「精霊流し」は長崎の盆の風物詩です。「しょうろうながし」と読みます。
精霊流しは、初盆を迎える家が灯籠で飾った精霊船(しょうろうぶね)を出して故人の霊を海に送るというものです。
パソコンで「しょうろうながし」と打って変換しないので、「えつ?」と思って辞書で調べたら…、載っていませんでした。
精霊流しが全国的なものでないことを、今日初めて知りました。
写真の精霊船は島原のものです。
島原の精霊流しは、長崎のそれと似ているようで違います。
まず、船は引っ張るのでなく、故人の親戚や知人で担ぎます。
担ぎ手の掛け声は「ナマーイドー、ナマーイド-」です。
爆竹を鳴らし、「ナマーイドー」を唱えながら海まで担いでいきます。
船を飾っている提灯も「切子灯籠」(きりことうろう)と言って島原地方独特の工芸品です。
他にも違いはありますが、一番の違いは最後に船を海に流すことです。
子どもの頃は船を本当に流していました。
それまでの喧噪が嘘のような静寂の中、波に揺られ小さくなっていく精霊船は何とも情緒があり、「海の彼方に極楽浄土があるのかな…」と思ったりしたものでした。
今は、精霊船を海まで担いだ後はしばらく漁船に引っ張ってもらって、その後、陸に回収します。
数年前の、叔父の初盆のときのことです。
海に浮かぶ精霊船の周りを、いとこ(故人の息子)が、胸まで海水につかりながら「ナマーイドー、ナマーイドー」と、いつまでも兄弟二人で声を上げていました。
叔父との最後の別れだったのでしょう。目頭が熱くなりました。
あのときの光景が思い出されました。