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『諦めたら、そこで試合終了ですよ!』

2009-10-24 21:23:00 | 徒然なるままに
10月24日(土)

今日は、前々任校の文化祭に行って来た。
体育祭は現勤務校と同じ日程だったので、みんなの勇姿を見届けるのは断念した。そのときに陣中見舞いに送った梨のお礼の電話を頂いた時に、教頭先生から今日のことをお聞きしていたのだ。

暗い体育館の後ろのほうから見ていたにもかかわらず、何人もの生徒が私を見つけて会釈や手を振ってくれていた。
休憩時間には教え子たちが駆け寄ってきて、みんな口々に
「先生、小っちゃくなっちゃったね~!」
「2年前だっけ?先生、ぜんぜん変ってない~!すぐ分かった~!私のことは覚えてる?」
「今、どこの先生やってるの~?」

本当に、みんな私の身長を越すぐらい大きくなって・・・。女の子はすっかりお嬢さんって感じ、男の子は背も高く、がっしりした体つきになり、声も低く、精悍な感じになっていた。
「先生、去年も来てくれていたよね~。どんだけこの中学校好きなんだよ」
「大好きだよ!だってあんた達がいるんだもん。最後の文化祭でしょ。これが終わったら、受験一色だね。頑張れよ!」
「先生アレ言って~!!」
「そうそう!総体の時も、試験の時もアレ言って皆でがんばってたんだ!」
「「「言って~!!」」」
「『諦めたら、そこで試合終了ですよ!』」
「やったー!これで頑張れるー!!」

なんだか2年間離れていた時間がいっぺんで吹き飛んだみたいだった。

出番を控えて、3年生のあるクラスが第2体育館で声合わせをしていた。
そうしたら、一人の男子が
「もう、ここまで来たら、後は練習通りいこうよ」
と言った。
なんてすごいことだろう。これから本番を前にして、「練習通りやれればいい」と言うことは、このクラスは、どれだけ練習を重ねてきたのだろう。

また、別のクラスの女子は、
「先生、うちのクラスは昨日まで学級閉鎖で、今日がぶっつけ本番なの。まだ治ってなくて休んでいる子もいるし、優勝なんて無理だ~」
と言って来たので、
「ここでじたばたしてもしょうがないよ。出られない子の分も頑張って、心を込めて歌うしかない。その歌で、何を伝えたいのか、聴いてくれている人に届くように歌ってよ。歌は、テクニックや人数じゃないよ。ハートだよ。客席で聴いているから、私に鳥肌立たせて、号泣させてよ」
と言ったら、
「『諦めたら、そこで試合終了』だもんね。頑張ってくるよ。応援してね!」
と言って、手を振りながらクラスに戻っていった。

いよいよ3年生の歌が始まった。
課題曲は『大地賛讃』
難しい曲をどのクラスも精一杯頑張って歌っていた。
1組は『消えた八月』
原爆をテーマにした重厚な歌だったが、歌の背景や状況が映像を伴って伝わってきた。一つ一つの言葉を大切に歌っているのが印象的だった。
2組は『春に』
この春、3年生を送った時に一生懸命歌った歌なので、心の中で一緒に歌っているうちに、とめどなく涙が出てきて止まらなかった。すごく暖かい気持ちになった。
3組は『十字架の島』
隠れキリシタン弾圧をテーマにしたこれも深い歌だった。
イメージポスターのマリア像は目から血の涙を流していた。
時代背景をしっかり学んで取り組んできた様子が伝わってくる歌い方だった。

どのクラスも甲乙付けがたいほど感動したが、何より感動したのは、これから歌おうと移動するクラスに、出番待ちおよび、出番が終わったクラスが
「頑張って来いよ!」
歌い終わって帰ってきたクラスに
「良かったよ!」
と声を掛け合っていたことだ。

これは、今まで見てきたどの学校の合唱コンクールでも見られなかった光景だった。
お互いにエールを掛け合い、賞賛しあうなんて、体育祭の応援合戦のパフォーマンスには組み込まれていても、合唱コンクールでは見たことがない。

もしかしたら、同じ部活動の生徒同士だったのかもしれないが、こんな時に、自然にこういう声の掛け合いが出来るなんて、素敵な学年に成長してくれていたことに心のそこから感動した。
後から聞いたところによると、エールを送られていたのは昨日まで学級閉鎖だったクラスだった。
でも、そのエールが効いたのだろう。そのクラスがグランプリを受賞した。
ハーモニーもすばらしかったが、お休みの生徒の分まで大きな声で体全体を使って一生懸命歌っていた姿に、誰もが感動したのだと思う。
結果発表の時には、残念ながら賞を逃したクラスは、心からの拍手を送っていた。

終わってから、何人かの生徒に、
「今までもいろいろあっただろうし、これからもいろいろあるだろうけれど、あなたたちの学年は大丈夫。いい学年になったね。どのクラスのどの歌も、卒業式の歌みたいに気持ちがこもっていて、上手だったよ。皆でこの調子で受験突破してね!卒業式、うちの中学と同じ日じゃなかったら、絶対見に来るから!」
と言い残してきた。

嗚呼、懐かしい生徒たち。
あなたたちを2年生の時も、3年生の時も一緒に教えたかった・・・。
もっとたくさん教えたいことがあったし、みんなの成長ぶりを見守り、見届けたかった・・・。
もう2度と一緒に美術を勉強することも行事に取り組むことも生活を共にすることもないだろう・・・。
けれど、いつでも、どこにいても、みんなの一番の応援団長だからね!
皆が頑張っているなら、私も負けてはいられない。
今の学校の生徒たちとも、来年再来年、こんな風に再会できるように、精一杯頑張るよ!
いつかどこかの街角で会っても、私だと分かるように、変らずに元気でいるよ。

帰り際、担任していた生徒の保護者と話をした。
お互い思春期の子を持つ母親同士の話をした。
もしかしたら、どこかの高校で、今度は同じ学校のPTAとして出会えるかもしれないなんて話で盛り上がった。


来週の土曜日は、前任校の文化祭だ。
末娘の授業参観とバザーの日と同じ日なので、ちょっとハードスケジュールだが、その学校にも、可愛い教え子たちがたくさんいるので、2年生と3年生の歌声だけは聴きに行きたいと思っている。