奈良市三条本町にある「JR奈良駅旧駅舎」。昭和9年(1934)に竣工され2003年まで2代目の駅舎として古都:奈良の玄関口として活躍してきました。
鉄筋コンクリート造2階建ての駅舎は、和洋折衷の外観と内装が特徴で、方形屋根に寺院風の九輪をのせ、四隅には風鐸を持ち、内部中央には大仏殿に見られる格天井が施されています。
JR奈良駅が高架化される際に取り壊しが一時検討されたものの、保存への機運が盛り上がったことから曳家で現在の場所に移動。観光案内所として活用する形でそのまま保存されることになりました。旧駅舎は、2007年に近代化産業遺産、2011年に土木学会選奨土木遺産に認定されています。
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奈良市登大路町、興福寺境内の西隣に位置する「日本聖公会 奈良基督教会 会堂」。当時、奈良公園地区の景観にそぐわない洋風建築は認められなかったため、純和風教会として、教会の信徒であった奈良の宮大工『大木吉太郎』の設計施工により、親愛幼稚園舎は昭和4年・会堂は同5年にそれぞれ竣工されました。
日本国内には、宮大工の手によって建てられた和風のキリスト教会が5箇所あるそうです。私がこの教会の存在を知ったのは、その一つ、彦根の「スミス記念堂」に置かれた資料からでした。古都奈良の景観に相応しい教会は、宮大工の腐心によって見事に成功したと言えます。
入母屋破風に千鳥破風を組み合わせ、和瓦葺の屋根、真壁造りの寺院風の外観を持った建物は1997年に登録有形文化財に登録され、2015年には重要文化財に指定されました。
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奈良市橋本町にある「南都銀行本店」は、大正15年(1926 )4月、奈良郵便電信局跡地に「旧六十八銀行:奈良支店」として竣工されました。設計監理は工学博士で建築士の『長野宇平治』氏、施工は大林組。外壁には岡山産の花崗岩と褐色の煉瓦を使用し、構造は鉄筋コンクリート造の3階建(一部4階建)地下1階の建物で、奈良唯一の壮麗な外観のギリシア様式建築となっています。
正面に4本のイオニア式の列柱を並べ細部に装飾が施された外観は、古典様式を簡潔にまとめた好例とされており、1997年に国登録有形文化財に指定されています。
奈良市内に残された歴史的建造物、文化財指定の建物も、そうでない物も含めてまだ続きます。
訪問日:2009年10月18日