちが聖職者を殺害しようとし,これを止めようとした商人1人を含む民間人4名が殺害されています(聖職者さんも暗殺された様子)。

Shabelle Media Network Government officials say they will retake over whole control of Hiran region 8/26/2009 1:08:00 PM

 26日,ヒランの政府側軍指揮官Salad Haredは県全域を奪取すると宣言。エチオピア軍の存在については関知しないとする建前を維持。

 急ぎ足でここ10日分の記事を流し見してみましたが,ソマリア・エチオピア政府側の動きは相当に調整され,協力関係は満足すべきレベルにあると思われます。反政府側は一時的に優勢を得ることはできてますが,どうひいき目に見てもその実力はソマリア暫定政府勢力を多少上回るといったところが精々か。エチオピア軍の介入が来ては,戦いにもできてません。

 戦いに「しない」というのが正しいかもしれませんが,それってつまり「戦う前から負けるのわかりきってる」ってわけではあるわな。

 北東方面からはAhlu Sunnahの圧力が来,エチオピア側からも圧せられ,反政府側は多正面作戦を余儀なくされている,というべきか。これでBakoolやGedoやJubbaから増援を見込めるならいいんですが,そっちはそっちで大変ですしね。

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