明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(869)「集団的自衛権」で私たちの安全性はどんどん壊される!安倍政権の暴走を止めよう!

2014年06月12日 23時00分00秒 | 明日に向けて(801)~(900)

守田です。(20140612 23:00)

「集団的自衛権」をめぐって、自民党が強権的な姿勢を強める中で、公明党が妥協的姿勢に傾きだしています。
与党決議によって、国会での討論すら経ずに事実上の憲法改悪、9条の解体が行われようとしています。まったくもって許しがたいことです。
安倍首相は繰り返しありもしない抽象的な論議を並べ立てては「国民を守る」と連呼していますが、現実の福島原発事故に対しては嘘ばかりついて、実際の危機を見ようともしないこの首相に、「国民」を守る意志などまったくないことは明らかです。
むしろ集団自衛権の行使は、世界中で嫌われ者になっているアメリカ軍を擁護し、軍事行動をともにすることですから、私たちの国の民が、世界の中でこれまで保ってきた安全な地位を失うことに直結します。

とくにアメリカは、イギリスと共に、イラクになんの大義もなく攻め込んだ国です。イラクが大量破壊兵器を持っているというのが口実でしたが、攻め込んで、ものすごくたくさんの人々を殺して、イラクをめちゃくちゃにしたあとになってから大量破壊兵器などなかったことがはっきりしました。
このとき日本政府も、このひどい侵攻を支持しました。小泉首相が全面的に支持したのです。安倍首相はそのとき内閣官房副長官をしていました。小泉氏とともにイラク戦争を賛美し、アメリカによる理由なき人殺しを肯定したのでした。
今回、国会でこのことを正された安倍首相は「イラクが大量破壊兵器がないことを証明できなかったのが悪いのだ」と居直りました。まさに「盗人猛々しい」とはこのことです。
実際にはイラクは何度も国連の査察などを受け、そのたびに嫌がらせも受けながらもじっと我慢して大量破壊兵器などないことを訴え続けました。アメリカの軍事力で攻撃などされたらたまらないから命がけで弁明していたのです。しかしアメリカはイラクの声を無視して攻撃に踏み切ってしまったのでした。

安倍首相はこのあまりの理不尽さを突きつけられて「逆切れ」したわけですが、しかし大切なのは、安倍首相が屁理屈にもならないような屁理屈と大嘘で真実を否定しても、実際に起こってしまったことそのものを消し去ることはできないのだとうことです。「原発はコントロールされている」と嘘をついても、放射能の脅威がまったく去らないのと同じです。
何よりもこの歴史的事実は、ものすごい被害を受けたイラクの人々、その周りの人々の胸の中に深く刻み込まれている。多くの人々があまりに理不尽なアメリカの姿に今も深い怒りを感じているのです。
イラク戦争に先んじたアフガニスタン戦争でも同じです。あのときアメリカはタリバン政権に対して「オサマ・ビンラディン」を差し出せと迫った。タリバン政権はそれに対して「ならば証拠を見せてくれ」と返答した。
するとアメリカは問答無用でアフガニスタンに攻め込んだのでした。ここにもまったく大義などなかった。このためアメリカはイスラム圏を中心に多くの国々で痛く信用を失い、怒りを買い続けているのです。

それだけではありません。理不尽な戦争の遂行は、ただでさえ殺し合いの中に投入されて心が崩れていく兵士に、破滅的な影響をもたらします。心の奥深くに沁み渡っていく罪の意識からものすごいトラウマが作られ、それが破局的な形で爆発してしまうのです。
どうなるのか。とにかく暴力的になってしまう。平和な通常の生活に戻れなくなってしまう。家族や友人に暴力を振るってしまい、やがて孤立し、自殺したり、アルコールやドラックにはまったりし、果ては暴力事件を起こしてしまったことがたくさん報告されています。
こうした兵士たちの姿は、社会全体に深刻な影を作り出してきました。安易な暴力賛美がはびこるとともに、人への恨み、つらみ、疎外感などを銃を使った暴力ではらそうとする事件が後を絶たない。それが若者による学校での銃乱射などに繰り返し結びついている。
肝心なことは繰り返し戦争をする中で、アメリカは今、町を歩いている人殺しの数が、一番、多い国になっているのだということです。それがアメリカの社会生活上の安全性をも著しく壊してしまっている。

これに対して私たちの国は、アジア諸国との間では、侵略戦争を中途半端にしか謝罪せず、必要な補償も行ってこなかったために、摩擦も起こしてきていますが、その一歩外に出ると、平和的な国として高い信用を得てきました。
これは日本が東南アジアの外まで攻め込まなかったこととも関連しています。戦後も一貫して軍事的暴力を振るうことがなかった。だからこそ、多くの国で日本は評判が良かったのです。
アメリカに怒りを抱いている国からも、日本はアメリカに原爆を投下され、すべての都市を焼け野原にされながら、平和産業を中心に懸命に復興してきた国としての共感を集めてきたのでした。
このため、かのオサマ・ビンラディンでさえ、アメリカの非道性を説くときに、「いいか。みんな。アメリカがどんなにひどい国か知っているか。アメリカは女性と子どもばかりの日本の二つの都市に原爆を落としたんだぞ」と語っていたと言われています。

こうしたエピソードは他にもたくさんあります。例えば革命後にイラクとの長い戦いに突入したイランで、NHKの朝ドラの『おしん』がメガヒット。視聴率は最高で90%を記録し、尊敬する人物としてかのホメイニ師すら抜き、おしんが1位を獲得するなどということさえありました。
おしんは中国でもメガヒットを記録し、アジアの多くの国々で大変なブームを作り出しました。戦前から戦後へと日本女性が貧しさの中から懸命に生きて抜いていった話が、日本の象徴として深い共感を誘ったのです。
あるいは「イランの子どもたちと仲良くする会」の方に聞いた話では、1990年代に入ったころのイランで、子どもに最も人気があるアニメは『一休さん』だったそうです。子どもたちは日本人が来ると「一休さんは元気にしてますか」と聞いてくるのだとか。
「一休さんは昔の人だから、もう今は生きてないのよ」と答えると「えー、一休さん、子どもなのにもう死んじゃったんですか」という答えが返ってきたとか。

ここには大切なことがたくさんあります。私たちの国の戦後の歩みが、中国を含めて多くの国々の民衆レベルで深い共感を得てきたのだということです。そしてまさにそれこそが、海外での私たちの国の民の安全性を圧倒的に保障してきたのです。
そのことは戦後もさまざまな紛争を繰り返してきた世界の中にあって、日本が武力介入をしたことが一度もないために、反感や恨みを買うことがなかったことともセットになっていることです。
同時に国内でも私たちの国は、世界の中で「人殺し」が歩いている確率が極めて低い国です。OECDのデータでも、町を歩いていて殺される確率がダントツに低いのです。自衛隊が一度も他国人を殺していないというのはそういうことを意味するのです。
自衛隊の存在そのものは憲法9条への明らかな違反で矛盾ですが、私たちの国の民はこの軍隊に一度も他国の人を殺させなかった。ものすごい努力で軍隊を軍隊をたらしめてこなかったのです。それが私たちの国の中の幸せをも作り出してきたのです。

この溢れるほどの平和を、「平和ボケ」という人がいます。何をおっしゃいますやら。ボケていられるほどに平和なことがどんなに幸せなのか。紛争の中の人々の視座に寄り添って世界を観れば理解できるはずです。ボケていても襲われることなどない国こそがもっとも平和な国なのです。
これに対してアメリカは常に他者に怯え、身構えていなければならない国です。だからハローウィーンの仮装パーティーがあることが分かっているときにも、何者かが変な格好で家に近づいてくると、不安になって銃を向けざるを得ない。それで「フリーズ(とまれ!)」と叫ぶ。
ところがある青年がその叫びを「プリーズ(どうぞ)」と聞き違えて接近してしまった。そうして撃たれて亡くなってしまった。撃たれたのは日本の若者でした。人が人を殺すことなど想像もできなかった若者でした。
ここにある矛盾は何でしょうか。日本の若者が平和ボケだったからいけないのでしょうか。そうではありません。常に銃を持って他者に怯えなければならないアメリカ社会が歪んでいるのです。平和が壊れているのです。

ところがこれほどに世界の多くの国、地域の人々、中国などからも共感を得てきた平和国家としてに日本の位置が、この10年間、大きく揺らいできています。理由はアメリカのあまりに理不尽な戦争への加担を一歩ずつ強めてきてしまったからです。
このことで私たちが得ていた世界の中での信用は日増しに低下しています。そしてその分、私たちの安全性は日増しに悪化してしまっているのです。
安倍首相はアジアの中でも周辺国との無意味な軋轢を拡大することでさらに私たちの安全性を壊している。靖国参拝の強行では、アジアのみならず欧米の国々からも、安倍首相はファシズムに寛容なのではないかという懸念を呼び起こしている。
その総体が私たち日本に住まう人々への共感をどんどん後退させているのです。アメリカの理不尽な暴力に加担すればするだけ私たちの平和は崩れていく。その意味で安倍首相は日本人を守るどころか、安全地帯から危険地帯に駆り立てているのです。

そうして自衛隊が戦闘に参加したら、自衛隊員の心も壊れていく。そうして私たちの国には人殺しが増えていき、必ず社会に悪弊をもたらすようになります。
暴力は外側から振るわれるだけが怖いのではない。暴力は人を内側からも壊すのです。いやより激しく精神を壊すのは理不尽な暴力に加担したことでの心の葛藤です。平和な心を持てなくなる。優しい心を持てなくなる。だから人を愛せなくなってしまう。
私たちの国の自衛隊はどう屁理屈を言おうが明確に軍隊です。しかしまだ人殺しという重大経験を経ていない。鬼のように人を殺す「殺人機械」としての体験がない。だから自衛隊は世界の中で一番弱い軍隊です。
それでいいし、その段階で早く解体した方がいい。解体して兵士に人殺しは間違ったことだという再教育をしたのちに、災害救助隊に抜本的に改変をすると良い。そうして積極的に世界に派遣すればいい。その方が私たちの国の安全保障は圧倒的に強まるでしょう。

安倍首相はこうした平和の根本原理をまったく理解していない。暴力への浅はかなあこがれで突き進んでしまっている。
そんな安倍首相は軍事アナリストの間で「タカ派の平和ボケ」と言われているのだそうです。実は国防を真剣に考えたときも、避けるべき戦闘は避けた方が良いに決まっている。
とくに国土が狭く、海岸線が長い日本は、軍事的には防衛するのに非常に困難な国なのです。だから戦前においても軍部は植民地を広げ、防衛圏を拡大しようとしたと言われています。列島を守ることは困難というのは軍事的常識なのです。
しかも今は私たちの国の海岸線には、攻撃されたら最も弱い原発がたくさん並んでいる。過疎地にあって防衛などとてもできない位置にです。

これらを見たときに明確に分かるのは、実は歴代の自民党政権は北朝鮮をはじめ、諸外国のことを深く信頼していたということです。絶対に原発を襲われることなどないと思っていた。だから無防備なところに次々建てた。事実、北朝鮮はそのような兆候すら示したことがありません。
いわんや中国は、日本軍に攻め込まれて大変な被害を受けたにも関わらず、これまで日本のどこにも攻撃的な野心を示したことなどありません。
にもかかわらず安倍首相は、もともとは石原慎太郎氏による東京都への領有宣言から端を発した尖閣諸島などをめぐる問題などでの軋轢をどんどん広げ、韓国とも喧嘩ばかりをしている。
平和ボケしているので、軍事的緊張がもたらす危険性にあまりにも鈍感だと軍事アナリストたちが批判しているとおりです。こうしたタカ派の「平和ボケ」は大変な迷惑です。相手は本気に攻撃してこないだろうと甘えていながら、軍事的挑発だけは繰り返しているからです。

こんな甘い意識のもとに、理不尽な戦争ばかり繰り返しているアメリカに軍事的についていけば、日本は世界の人々の共感をますます失い、危険性がますだけです。
さらにアメリカは実は自国兵士の疲弊、心身の破壊に疲れている。だから代替できる軍隊を求めているのであって、そうなれば、理不尽な人殺しをさせられてボロボロになっていくことが自衛隊にまわってきます。
もちろん彼ら、彼女らの命も危険にさらされる。それと相即的に、日本が戦後に築きあげてきた尊いものが壊れていくのです。
安倍首相はその意味で外からも内からも、日本を危険に晒そうとしている。こんなこととてもではいけれども許せません。戦争に突き進む「タカ派の平和ボケ」の安倍政権を食い止めましょう!

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明日に向けて(868)ワールドカップに思う・・・その1

2014年06月11日 17時30分00秒 | 明日に向けて(801)~(900)

守田です。(20140611 17:30)

ワールドカップブラジル大会がもうすぐ始まります。

何かを論じておかなくてはいけないと思います。僕はサッカーがとても好きなのです。日本チームも応援しています。
しかし今回、多くのブラジルの人々がワールドカップ開催に反対して繰り返しデモを行っています。「ワールドカップに使うお金があるのなら教育や医療にまわせ」というのです。至極、真っ当な訴えです。

今、スポーツ、とくにワールドカップやオリンピックなど、世界のアスリートを集めて行う競技大会が大きな曲がり角に来ているのではないかと思います。端的にえぐい金儲けの手段化しつつあることへの批判が強まっているのです。見直しの機運が高まりつつある。
人を集め、お金を集める。そのために設備を作り、アスリート育成にお金をかけ、興業としてのヒットを目指す。しかしその分、社会の大事なことへの出費が削減され続けているのです。ブラジルの人々はその理不尽さに抗議している。
オリンピックもそうです。もともとアマチュア精神に則り、選手と選手の競い合いが中心に大会を開催することがオリンピック憲章に掲げられてきながら、1980年代からプロの参加が解禁され、国威発揚の面が大きくなるばかりでした。
弱肉強食の市場万能論が世界制覇を始めたのが1970年代末ですが、オリンピックの商業主義化がこれにピタリと沿ってきた。スポーツの楽しみよりも金儲け主義が強くなってきたのです。

僕はそのえぐい象徴が東京オリンピックへの動きであると思っています。日本には未だにまったく収束していない原発事故があり、大変な量の放射能が飛び出してしまっているのに、この一番大事なことを無視し、ふたをし、嘘で塗り固めてオリンピックを招致してしまった。
なぜか。ただただお金儲けのためです。事実今、東京湾沿いのオリンピック開催予定地の土地がぐんぐん上がって、株価の下支えにもなっている。儲け主義はすでにどんどん走り出しています。
僕はなんとかこのひどい東京オリンピックを中止させなければならないと思っていますが、そのことを考えるとき、今回のワールドカップブラジル大会には心ざわめくものがあります。
ブラジルの人々の声を受け継ぎながら、東京オリンピック反対の声を高めていかなくてはならないと感じています。オリンピックにつぎ込むお金の全部を、原発事故の真の収束と、放射線による健康障害対策にこそ使うべきだからです。

しかし心がざわめくのは、一方で僕がスポーツをこよなく愛しており、トップアスリートたちのアーティスティックなパフォーマンスを観るのが大好きだからでもあります。
日本チームにシンパシイがあるのは、単純に一番よく選手たちを知っているから。親しみのある彼らに頑張って欲しいなと自然な気持ちで思います。
同時にサッカーが世界の中で持っている特殊な意義にも心を惹かれます。端的にサッカーの中で、これまで戦争や領土争いなどに翻弄されてきた私たち現代人が、もう一度会いまみえ、仲良くなっていく要素があると思えるからです。
ワールドカップはその意味でサッカーを通じて世界を学び、各国の人々の思いを知る大きなチャンスでもあります。ぜひ多くの方にそんな観点からワールドカップを観て欲しいとも思うのです。

そんな思いを込めて、ブラジルの人々のワールドカップ批判への強い共感をも胸に抱きつつ、「ワールドカップに思う」という連載を行いたいと思いますが、そのために4年前の南ア大会の時に書いたもののリメイクから入りたいと思います。元々の題は「ワールドカップ南ア大会に思う」です。
なぜかというと、南アフリカで行われたこのワールドカップにはさまざまな形での「和解」が実現されていたからです。
ちなみにこの論稿は大親友で2012年4月14日に亡くなった安藤栄里子さんという方がおよそ60人の友人を集めて始めた「メールラリー」という場に書き込んだものです。以下にそのいきさつが書いてあります。

明日に向けて(657)追悼 同志・安藤栄里子!
2013年04月14日
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/02f4891c83d22f934a121b2a20986203

現地の人々のものすごい反対の声の中で強行されるワールドカップ。
やはりとても試合だけを心から楽しんではいられない。前回と今回のワールドカップを見つめつつ、それをきっかけに世界の結びつきを再度、考え直してみたいと思います。
以下、安藤さんを中心としたメールのやりとりに投稿した文章を掲載します。歴史に興味のある方、ぜひお付き合いください。

*****

今回はちょっと、時事的な話題を取り上げて、戦争の問題、争いの問題を考えて見たいと思います。よろしければ、どうかお付き合いください。

取り上げたいのはワールドカップですが、みなさんは、ご覧になられましたでしょうか。
僕は結構、熱く、日本チームを応援していました。また世界の名選手たちの妙技をみるのも楽しく、堪能させてもらいました。同時に、幾つかの場面で感慨深い思いにも浸りました。
ワールドカップの楽しさは、サッカーが、本当にワールドなスポーツになっていることにあると思います。世界のいたるところからチームが来るので、お国柄が如実に表れる。
そこに数々のドラマが生まれますが、そこには歴史が強く反映している場合が多い。

とくにこの点がはっきり反映するのが、ヨーロッパのチーム同士の戦いであるように思います。国歌やユニホームの色、その一つ一つが歴史の象徴であり、支配ー被支配の関係性などが反映している。
しかし、だからといって、再び流血の争いになるのではなく、こうした歴史が、競技場の中に収まっている。
「奴らを倒せ!奴らは敵だ!」。いかにも野蛮で物騒な言葉すら飛び交いますが、それはあくまでゲームの中の話。
僕はその野蛮さそのものも次第に薄れていくといいなと思いますが、本当の戦争が、サッカーという代理戦争に変わっているのだとしたら、それは、とりあえずはいいことなのではないかと思えます。

ただ、残念なことに、こうした歴史背景が日本の中ではほとんど、報道されません。ワールドカップは、世界を知る大きなチャンスでもあるのに、残念に思います。
それで少し、ワールドカップに即して、そこに色濃く反映しているものについて、論じてみたいと思います。

 
さて今回の決勝戦は、スペイン対オランダでした。絶妙なパス回しによる可憐なサッカーをすすめるスペインに対して、フィジカルコンタクトの強いオランダは、アグレッシブなタックルを多用して、スペインのパスを封じる作戦にでました。
このため、イエローカードの連発で、決勝戦でもっとも多く、警告の出た試合になりました。

こうした点をみなさんはどう思われるでしょうか。実は、日本もオランダと対戦し、激しいタックルで再三、ボールを奪われました。日本の新聞には、日本選手には、闘争本能が足りない、狩の精神が必要だとかの文字が躍っていた。
でも中国では、オランダは、フェアープレーの日本を、ダーティープレーで倒したと酷評されました。
僕は、狩の精神なんてもたなくていいじゃないかと思っていたのですが、中国のメディアや、ネットの書き込みで、日本はフェアプレーと書かれたことにはちょっと驚いたし、嬉しい気もしました。
中国で、日本のことを「フェア」と書くのは珍しいのではないでしょうか。また日本は攻撃性が足りない・・・なんて書かないのもいいなと思いました。

ところで、当のオランダですが、チームもスタンドも、オレンジ一色ですよね。これの意味するものをご存知でしょうか。これはオランダ王家のオレニエ家を示すものです。
オランダ語のオレニエを、英語で発音するとオレンジになります。これと同時にオレンジは、プロテスタントを示す意味も持ちます。
このオランダは、もともとスペイン領の国だったのですね。正式名はネーデルランド。オランダは中心的な州であるホラントのなまった発音です。
そのオランダは、1568~1609年の「オランダ独立戦争」によって、スペインから独立します。この戦争を率いたのが、オラニエ公ウィレムでした。

ワールドカップでは試合に先立って、各国チームが国歌を斉唱しますが、オランダの国歌は、このオランダ独立の歴史を唄ったもの。オレンジ家を中心にし、スペインからの独立に立ち上がったことが歌詞に盛り込まれています。
選手はこの唄を胸に手を当てて唄ってから、試合にのぞむというわけです。


オランダ国歌 「ナッサウのヴィルヘルムス」

私は、ドイツの血統のナッサウのヴィルヘルムスだ;
祖国に誠実に、私は死まであり続ける。
私は、自由で恐れないオラニエ公だ。
スペイン王に私は常に名誉を与えてきた。

あなたたち、私の神と主は、 私の盾であり、あなたたちを私は頼る。
あなたの上に私たちは建てるつもりだ;
私を置いていくな、
私が敬虔で、いつの時もあなたのしもべで続けるために、
私の心を傷つける専制政治を追い散らしながら。


歌詞は以上ですが、ナッサウのヴィルヘルムスとは、オラニエ公ウィレムのこと。
また「スペイン王に私は常に名誉を与えてきた」というところがちょっと分かりにくいのですが、これはオランダ独立戦争が、当初は「スペイン王の意に反して圧制を行なう執政の打倒」を大義として掲げたことを反映しています。
しかしこのオラニエ公らの決起は、当時、この地方にプロテスタントのカルヴァン派が広がっていたことも背景としていました。
カルヴァン派は商業の発達を背景にしていて、交易の自由を求めていたのですが、それを弾圧したのがカソリックの牙城であり、広大な領地を治めていたスペインだったのです。

その点で、プロテスタント対カソリックの争いは、新興商業勢力対旧来の荘園勢力という位置も持っていました。このことが詩の最後の一句、「私の心を傷つける専制政治を追い散らしながら」に反映しています。
ちなみにオラニエ公はその後、スペインによって暗殺されてしまいます。(1584年)
しかし時勢はオランダに有利に動いていきます。とくに1500年代に、度重なる内紛を経ながら、プロテスタントへの改宗の道を歩んできたイングランドが台頭。
スペインと衝突するようになり、1588年に「アルマダの海戦」で、スペインが派遣した130隻、3万人からなる大艦隊を撃破しました。

このスペイン艦隊の名は、Grandey Felicisima Armada(最高の祝福を受けた大いなる艦隊)。その大いなる艦隊を撃破したイングランドは、痛烈な皮肉としてこれを「無敵艦隊」と呼びました。
つまり「無敵艦隊」とは、たいそうな名を持ちながら、実際には弱い奴らというほどの、嘲笑がふくまれているのです。
ちなみに、ワールドカップスペイン代表チームもまた、「無敵艦隊」として報道されていますが、これは歴史にあまりにも鈍感で無頓着な日本でのみなされていることです。
スペインはもちろん、他の国も、もともとは蔑称であるこの言葉を使うことなどありえません。在日スペイン人はどのように感じているのでしょうか。

さてこの大艦隊の敗北は、スペインの凋落を加速することになりました。こうしたことを背景に、オランダも独立を迎えていくわけですが、そのことはヨーロッパにおけるプロテスタントの拡大を意味し、そこここで、戦いの拡大を生んでいきました。
かくしてヨーロッパは、戦乱に継ぐ戦乱に覆われていきます。
ご存知のようにこの中でプロテスタントが台頭し、やがてそれがイングランドを出発点とする市民革命につながっていく。
そのためここだけを見て、市民革命を「歴史の進歩」と捉える歴史観が、勝者による自己宣揚のもとで、流布されてきました。

とくにオレンジ家はその重要さを増していきます。
カソリックとプロテスタント、一方で、王制と共和制を行きつ戻りつしたイングランドが、ピューリタン革命と、その後の壮絶な内戦を経た後に、1688年、「オレンジ公ウイリアムス」を招いての無血の名誉革命で、終結したからです。
ところがこのことはカソリックの側、とくにイングランドとの対抗からカソリックを守り続けたともいえるアイルランドにとっては絶望的な流れでした。
すでにピューリタン革命の折に、オリバー・クロムウェルが、アイルランドのダブリンに進軍し、聖職者や女性を含む4000人の無差別殺害を行なっています。

その後、力を増したイングランドは、ウエールズ、スコットランドを力によって従わせ、さらにアイルランドに迫りました。長い戦いを経て、結局、イングランドは北アイルランドを占領し、これ以外のアイルランドは独立国になっていきます。
そのためその後は、北アイルランドをめぐる争いが長い間続きました。
これはつい最近まで、イギリス軍対アイルランド共和国軍(IRA)の戦いとして行なわれましたが、その舞台は主に北アイルランドでした。
とくにここで行なわれる「オレンジ騎士団の行進の日」などが闘争の舞台になった。その名のごとく、プロテスタントの騎士団が、カソリックを徹底的にやっつけたことを記念する日です。

その行進の先々に、IRAは爆弾をしかけました。そのため僕は、「オレンジ騎士団の行進の日」が近づくと「やめろよ、やめろよ」と思ってました。
行進も、攻撃も、どっちも止めて欲しい・・・。そして1990年代に入って、実際にここでは和平が実現しました。
その意味で、今は平和に見れるかもしれなけれど、あのオレンジ一色のスタンドをアイルランドの人たちはどう見てきたのだろうと、いつもため息が出るものがあります。
ちなみにアイルランドを代表するチームは中村俊輔のいたセルティック、要するにケルトですね。色は大地の緑と、カソリックの白です・・・。

次回は、スペインチームについて書きます。

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明日に向けて(867)福島原発2号機格納容器の水位は想定の半分しかなかった!

2014年06月10日 22時00分00秒 | 明日に向けて(801)~(900)

守田です。(20140610 22:00)

福島原発に関する東京電力の発表です。

核燃料がメルトダウンし、一体どこにどうあるのか、よく分からなくなっている1号機から3号機の原子炉の中で、2号機の格納容器内に投入している冷却水の水位が、底部からおよそ30センチであることが分かりました。
これまでの想定は60センチ。水位では半分しか水が溜まっていなかったことになります。水は核燃料を冷却する要だから重大問題です。
ただしこのことが把握されたことでただちに原子炉の今すぐの危機が確認されたというわけではありません。内部の温度は35度であり、どこにあるかは分からないものの、核燃料が高熱化している兆候はつかまれてはいないからです。
ただし核燃料が水の中にすべて浸かっているのか、頭を出しているのか。あるいはそもそも本当に格納容器底部にあるのか、もっと潜ってしまっているのか、相変わらず把握できていないことも明らかにされています。

もう少し詳しく観ていきましょう。今回の発表は昨年8月に挿入しようとして失敗した監視計器の再設置作業の中で明らかになったものです。この計器は格納容器に外から差し込んで、下に垂らしていくものですが、昨年8月の投入時に途中で格子状の板にひっかかってしまったのでした。
それをいったん抜き取って再度、投入して下へ下へと送ったところ、格納容器底部まで届き、そこで初めて現在の水位が把握できたというのです。正確には下から15センチのところで水が感知され、35センチではされない。その間の30センチが水位として推定されています。
なぜ30センチなのかというと、格納容器下部には、ドーナツ状の圧力抑制室があり、格納容器からそこにむけたベント管が設置されています。その管の下部が底部から30センチの地点にあり、それより上のものはベント菅に流れて行ってしまうと考えられたということです。
東電より出された説明図を示しますのでご覧下さい。

福島第一原子力発電所2号機原子炉格納容器内 監視計器再設置作業結果
東京電力株式会社 2014年6月9日
http://www.tepco.co.jp//nu/fukushima-np/handouts/2014/images/handouts_140609_05-j.pdf

さて、これまでも述べてきましたが、このような情報に接する時に大事なのは「ああまたか!」と麻痺してしまわないことです。
というかこれだけ長きにわたって「新たにここが壊れていることが分かった」とか「60センチだと思っていたが30センチだった」とか繰り返し伝えられると、危機感が麻痺してしまって当然です。
けして東電がそれを狙ってこうした発表をしているのでなく、実際に、次々と分からなかった事実の判明が続いているのだと思いますが、これはこれからも続くことです。根本的なところでの事態の把握ができておらず、原発がまったくコントロールできていないからです。
ならばこういう情報にはどうやって接すれば良いのでしょうか。大事なのは時系列をきちんと追いかけること、歴史生成的に今、起こっていることを把握することです。そうすると事態が立体的に見えてきます。

福島2号機についてはどうか。まず水位が60センチと把握されていたときに戻る必要がある。この発表がなされたのは2012年3月26日です。そしてそれまではどれぐらいと考えらえていたのかと言うと、なんと3メートルから4メートルという把握だったのです。
このころ投入していた水量は1時間あたり8.8トン。ところがその水はほとんど思ったように溜まってはいなかった。核燃料を冷やしていると思われた水はまったく違うところに行っていた。
どこに行ってしまったのか。ベント管を通って圧力抑制室に流れ込んでいたのです。その先のどこからか漏れ出してしまっているために、水は3メートルも貯まらず、地下水を汚染し続けていたのです。
ところがここで不可解なことも出てくる。当時の東電の発表に基づくNHKニュース解説などを調べてみると、なぜ60センチとされたのかというと、内視鏡での観察が根拠であるとともに、それがベント管下部にあたるとされたからです。以下の記事をご参照ください。

解説:福島第一原発2号機に何が
NHK「かぶん」ブログ 2012年03月27日
http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/600/114583.html

当時のニュースや東電発表を調べてみたのですが、なぜここでベント管下部まで60センチと報道され、今回30センチと報道されたのかよく分かりませんでした。
あるいは単純ミスで後に訂正されているのかもしれませんが、ただ大きくつかんでおくべきことは、2号機はもともと事故から1年間は、水位が3メートルもあると思われていたのにまったくそうではなかったということです。
それで2年前に60センチであると訂正把握されたのですが、今回は30センチになってしまっていた。重要なのは、もしここに核燃料があるのだとしたら、あまりに少なすぎる水位だと思われる点です。
一部の人々が指摘しているように、核燃料はもっと地下にまで潜ってしまっている可能性が高いと言えるのはないでしょうか。反対に、だから30センチでも冷やせているのかもしれない。核燃料からは30センチではないのかもしれない。

しかしそうであれば核燃料はより危険な状態にあることも予測されます。格納容器という遮蔽物の外に出てしまっていることになるからです。
豊富な地下水の流れと接することはないのでしょうか。その場合、水蒸気爆発が起こる可能性はないのでしょうか。おそらく誰も確かなことなど言えないと思うのです。
これまでも述べてきたように、こうした事態を前に私たちは、原発がまったくコントロールなどできていないことをこそきちんと理解し、万が一の事態、事故の拡大、あるいは破局の進行にこそ備えるべきです。
やるべきことは、子どもたちの疎開をはじめ、あらかじめの避難を促進することであり、同時に広域の避難訓練を行うことです。

4号機の燃料棒の取り出しにおける不測な事態、大きな余震の発生・・・だけではなく想像もしないところから危機が起こってしまうかもしれないのです。
なにせ3メートルは水が溜まっていると思われた2号機が60センチしか水がなかった。それに気づいたのが2年前であったわけですが、今度はその水が30センチになっていたのですから。
格納容器は立方体ではないですから水量は容積でいうと半分などではまったくすまないでしょう。予想よりもっとずっと少なかった。それが核燃料を冷やす核心である冷却水の実情なのです。
あまりに多くのことが把握されていない。コントロールなどまったくされていない。だからこそ私たちは万が一の事態に備えるべきです。そのためにはこの危機を見据える胆力、人間的な力のまったくない首相を今すぐにも交代させる必要がある。危機を見つめられず、おそらくは一番最初に自分に嘘をついて事態をごまかし続けているこの首相の存在こそが、危機を何倍にもしている根拠でもあるのですから。

以下、NHKのニュースをご紹介しておきます。

*****

「2号機」格納容器内の水位は想定の半分
NHK 2014年6月10日 4時13分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140610/t10015099621000.html
 
東京電力福島第一原子力発電所2号機で、溶け落ちた核燃料があるとみられている格納容器内部の水位がおよそ30センチと、これまで考えられていた半分程度であることが分かりました。
東京電力は、内部の温度などから安定して冷却できているとしていますが、詳しい状況は分かっておらず、さらに調べることにしています。

福島第一原発2号機では、事故で溶けた核燃料が原子炉の底を突き破り、格納容器の下に落ちているとみられていますが、詳しい状況は分かっておらず、今月から水位計と温度計を入れる調査が行われています。
その結果、格納容器内部の水位は底からおよそ30センチと、おととしの内視鏡を使った調査から考えられていた60センチの半分程度であることが分かりました。
東京電力は内部の温度が35度前後であることから核燃料は安定して冷却できているとしていますが、すべて水につかっているかは分からないということです。
水位とほぼ同じ高さには、「ベント管」と呼ばれる大きな配管があり、東京電力は水はこの「ベント管」から、その先にある「圧力抑制室」というドーナツ状の設備に流れて行き、この圧力抑制室のどこかにある損傷箇所から建屋の地下などに流出しているとみています。
福島第一原発では、格納容器の損傷箇所を補修し、水を満たしたうえで、核燃料を取り出す計画で、東京電力は核燃料の状況や圧力抑制室の具体的な損傷箇所を詳しく調べることにしてます。

難航する格納容器調査

メルトダウンが起きた1号機から3号機では、汚染水が漏れ出している格納容器の損傷箇所がどこにあるかと、今後、取り出す溶け落ちた核燃料が、どのような状態で存在するかが重要な調査項目です。
このうち、損傷箇所については2号機では、格納容器の下部にあるドーナツ状の圧力抑制室のどこかにあると考えられますが見つかっておらず、1号機と3号機では、水が漏えいしている場所が見つかったものの、ほかにも損傷箇所がある可能性があります。
溶け落ちた核燃料については、3基とも、その一端すら捉えられておらず、カメラを搭載したロボットの投入など、さまざまな方法による調査の準備が進められています。

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明日に向けて(866)「水俣と福島から国の責任を問う」・・・中地重晴さん講演会のお知らせ(6月21日)

2014年06月08日 17時00分00秒 | 明日に向けて(801)~(900)

守田です。(20140608 17:00)

今回も『美味しんぼ』応援記事の続き、第9弾ですが、主軸は非常に重要な講演会のお知らせです。6月21日に京都大学で行われる中地重晴さんの講演会です。
なぜこれが重要なのかと言うと、中地さんは『美味しんぼ』へのバッシングの発端となった「福島での鼻血」に関する疫学的な調査をされ、他ならぬ双葉町で鼻血を経験した人が、被曝のない他の地域よりも有意に多いことを証明された方だからです。
この研究は中地さん一人によってなされたのではなく、岡山大学の津田敏孝さんを中心とし、まだ井戸川克隆さんが町長だったころの双葉町役場の協力のもとに行われたものでした。

重要なのは、ただ鼻血を出した人が有意に多かったという結論を得たことだけではありません。
中地さんや津田さんが、水俣病以来、連綿と続いてきたこの国の公害事件、環境汚染による健康被害の問題と取り組み続けるなかで、この国にはびこる「医学的判断における科学的誤り」とでも言うべきことを的確に捉え、その観点から疫学的な調査を進めらていることです。

「医学的判断における科学的な誤り」とは、何らかの健康被害を証明する場合、「被害が起きる科学的メカニズム」を明らかにせよというもので、それがなければ被害は実証されないとするものです。
実際には「メカニズム」の解明は往々にして困難です。というよりも、メカニズムというのは細胞レベルから分子レベル、DNAレベルと、より微小な世界にどこまでも遡っていきうるものであり、「メカニズムの未解明」は、被害認定を拒む口実にすら使われてきてしまっているのです。
しかし実際には被害、「メカニズム論」によってではなく、疫学的な調査によって立証可能です。そしてその段階で、対処が進められなければならないのです。

例えば放射線の低線量被曝と鼻血の関係でいっても、政府や原子力推進側は「低線量被曝で鼻血が出ることなどありえない」と強調していますが、実はこれは高線量被曝で鼻血が出るメカニズムを援用し、「高線量でないからありえない」と結論付けている非常にお粗末なものです。実は「低線量で鼻血が出ない」メカニズムの証明にもなっていない。
こういう場合に力を発揮するのが疫学的調査です。この調査の場合、予見(低線量下では鼻血は出ない。あるいは出る)を排し、まずは実際に鼻血が出たのか出なかったのか、それは被曝していない地域と比べて有意に高いのかどうかを見れば良いのです。
ところがこの単純で明快な作業を、今回、『美味しんぼ』をバッシングしている政府も、福島県も、たくさんの「科学者」たちも行っていない。ただ「出ないといったら出ない」という論理を振り回しているだけで、まったく非科学的です。

僕はこの点に関しては、今の日本で、急速に広げるべきものこと疫学的視点であるという立場から、次々と論稿を発表している岡山大学の津田敏秀さんの著書、『医学的根拠とは何か』を紹介する形で紹介したことがあります。
以下の記事です。分かりやすくまとめられたと思うので、ぜひ参考にしてください。

明日に向けて(847)メカニズム不明でも放射能による鼻血は証明できる!
・・・『美味しんぼ』応援第三弾!
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/7ad11f46d1ea5963d6213c87c86d8456

さて今回、ご紹介している中地重晴さんも、この記事の中に登場しています。前述した双葉町などを対象とした疫学的調査の結果の一部を論文の中で発表してくださっていたので紹介したのです。
ところがこの調査。井戸川元町長を追い出した現在の双葉町が隠してしまっていました。その上で双葉町もまた『美味しんぼ』に抗議を行っていた。
しかしその論文があるところからついに全面的に公表されました。以下からPDFファイルの形で入手できるのでぜひご覧下さい。被曝に関する非常に重要なデータです。

双葉町等での疫学調査の「報告書」について
http://www.saflan.jp/info/870
(ここから「報告書 低レベル放射線被曝と自覚症状・疾病罹患の関連に関する疫学調査―調査対象地域3町での比較と双葉町住民内での比較―」がダウンロードできます。)

今回6月21日に行われる中地さんの講演会は、このように双葉町などの疫学的調査の成果が全面公開された後の初めてのものとなります。
なので僕自身も大変、期待しています。かけつけて一番前に陣取って、じっくり拝聴し、ノート化し、「明日に向けて」に紹介したいと思っています。
可能な方にはぜひご参加願えればと思います。

なぜかと言えば、こうした疫学を使った観点は、今後の放射能被害との国や東電を相手取った闘いで最も重要なものになるからです。
繰り返しますが、広島・長崎原爆や、水俣病をはじめ、この国の健康被害をめぐる争いでは、被害者の側が被害発症の「メカニズム」を明らかにせよと迫られてしまい、たくさんの「科学」の壁の前に呻吟せざるをえませんでした。
今も、私たちの国にはものすごいたくさんのヒバクシャが追加的に生まれてしまい、それぞれで健康被害に苦しめられたり怯えたりしているわけですが、しかし、放射線障害は証明できないというあきらめのようなものが支配してもいるかと思います。

例えば白血病をはじめ、がんになったり、心筋梗塞になったり、あるいは白内障など目の病気になったりとかしたときに、「それが放射能の影響かどうかは分からない」と被害者の側が被害を訴え、補償を得ることを諦めがちになってしまう。
そうではないのです。まず放射線被曝の害かどうかからすら私たちは一歩離れてよい。どうしてかというと原発からさまざまな放射性物質が飛び出し、汚染を受けた地域と、そうでない地域を比較して、有意に増えている健康被害はみんな原発事故の被害と認定できるからです。
被曝かどうかから離れて良いといったのは、放射性物質はそれぞれがまた何らかの化学物質で、その科学的性質が健康被害を引き起こしている可能性もあるからです。

繰り返しますが、その「メカニズム」を被害者は、少なくとも被害の発生の実証においては解き明かす必要などないのです。
まずは放射性物質、ないしは原発から飛び出したあらゆる化学物質に汚染されてない地域と比較して有意に増えているすべての症状を調べ上げれば良い。少なくともそのことで被害があることは実証できるのです。
大事なのは、民衆の側が「メカニズム論」に騙されてしまわないこと。そしてさまざまな形での疫学的な調査を要求することです。また可能な限り自分たちでもデータを残すことです。

そのためには、原爆の被爆者が本当に何もないところから、一歩一歩、被害の実相を暴きだして、被害を認定させ、権利を拡大してきた歴史に学ぶとともに、科学としての疫学を大いに学び、理解し、広めること、これが今後の何十年かをわたしたちが過ごしていく上で決定的に大事だと思うのです。これが大変な被曝をさせた加害者を「完全犯罪」として逃がしてしまわない上で一番のキモなのです。
今回、全面公開されたデータについての僕なりの分析も深めていきたいと思いますが、それをなしつつ、この重要なタイミングで行われる中地重晴さんの講演に耳を傾けたいと思います。

さてここからは少しプライベートは話になりますが、今回の講演会を主催するNPO法人市民環境研究所は、尊敬する元京都大学の石田紀郎先生が主催されている研究所です。
実は我が家から近いところにあるため、時折、この付近を歩いていて、ばったり石田先生に出くわすことがあります。
数日前も「おい、守田君」と後ろから呼び止めていただいて、路上で立ち話をしました。

そのとき21日にはぜひうかがうつもりであることをお伝えしたのですが、そうしたら実は中地先生、京都大学の学生さんだった時に、石田先生の研究室に出入りされていた方だったことをお聞きしました。
「他にも〇〇君とか××君とかな。僕のところにおった学生が今、環境のことでいい仕事をしていてくれるんや。みんなお金の稼げないところに就職して苦労したんやけどなあ」と石田先生。
「中地君は工学部で僕のところではなかったのに、工学部は面白くないといって、僕のところに来てくれたんや」とも嬉しそうに・・・。

僕が「先生。さすがですね。立派な方を次々育てられたんですねえ」と言ったら、石田先生いわく。「ちゃうねん。あいつらがな、勝手に育ちよってん」・・・。
「うー、かっこいい!」と思いました。「日本の知性、ここにあり」とか思ってしまいました!
石田先生、本当にそう思っておられるのでしょう。その上で、中地さんらの活躍を本当に嬉しそうに話されるのです。・・・ますます21日の講演会に行きたくなったことは言うまでもありません。

僕は思うのです。きっと中地さんも石田先生から人々の痛みに直に学ぶことを教わり、やがて水俣病問題で立ちあがった水俣病患者の方たちやそれに寄り添う無数の方たちと交流してその思いを引き継ぎながら英知を育まれてきたのだろうと。
そしてそれをこそ私たちはシェアし、一生懸命に学び、不十分であってもいいからなんとかその魂をつかんで、これからの人々に伝えて行く必要があると。
とくに、申し訳ないけれど、私たちの世代が被曝から守れなかった若者たち。遠い先の未来で、私たちのいない時空間で被害と立ち向かわないけばならないかも知れない。そのときのための英知を今、しっかりと把握し、僕なりにまとめ、後世に送っていきたいと思うのです。

みなさん。ぜひこの作業に参加してください。未来世代、今はまだ見ぬ世代が放射能汚染とたたかうためにも、今、私たちが疫学的な観点をしっかり身につけ、市民レベルに浸透させていく必要があります。
それこそが未来の人々を守る術です。だから、一緒に学びましょう!
以上から・・・主催者でもなんでもないのですが・・・中地さん講演会へのご参加を呼びかけます!以下、案内を貼り付けます。

*****

NPO法人市民環境研究所の総会と講演会

日時:2014年6月21日(土)
会場:京都大学農学部 W-106教室
左京区北白川追分町
入場無料 ぜひご参加を!

総会(会員のみ):午後1時~2時
講演会:午後2時~4時
講師:中地重晴さん(熊本学園大学教授)
演題:水俣と福島から国の責任を問う

中地重晴さん(熊本学園大学教授)
学生の頃から反公害運動に参加し、市民のために設立した「環境監視研究所」で多くの公害問題の科学調査を行い、2010年より熊本学園大学社会福祉学部教授に就任する。
瀬戸内海の豊島での有害産業廃棄物不法投棄事件の公害調停や、ダイオキシンやアスベストなどの汚染調査、PRTR制度の活用などで有害化学物質削減に取り組む。
一昨年秋に岡山大学の津田教授らとともに双葉町、丸森町の住民の自覚症状調査を実施し、福島原発事故による放射能汚染の住民への健康影響について明らかにした。
熊本での水俣病と福島での放射能汚染の現状を踏まえて、公害、環境問題に対する国の責任をきびしく問いかけている。

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明日に向けて(865)デモ隊に繰り返し暴力で襲いかかるトルコ政府!

2014年06月05日 23時00分00秒 | 明日に向けて(801)~(900)

守田です。(20140605 23:00)

再びトルコのニュースをお送りします。

トルコで4月26日、「チェルノブイリの日」にシノップをはじめ各地で大きな原発建設反対を掲げたデモが行われたことをすでにお伝えしましたが、5月31日にはあまりに横暴なエルドガン政権への大規模な抗議行動が行われました。
ちょうど1年前、イスタンブール中心部のタクシン広場、ゲド公園の再開発に反対するデモに、トルコ政府が警官隊の暴力で襲いかかったこと。ガス弾が乱れ飛び、たくさんの方が殺された(8人とも11人とも言われいる)ことへの抗議行動でした。
ところがトルコ政府は再び各地で治安部隊を配備。デモ隊に激しく襲いかかり80人が拘束されたと伝えられています。

私たちの国は、このトルコに原発を輸出しようとしています。美しいシノップの半島の環境を破壊してです。その上トルコは日本と同じ地震大国。それだけでも原発を建てるのは大変危険です。
しかも政府は人権感覚に著しく欠けています。だからすぐにデモ隊に暴力を振るう。よりによってこんなにひどい政府を相手に、原発輸出など安倍政権に進めさせて良いのでしょうか。
さらにこの政府は安全思想も著しく欠如しています。そのことがはっきりしたのがこの5月13日にソマ炭鉱で起こった悲惨な事故です。これまで301人の死亡が確認されていますが、安全対策にかなりの落ち度があったことが死者を拡大した要因であることが明らかになっています。

こんなところに危険な原発を建てさせてはいけない。もちろんあらゆる国への輸出に反対ですが、とくに人権意識も安全思想も欠如したトルコ政府に原発建設を進めさせるのは最悪です。
チェルノブイリ原発事故で被曝し、苦しんできたトルコの多くの人が反対運動を続けるでしょうが、再び、三度、政府が強権を発動し、治安部隊に暴力を発動させることは明らかです。そんなことをけして許してはいけない。
私たちには福島原発事故で世界に大量の放射能汚染をもたらしてしまった国に住まうものとしての責任からも日本からの原発輸出を食い止める義務があります。トルコ政府の暴力を止める責任だってある。そのためにもこの間トルコで起こっていることをしっかりと把握しておきましょう。幾つかのニュース、動画などを紹介しますのでぜひご覧ください。

まずはNHKのテレビニュースを紹介します。

***

トルコ 反政府デモから1年 衝突相次ぐ
NHK 20140601
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140601/k10014885151000.html

トルコでは、去年、エルドアン政権に抗議するデモが行われてから1年となるのに合わせて、31日、各地で大規模な抗議集会が呼びかけられ、治安部隊が催涙弾などを使ってデモ隊の抑え込みを図ったことから、衝突が相次ぎました。

トルコでは去年5月、最大都市、イスタンブール中心部の「タクシム広場」の再開発に反対するデモが起きたことをきっかけに、エルドアン政権に抗議するデモが全国に広がりました。
抗議デモが本格的に始まってから1年となる31日、若者らがタクシム広場で大規模な抗議集会を呼びかけ、治安部隊は周辺におよそ2万5000人の隊員を配置するなどして広場を封鎖し厳戒態勢をとりました。
デモ隊が広場に入ろうとしたため、治安部隊が催涙弾や放水車を使って抑え込みを図ったことから、広場周辺で衝突が起き、地元メディアによりますと、けが人が出ているほか、およそ80人が拘束されたということです。
また、首都アンカラや西部のイズミールなど各地でも大規模な抗議集会が呼びかけられ、デモ隊と治安部隊の衝突が相次いでいます。トルコでは、ことし3月に政権がインターネットのツイッターなどを遮断する措置をとったことに対し、反発が高まったほか、先月には西部の炭鉱で起きた爆発事故で300人以上が死亡し、政権の安全対策の不備が指摘されるなど、政権への批判が後を絶たない状況が続いています。

***

続いてFNNのテレビニュースと、AFPの報道をご紹介します。
AFPの記事の中で注目していただきたいのは、エルドガン首相が、抗議の声を上げるトルコ市民にこのように言い放っていることです。
「参加すれば、強制排除を指示されている治安部隊が、AからZまで必要なことはすべて行うだろう」・・・デモ参加者を暴力で脅すこの首相は本当に最悪です!

***

トルコ反政府デモから1年 各地で警官隊とデモ隊の衝突広がる
FNNnewsCH 20140601
https://www.youtube.com/watch?v=Ofuj0gqEqxU


反政府デモから1年、トルコ各地で大規模デモ 催涙ガスや放水も
AFP BBNews 2014年06月01日 10:00 発信地:イスタンブール/トルコ
http://www.afpbb.com/articles/-/3016447

【6月1日 AFP】トルコの首都アンカラ(Ankara)とイスタンブール(Istanbul)で31日、昨年の反政府デモから1年になるのに合わせて抗議デモが行われ、集まった数百人規模のデモ隊に対し警官隊が催涙ガスと放水車を使用した。
現地のAFP記者によると、昨年8人が死亡、数千人が負傷する暴動が発生したイスタンブールのタクシム広場(Taksim Square)近くで、警官隊とデモ隊が衝突。デモ隊は、「タクシム(広場)はあちこちにある。抵抗勢力はあちこちにいる」と叫んでいたという。

首都アンカラでも、花火を投げつけるなどしたおよそ1000人のデモ隊を排除するため、治安部隊が催涙ガスと放水車を使用した。
これに先立ち、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)首相は、抗議デモを阻止するために、当局は「必要なことはすべて」行うと警告していた。
同大統領は、イスタンブールで行われた集会に参加した数千人の支持者らを前に、「国民全員に告ぐ。騙されてはいけない。それは環境保護団体の運動ではない。そこに誠実さはない」と述べ、「参加すれば、強制排除を指示されている治安部隊が、AからZまで必要なことはすべて行うだろう」と警告した。

■海外メディアに対する圧力も
イスタンブールでは、タクシム広場周辺やその他の場所の警備が強化され、およそ2万5000人の警官が配備された。タクシム広場に通じる道路は閉鎖され、公共交通機関は運行が縮小された。
タクシム広場周辺の緊張が高まる中、海外メディアに対する圧力も強まった。米CNNテレビの取材班は、同広場で生中継をしていたところを警察に阻止され、一時的に拘束された。
CNNのアイバン・ワトソン(Ivan Watson)記者は、マイクロブログのツイッター(Twitter)で、「CNN取材班は、30分後にトルコ警察から釈放された。拘束中に私に膝蹴りした警官について、別の警官が謝罪した」とつぶやいた。
当局は、すでに65人が逮捕されたと発表している。
(c)AFP/Philippe ALFROY

***

さらに注目していただきたいのは、この5月31日の行動が、単にイスタンブールでの大規模なデモ弾圧から1年目だったから起こっただけでなく、ソマ炭鉱で300人越す方たちが亡くなったから、しかも炭鉱の安全性が著しく欠如していたためにこれほどの犠牲者が出たからでもあります。
エルドガン首相はこのときこんなことを言い放っています。「炭鉱での事故は世界各国で起きており、トルコのケースはまだましだ」!・・・なんてひどい!
しかもエルドガン首相が、安全対策を怠ってきたこの炭鉱のオーナーと癒着していることも明らかになっています。以下、ニュース面の左上をクリックすると動画がみれますのでご覧下さい。

鉱山爆発280人超死亡…各地で反政府デモ
日テレニュース24 2014年5月15日 23:36
http://www.news24.jp/articles/2014/05/15/10251226.html#


もちろんデモ隊弾圧のひどさも際立っています。昨年5月末のデモでは警官隊がガス銃を繰り返し水平撃ちしました。ガス銃は建前上、群衆の「興奮」をおさえるために使用するとされているもので、直接、人に当たることのないように、上に向けて撃つことが義務付けられているものです。
しかしトルコの警官隊は明らかに頭部を狙い撃ちしているのです。だからたくさんの人が頭部に裂傷を負って命を奪われている。しかも警官隊の攻撃は見境がない。デモ隊の周りにいる通行人までもが狙われるのです。このときも買い物に来ていた15歳の少年が頭を狙われ直撃されました。
少年はそれから何か月も昏睡状態を続けましたが、ついに今年の3月11日に亡くなってしまいました。実はこの日は僕がトルコのシノップを訪れて講演させていただいた日でもありました。そのため講演の後、僕もシノップの町中で行われた虐殺抗議のデモに参加しました。一生忘れません!
以下、アメリカのCNNのカメラがイスタンブールでの少年の葬儀の様子を捉えているのでご覧下さい。英語放送です。

催涙弾で負傷の15歳少年死亡
CNN.co.jp 2014.03.12 Wed posted at 09:31 JST
http://www.cnn.co.jp/video/12485.html

もう一点。やはりCNNが貴重な映像を流しているのを知りました。昨年5月末のデモの時、警官隊がデモ隊のそばを歩いていた「赤いドレスの女性」に催涙ガス(ペッパーガス)を吹き付けているシーンです。
これもあまりにひどい。ドレスを着た女性に、ガスマスクやプロテクターを付けた屈強な警官が襲いかかっているのです。問題のシーンは写真で残っているのみですが、丁寧な取材が行われています。これも英語放送です。

「赤いドレスの女性」 トルコ反政府デモのシンボルに
http://www.cnn.co.jp/video/11129.html

これらを見ればいかにトルコ政府が野蛮であるのかがよく分かると思います。買い物にきていただけの少年や、ドレスを着て歩いていただけの女性に襲いかかる。人間としての倫理観、正義感が崩壊しています。
にもかかわらずトップセールスで原発を売り込んできた安倍首相はまったくこれらのことに言及しようとしない。相手がどんな酷いことをしていようとも平気で危険な原発の売り込みをする。「死の商人」そのものです。
安倍首相は事実上、エルドガン政権の暴力を頼みに、シノップに原発を作ろうとしているのです。彼もまたこの件だけをみても明らかに倫理観が欠如しています。

ちなみに僕はトルコに行ったときに、繰り返し「私たちの国の首相は大嘘つきです。どうか騙されないでください」と訴えました。すると講演の後にトルコ人男性が僕に近寄ってきてこう言いました。
「いやいやうちの国の首相も大嘘つきだから」・・・。まさに大嘘つきの二人、どこか似た者同士の二人が取り決めたのがシノップへの原発輸出なのです。
このとき、強権的なエルドガン首相に抵抗してきたトルコの人々が、安倍首相の本質をもいち早く見抜いていることが強く伝わってきました。トルコの人々は安倍首相の安全宣言などに騙されていない。だからむしろ安倍首相はエルドガン首相の暴力を頼みにしているのでしょう。

そんなこと、とてもではないですが許すことはできません。トルコの人々と一緒になって原発建設を食い止めましょう。大嘘つきが首相になっている両国のひどいあり方を一緒になって変えていきましょう。

Power to the People!


 

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明日に向けて(864)原子力規制委をも恣意的に変えようとする安倍政権にSTOPを!

2014年06月03日 12時00分00秒 | 明日に向けて(801)~(900)

守田です。(20140603 12:00)

大嘘を平気でつき、ありもしない想定をヒステリックに叫び、まっとうな意見には一切耳をかさずになんでも意のままに動かそうとする安倍政権。
今度は原子力規制委員会のメンバーをきわめて恣意的に変えようとしています。

具体的には田中知(さとる)東京大大学院教授を委員に加えようとしているのですが、これまで政府が公に約束してきた選考基準を反故にして選定を強行しようとしているのです。
というのは政府は原子力行政に対する強い批判にさらされる中で、原子力規制委員会を発足させる際に、規制委員会の独立性や中立性を保証すると公言しました。
僕は、実際には今でも、とても独立しているとも中立しているとも言えないと思っていますが、それでもこれまでは、原子力村からの独立の要件として委員になる資格のない「欠格要件」が二つ決められており、守られてきたのです。
そしてそのもとで、地震に関する一定の厳しい見解が打ち出されたりもしており、安全性など全く無視してただやみくもに再稼働をのぞむ経済界からブーイングがあがったりしていました。

安倍首相は、こうした状況に対し、独立性や中立性の建前そのものを全く無視する人事を強行しようとしています。
欠格要件とは、委員に就任する前の3年間に、原子力事業者や関連団体の役員・従業員だったもの、同じく直前の3年間に、原子力事業者から50万円以上の報酬を受け取っていたものです。
安倍内閣が委員会に押し込もうとしている田中知東大教授は、2010年から12年、「日本原子力産業協会」の理事を担っていました。政府自身が「電力会社と強いつながりのある団体」と名指した協会です。
また2011年度に「東電記念財団」から50万円以上の報酬を受けていました。要するに完璧に欠格要件に一致しているのです。

にもかかわらずというか、だからこそとも言えるでしょうが、安倍首相はこうした人物を委員会に押し込んで、意のままに再稼働宣言を出させようとしているのです。
あまりにひどい。世の中を愚弄している。世界に向かって大嘘を平気でつき、政府がかわした約束も簡単に反故してしまうこの首相の、まっとうな倫理観が完全に欠落させた蛮行にみんなで異を唱えましょう。
具体的な行動として緊急署名が呼びかけられています。6月5日午前9時までと期間が非常に少ないですが、ぜひご協力ください。
また本日(3日)午後6時半から8時まで、首相官邸前での緊急抗議行動も呼びかけられています。僕は京都市在住なので参加できませんが、東京方面で可能な方、どうかよろしくお願いします!

ただ一点、大事な点を押さえておきたいと思います。
安倍首相による次から次へと繰り出されるひどい政策に、政府が強大になっていると感じられる方もおられるかもしれません。確かに一面的にはそうです。ひどく歪んだ選挙制度のもとでの「絶対多数の議席数」を背景に横暴が繰り返されています。
しかしこの間、この安倍首相の横暴自身が、この国の民主主義の底力を呼び覚ましてもいます。僕はその例のひとつが、福井裁判所が出した大飯原発の運転を認めない画期的な判決だったと思います。
これまで司法はほとんどこうした真っ当な判決を出してはくれなかった。いくら多くの人々が原発の危険性を指摘しても、まったく無視して、運転に法的許可を与えてきてしまいました。この国の司法はこんなにひどいのかと悲しく淋しい限りでした。

福井判決はそこからの大きな転換とも言えるもので、僕はおそらく今、全国の裁判官、司法家たちの胸を激しく揺さぶっているに違いないと思います。
端的に言って、政府に逆らわなければ、この世の栄達が保障される。しかしそんなことを続けていて良いのか。これ以上、人々を危険にさらし続けて良いのか。まっとうな司法家として、司法の理想を掲げ、法の力を指し示すべきではないか。そんな問いが生まれているに違いない。
しかも非常に重要な点は、この福井地裁の判決が、実は原子力規制委員会が出している「原子力災害対策指針」への真っ向からの批判にもなっている点です。
福井地裁は、ひとたび原子力事故が起これば、半径250キロにまで被害が及ぶことを認定し、その範囲内の原告の訴えを認めました。これに対して規制委員会が想定している事故は、原発から30キロ圏内の人々のみが避難しなければならないというものにすぎないからです。同判決は明らかに規制委員会の甘い想定を真っ向から批判している。

この点はまた稿をあらためて論じますが、原子力規制委員会の面々は、この判決に唸り声を上げているはずです。この判決内容があまねく社会に浸透していけば、再稼働の大前提としている災害対策の抜本的見直しが必要だという事実、実際には安全面から到底、再稼働を容認する余地などないことが見えてくるからです。
同時に非常に重要なことは、原子力規制委員会の現委員とて、人間としてこの判決に晒され、心にさまざまなさざ波を受けている可能性が高いということです。今、私たちの国にいる人士、とくに何らかの社会的ポストを持っている人々のすべてが、この世の栄達にしがみつくのか、それともまっとうな正義の道を歩むのかが問われている。
だからこそ今、安倍首相は、絶対に権力に逆らわない人物、もっと言えば、権力におもねり、嘘を言いつづけ、人々を危機に晒しても、なんら心に痛みを抱くことのない人物を強く欲しているのです。安倍首相がどんな嘘をつこうと平気で「そうだそうだ」と言い続けられる人物をです。
そうなるとこれまで原子力村にどっぷりつかってきて、なおかつ電力会社から報酬をもらってきたような人物でないと信用できない。それでまさに「欠格要件」にピッタリとはまる人物が浮上してきてしまうのです。

ここにはある意味で安倍政権の最大の弱点が如実に表れている。最大の弱点とは大嘘つきであること、何をやろうとしてもまっとうはことが言えないこと。いやんや人の胸を打つことなど何も言えないことです。
むしろ常に徹底的に開き直り、常に相手の言うことにまともに応ぜずに屁理屈をこねくり回し、その上で、数の暴力だけでことを押し進めようとする。理性的にはとても説明のできないことを平気で遂行していく。そのあり方そのものが最大の弱点なのです。
これに対して私たちが行うべきことは、常に真っ向から正々堂々と正論を掲げて立ち向かうことです。数の暴力に屈してはいけない。まっとうな論が通らないことにひるんではいけない。今はとても大事な時です。
これまで権力サイドについてきた人々を含めて、本当にたくさんの人々が生き方を激しく問われている。それが現在です。歴史の転換点です。だからたとえ一見、孤立しているかのように感じても、今は、絶え間なく正義の声を上げる必要がある。高々と上げる必要があります。

Power to the People!

頑張りましょう!
緊急署名、抗議行動への協力をお願いします!

以下、具体的な行動を提起しているメールを転載します。
夕べ遅くに、FoE JAPANの満田さんが送りとどけてくださったものです。

*****

みなさま(重複失礼、拡散歓迎)
FoE Japanの満田です。夜分に失礼します。

原子力規制委の人事案が政府から示され、国会で審議されようとしています。
なかでも問題なのは、田中知氏の人事案。
これを就任を認めてしまえば、原子力推進派はやりたい放題。

今だって問題だらけの形だけ審査をやっている原子力規制委員会ですが、「原子力村の、原子力村による、原子力村のための」原子力規制と化してしまいます。

何よりも、政府は自らがつくった規制委の人事のルール(原子力事業者/関連団体出身ではないこと、原子力事業者等からお金をもらっていないこと)を守るべきではないでしょうか?

ということで、以下のような緊急署名を始めました。
「こんな人事案は認められない!」「3・11を忘れるな!」という声を国会に届けましょう!拡散お願いします。
--------------------------------------------------------
【緊急署名】 原子力規制委 原子力ムラ人事案にノー!
国会議員のみなさま
原子力規制委員会の人事案に反対をしてください!
署名フォーム1(PCのみ):http://goo.gl/KvgRwo
署名フォーム2(携帯&PC)https://pro.form-mailer.jp/fms/0f88850f59845
--------------------------------------------------------
締切:6月5日(木)朝9時 
★この署名は、6月5日(木)午後に、主要な国会議員の事務所に提出予定です。ぜひ、提出行動にもご参加ください。
提出行動集合 14:30に、参議院議員会館ロビー
★提出行動のあと、15:30から衆議院第二議員会館前で抗議行動を行います。こちらもぜひ!
--------------------------------------------------------

政府が国会に提示した原子力規制委員会の人事案に反対してください。
とりわけ、田中知氏は「原子力ムラ」の中心人物であるばかりか二重の意味で、原子力規制委員会の委員として欠格です。

1.2011年から2012年にかけて、「原子力産業協会」の役員を務めていた。
2.日立GEニュークリア・エナジーや東京電力の関連団体から献金や報酬を受けていた。

2012年7月3日に内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室が出した文書の「欠格要件」に関する記載には、「就任前直近3年間に、原子力事業者及びその団体の役員、従業者等であった者」とあり、政府の関連文書に列記された団体には「原子力産業協会」が明記されています。
また、同文章には、「就任前直近3年間に、同一の原子力事業者等から、個人として、一定額以上の報酬等を受領していた者」としています。
今回の人事が強行されれば、「原子力ムラ」の公然たる復活であり、福島原発事故がなかったかのような暴挙にほかなりません。
政府は自らが定めたルールを守るべきです。
国会議員には、一人ひとりの良識を発揮して、このとんでもない人事案に対して反対することを求めます。

呼びかけ団体:
原子力規制を監視する市民の会
脱原発福島ネットワーク
原発いらない福島の女たち
ハイロアクション福島
福島原発30キロ圏ひとの会
反原発・かごしまネット
FoE Japan
福島老朽原発を考える会
核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団
核燃料廃棄物搬入阻止実行委員会
グリーン・アクション
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会
玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会
柏崎刈羽原発反対地元三団体
原発からいのちとふるさとを守る県民の会

※問い合わせ先
原子力規制を監視する市民の会
TEL/03-5225-7213 FAX/03-5225-7214
〒162-0822 東京都新宿区下宮比町3-12明成ビル302号

--------------------------------------------------------
★下記の通り、原子力規制委の人事案に反対する抗議行動を行います。ご参加ください。

【明日!】・日時6月3日(火)18時30分~20時、
・場所:首相官邸前(国会議事堂前駅)、
・呼びかけ:原子力規制を監視する市民の会 http://goo.gl/SzHRiL

・日時:6月5日(木)15:30~16:30
・場所:衆議院第二議員会館前
・呼びかけ:原子力規制を監視する市民の会
--------------------------------------------------------

【関連情報】
[談話]田中知氏の原子力規制委員会委員への任命案について(原発ゼロの会)
http://genpatsuzero.sblo.jp/article/98410602.html

[社説]規制委人事案 撤回も視野に再検討を(5月31日、北海道新聞)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/542587.html

規制委員候補に電力側から報酬 田中教授、50万円超(5月27日、共同)
http://www.47news.jp/CN/201405/CN2014052701002272.html

[書き起こし]規制委の「中立」基準 適用せず
(5月30日、東京新聞「こちら特報部」)
http://magicmemo.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/580-2044.html

--
満田夏花 MITSUTA Kanna <kanna.mitsuta@nifty.com>
携帯:090-6142-1807
※【新刊案内】ブックレット<「子ども・被災者支援法」と避難の権利> 
20mSv撤回運動/自主的避難と賠償/避難・帰還政策および被災者支援について一冊のブックレットにまとめました。
http://e-shift.org/?p=2981
※「避難の権利」ブログ
http://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/

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明日に向けて(863)『美味しんぼ』のこと、トルコのこと、原子力災害対策のこと、お話します!

2014年06月02日 21時30分00秒 | 明日に向けて(801)~(900)

守田です。(20140602 21:30)

講演のお知らせを二つお送りします。

一つ目は京都市伏見区のあゆみ助産院・のびの会でのお話です。
タイトルは「福島の今と『美味しんぼ』とトルコへの原発輸出」。
この間、「明日に向けて」に連載してきた『美味しんぼ』応援記事の内容や、福島に繰り返した取材の中で知ってきたことなどをまとめて話します。
またこんなに被曝で住民が苦しんでいる状態がありながら、トルコに原発輸出していることの理不尽さ、同時に原発を受け入れようとしているトルコ政府側の問題についてお話します。
日本語とトルコ語で配信したチェルノブイリ原発事故のトルコへの影響などにも触れます。

二つ目は福井の原発群の中の高浜原発から30キロに位置する宮津市でのお話です。
できたてホヤホヤのパーティー、NORTH KYOTO PARTY!のお招きです。朝からきょうと緑の党の長谷川うい子さんと一緒に京都市から赴いてお話し、うい子さんと対談します!宮津の脱原発蕎麦屋・まる丹の立垣ためよしさんも発言されます!
僕の発言では今回はとくに原発直近の町々からの避難の困難性と、それを直視した上で、いかに対策を立てていく必要があるのかと言う点に触れて行こうと思います。宮津のみなさんと一緒に、対策を具体的に深めていきたいと思います!

お近くの方、ぜひご参加ください!

*****

6月5日 京都市伏見区

のびの会 講演会

「福島の今と『美味しんぼ』とトルコへの原発輸出」
ゲスト 守田敏也

6月5日 10時~12時

場所 あゆみ助産院(最寄り駅:京阪電車墨染駅)
主催 のびの会
http://www.eonet.ne.jp/~ayumi55/nobi.html

*****

6月17日 京都府宮津市

そこが聞きたかった!知りたかった!
原発事故から家族を守る!お話会in宮津

宮津市は、福井県の14基の原発から、そんなに遠くに離れていません。
高浜原発の30キロ圏内、大飯原発の45キロ圏内に位置します。
もし、福島のような事故が起きてしまえば、京都北部に住む私たちも被害を受けることは、十分に考えられます。

原発事故は、さまざまなものを傷つけます。
放射能汚染は、健康への被害だけでなく、守り続けてきた土地や家、そして人のつながり・・・
私たちが、大切にしてきたものを何もかも奪います。
それが福島の事故が、私たちに教えたことです。

福井の原発で、なんらかの理由で事故が起きたとき、どうやって避難するのか、その後の暮らしはどうなるのか。
出来るだけ、出来るだけ具体的に考えておくことが、もしもの時に、大切な家族や友達を守ることにつながります。
そういったお話を、守田さんと長谷川うい子さんとざっくばらんにお話しましょう!

6月17日(火)
午前の部 午前10時~
午後の部 午後7時~

場所
千代の会 宮津市宮本498

発言
きょうと緑の党
長谷川うい子さん

篠山市原子力災害対策検討委員
守田としやさん

脱原発蕎麦屋
まる丹・立垣ためよしさん

参加費無料
カンパお願いします!

お子さん連れ大歓迎です!キッズコーナーご用意します。

主催 NORTH KYOTO PARTY!
連絡先 田中 090-4560-8560
    添田 080-3033-7479

 

 

 

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(862)TÜRKİYE'DE ÇERNOBİL NÜKLEER KAZASININ YILDÖNÜMÜ

2014年06月02日 18時00分00秒 | 明日に向けて(801)~(900)

Yarına Bakarken(862)Çernobil Nükleer Kazası Türkiye’nin Karadeniz kıyı şeridini de kirletti !(26 Nisan Türkiye eyleminden haberler)

Ben Morita(20140602 18:00)

 (注 日本語を読まれるみなさま。この記事は「明日に向けて(859)チェルノブイリ原発事故でトルコ黒海側も激しく汚染された!(トルコ・シノップデモから)」のトルコ語版です。翻訳をしてくださったのはシノップからの報告記事を書いてくださったプナールさんです。どうか周りでトルコ語のできる方にお回しください!)

Bir ay kadar önce Türkiye’de Çernobil’in yıldönümü olan 26 Nisan günü Türkiye’de de çeşitli şehirlerde nükleer karşıtı eylemler yapıldı. Japonya’nın nükleer santrali inşa etmesi sözkonusu olan Sinop’ta 10 bin kişi toplanarak çok büyük bir eylem gerçekleştirildi.

Bu eylemin en çok vurgulamaya çalıştığı Karadeniz’in Çernobil Nükleer santral kazasından fazlasıyla etkilendiği ve özellikle Karadeniz sahil şeridindeki şehirlerde  sağlık koşullarının nasıl bozulduğu  vurgulandı . Eylemde yapılan miting konuşmalarında 「ölüm yaş ortalamasının 74 ten 58’e düştüğü gibi şok edici ifadeler yer aldı .Bu da Türkiye insanının Çernobil’den fazlasıyla etkilendiğini açıkça ortaya koyuyor . Bugünlerde ben sıklıkla Çernobil’in Avrupa ülkelerindeki sağlık koşullarına etkisi üzerine düşünüyorum.
Çernobil kazasının etkili olduğu coğrafyayı gösteren haritaların olduğu iki linki aşağıda bulabilirsiniz.

http://www.eu-alps.com/00-info/no-nucler/chernobyl-unep-wiki-map.gif
http://blog.goo.ne.jp/yoshi_swe/e/40ff41f6ef9ce6da50cffd378d430701

Haritalara baktığınızda göreceksiniz ki  bu çalışmayı yapan uzmanlar veya  Türkiye Hükümetinin baskıcı tutumu,Türkiye’nin Çernobil nükleer santral kazasından yüksek oranda etkilendiği gerçeğini dikkate almamış, Türkiye harita içine dahil edilmemiştir. Fakat siz bundan sonra Türkiye’nin de Çernobil kazasından büyük ölçüde etkilendiğini ,Türkiye’nin kuzeyinde radyasyona bağlı nedenlerle kanser olan,kalp rahatsızlığı çeken  pek çok insanın olduğunu ,acı çektiklerini hatta bir kısmının hayatını kaybettiğini artıkbiliyorsunuz.

Birazdan okuyacağınız 26 Nisan’da Türkiye Sinop’ta Çernobil Nükleer Santralin yıldönümü nedeniyle gerçekleştirilen 10 bin kişilik eylemin detaylarını Türkiye’den arkadaşım Pınar Demircan yazdı .Bu makale aynı zamanda Türkiye’nin internet gazetesi olan Yeşilgazete’de(www.yesilgazete.org)  yayınlanmıştır, Pınar kendi makalesini Japonca olarak benimle paylaştı, aşağıda okuyabilirsiniz.

***

26 Nisan 2014 Çernobil Nükleer santral Kazasının üstünden 28 yıl geçmiş, elimizde Türkçe’ye yeni kazandırılmış Uluslararası Hekimler Birliği’nin Almanya şubesince hazırlanan Çernobil Nükleer Felaketinin İnsan  Sağlığına Etkileri  adlı rapor… ülkemizin benzer bir felakete sebep olabileceğini düşünmekten bile endişe duyuyoruz… 3 yıl önce Japonya’da yaşanılan Fukushima nükleer santral kazasının sonuçları  yıllar içinde yavaş yavaş  ortaya  çıkarken  her sene yapılan nükleer karşıtı eylemler bu sene daha bir isyankar… hiç şüphesiz bunda  Sinop’a  yapılması planlanan nükleer santral için, önce 2013’ün siyasi açıdan en hareketli aralık aylarında Türkiye meclisinde  ve ardından da Türkiye’deki yerel seçimlerden hemen sonrasına denk gelen tarihlerde  Japonya meclisinde onaylanan   işbirliği anlaşmasının etkisi büyük . Son günlerde medya aracılığıyla Türkiye’yi sarsan Yönetmen Tange dünyayı kirlettikleri ve dahası  en yüksek teknolojideki robotların bile yüksek radyasyon sebebiyle bozulabildiği nükleer teknolojiyi Japon hükümetinin  ihraç etme kararına istinaden boşuna özür dilemedi …Dolayısıyla bugün Sinop halkının, Mersin halkının,  sağlığı ve  yaşamı önceleyen tüm Türkiye halklarının  yıllardır artış durumunda olan kanser vakalarını,  kan kanserini, kalp krizi vakalarını görmezden gelerek  Karadeniz halkının acısıyla adeta alay eden, Nükleer santralin kurulması için ÇED Planı dahi ortada yokken  60km2’lik bir alanda ağaç kesiminin gerçekleşmesine yönündeki  prosesi işleten  hükümete karşı sesini daha güçlü duyurmaya çalışması hiç şarşırtıcı olmadı.

İşte 26 Nisan  Çernobil Felaketi’nin Anması için düzenlenen Büyük Sinop Mitingi’ne  katılımlar bu duygular içerisinde gerçekleşti. Kafileler Mersin, İzmir, İstanbul, Ankara,Denizli, Kastamonu, Trabzon, Ordu, Giresun, Amasya, Çorum, Samsun, Yalova ve Tunceli'den  otobüslerle geldiler . Miting yaklaşık 10 bin kişinin katılımıyla gerçekleşti . Organizasyon,  ülkedeki tüm nükleer karşıtı bileşenlerini çatısı altında toplayan Nükleer Karşıtı Platform tarafından  başarıyla takip edildi. Yürüyüş Dyojen Meydanı’dan başlayarak  “Gölge etme başka ihsan istemem” tadında sloganlarla  Uğur Mumcu meydanı’na kadar (yaklaşık 4 km boyunca) sürdü.  Topluluklar,  genel olarak   Sinop’un  doğal güzelliklerine ,günümüzde dünyada ve özellikle Avrupa’da “değer”lendirilen  yenilenebilir enerji kaynaklarından hem rüzgar hem güneş açısından avantajlı olduğuna vurgu yapan  “Güneş,rüzgar bize yeter! ; Nükleere karşı yaşasın hayat! ; Nükleer Çöplük olamayacağız! ; Susma haykır ,Nükleere Hayır! ; Baskılar Bizi Durduramaz!” sloganlarını kullandı. “Cık deyoz duymayon mu? ” da en ilgi çeken sloganlardandı.  Kürsüden yapılan konuşmalarda ise Nükleer Karşıtı Platform Sinop Dönem Sözcüsü Zeki Karataş insan varlığına değil ,tüm canlıların yaşam haklarına vurgu yaptı , içinden radyasyon geçen bedenlere ne olduğunu söylediler mi size? diye sordu . “Çernobil felaketinden sonra ortalama yaşam ömrü 74ten 58’e indi” dedi . Ardından çocukların sağlıklı nesiller halinde hayatlarına devam edebilmelerini dileyerek hükümet yetkililerine seslendi… Bekarlığın nükleerden daha tehlikeli olduğunu dinledik bakanlardan, nükleer santrallerdeki kaza riskinin  tüp gaz kazasının riskleriyle karşılaştırıldığını işittik … Böyle bir ülkede kurulacak  nükleer santral endişelendirmeli insanları! Sinop Çernobil olmayacak ! dedi ve “Biz sizden sadece  kendi canımızın sağlığını  istiyoruz” diyerek sözlerini tamamladı.   Sinop CHP Belediye Başkanı Baki Ergül  de kalkınma için nükleer enerjinin şart olmadığına dikkat çekerek ,dünyada özellikle Avrupa’da nükleer santrallerin 2020li yıllar itibariyle kapatılacağının taahhut edildiği,nükleer enerjinin terk edilmeye başlandığı dönemde  doğal kaynakları  açısından zengin olan Sinop’ta Nükleer santrallerin kurulmasının planlanmasına varana kadar önce   rüzgar ve güneş potansiyelinin değerlendirilmesinin  gerektiğini belirtti. 

 

***

Yukarıda detaylarını okuduğunuz 26 Nisan Mitingine dair Belçika’dan gazeteci Arkadaşım Yoko Kawasaki de Pınar ile röportaj yaptı,lütfen okuyun linkini paylaşıyorum ,roportajda miting fotografını da göreceksiniz.

Japonya’nın kendi ülkelerine nükleer santral satmasına karşı Sinop’ta ve Türkiye’nin değer şehirlerinde toplam on binlerce insan yürüdü 「Japonya’nın yaptığı bizim geleceğimizi Çalmak」—konulu röportaj için
9 Mayıs 2014 Gazeteci Yoko Kawasaki
http://financegreenwatch.org/jp/?p=43573

26 Nisan Miting izlenimlerini makaleye yansıtan Pınar  daha sonra 13 Mayıs günü meydana gelen Soma maden Kazasını yazdı ,ağlayarak yazdığı makaleyi benimle yine Japonca olarak paylaştı,linkini aşağıda bulabilirsiniz.

Yarına Bakarken(848)Türkiye’de Maden Kazası!kazanın sebebi işçi sağlığı Güvenlik şartlarının sağlanmaması !
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/33815c30e09ecd3cc79c304ddc68cc11

Konuyla ilgili ingilizce bir haberi de aşağıdaki linkte görebilirsiniz .

For tomorrow(849) Why such a crucial coal mine accident happened in Turkey?
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/0a4426fbcd53c5cdc49c610acf677221

Maden kazasına dair ilgili paylaştığım makale ve haberleri okursanız anlayacaksınız ki bu kaza Türkiye Hükümetinin Çalışma kanun ve hükümlerine uygun kurallar koymaması ve varolan kanun ve hükümlerin uygulanmaması sebebiyle meydana gelmiştir.
Buna rağmen Başbakan Erdoğan「Ölüm madencinin fıtratında var」diyebilmiş,kazayı protesto etmek isteyenlere karşı polise yakalama ve gözaltı emri verebilmiştir. Hatta Başbakan Erdoğan’ın korumalarından biri kazada yakınlarını kaybeden birisine tekme atabilmiştir.
Devletin ihmalinin büyük olduğu kazada doğal olarak hemen her şehirde yürüyüşler ,protestolar düzenlenmişse de halk yine polis eliyle biber gazı ve orantısız güç kullanırlarak dağıtılmaya, eylemler önlenmeye  çalışılmıştır .

Türkiye’den Pınar haykırıyor
「Japonya’nın anti demokratik şartlarda yönetilen bir ülkeye nükleer santral pazarlamaya çalışması sadece felaket doğurur. Soma’da Maden kazasının yaşanmaması için asgari şartların dahi sağlanamadığı ülkeye nükleer santral kurulması atom bombasının yaratacağı tehlikeden farklı bir şey değildir.

Aynen öyle!İş güvenliği ,emniyeti anlayışında eksikler bulunan, demokratik hakların dahi kullanılamadığı,polisin her an şiddet saçtığı bir ülkeye nükleer santral kurmamız atom bombası kadar tehlikeli değil midir? … sadece düşününce bile ürküyorum・・・

Böylesine tehlikeli zamanlardan ,dönemlerden geçen Türkiye’ye nükleer santral kurmayalım .Ülkenin içinde bulunduğu şartları gözönüne almadan nükleer teknolojiyi satmaya çalışmak şiddetin ta kendisdir. Hele ki Çernobil kazasında büyük ölçüde zarar gören, kimsenin kabul etmediği kayıtlara geçmeyen acılarına kendi başına katlanan Türkiye’ye nükleer santral kurmak fikrinden derhal vazgeçelim!

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明日に向けて(861)県民をてひどく欺いてきた福島県・・・『福島原発事故 県民健康管理調査の闇』を読む(下)

2014年05月31日 15時30分00秒 | 明日に向けて(801)~(900)

守田です。(20140531 15:30)

『美味しんぼ』応援記事第8弾です。

今回も岩波新書の一冊として昨年2013年9月に出版された『福島原発事故 県民健康管理調査の闇』を取り上げます。

前回の記事で明らかにしたように、日野記者が暴いた福島県による「県民健康管理調査の闇」の核心は、次の点にありました。
「検討委員会を経て決定された調査目的は、『原発事故に係る県民の不安の解消、長期にわたる県民の健康管理による安全・安心の確保』としており、『不安の解消』を真っ先に挙げている」(同書p18)

つまり福島県は、放射能による実害はないものと初めから断定した上で、「人々の不安を解消する」ことを目的に「県民健康管理調査」を行ってきているということです。
健康被害と思われるものには一切、触れないし、表に出さないという姿勢が初めから貫かれている。このことを秘密裡に打ち合わせするために設けられたのが、本会議の前の「秘密会」であったのです。
この秘密会の開催を、取材中に感づき、突き止め、福島県に証拠をもみ消される前に慎重に取材を進めた日野記者は、2012年10月3日に、毎日新聞紙上での暴露を行いました。
朝刊の一面と社会面に「福島健康調査で秘密会」「県、見解すり合わせ」「本会合シナリオ作る」という見出しが躍りました。日野記者は述べています。

「一面の記事では、検討委員会が発足以前から一年半にわたって秘密裡に『準備会』を開き、『見つかった甲状腺がん患者と被曝の因果関係はない」などの見解をすり合わせていたことや、県事務局が発覚を恐れて検討委員らに口止めしていたことなど報道した。
 そして『秘密会で何が話し合われたのか全てを明らかにすべきだ』との解説を付けた」(同書p64)

それまでの取材の成果を出し切った日野さんは、福島県に実際に「秘密会で話し合われた内容」の公開を求めていき、議事録の存在につきあたりましたが、さらに取材を深めていくと、その議事録までもが改ざんされているのではないかという疑惑が浮かび上がってきました。
しかしそれならば改ざんされ、削除された内容に福島県の本音が見えるはずだと考え、日野さんは追及を深めていきます。そしてついに内容を把握するにいたったのです。以下、福島県によって議事録から削除されていた内容に関する記述です。

「第1回の本会合の議事メモから削除されたのは、放医研が提案した外部被曝線量を推計するインターネット調査についてだ。
文科省の担当者の『ホームページでの線量評価のサイトも作った。県外の人々をいちいち探し出すのは難しいのでそういったものを活用すべきではないか』という発言が削除されている。県側の反対でインターネット調査は中止しており、活用を促す発言は不都合だったのだろう。
 またSPEEDIについて触れた部分も削除されている」(同書p108)

これは放医研が2011年5月に完成させたWeb上で福島県民が外部被曝線量を自ら把握することができる画期的なシステムを、福島県が「県民の不安をあおる」と圧力をかけて使用中止に追い込んだ件についてです。この詳細を県は秘密会の議事録から削除していたのです。
同じくSPEEDIについての議論も削除されたのですが、この点に関して日野記者は、別のところで次のように指摘しています。
「県は国から送られてきたSPEEDIのデータを削除したという失態が事故発生直後にあり、福島県は一貫してSPEEDIに関心が集まるのを嫌がっていた」(同書p73)

さらに日野さんは、福島県がもっとも避けようとしていたのが、低線量内部被曝の危険性に関する調査や議論であったことを指摘して次のように述べています。

「何を削除し、削除しないかをみていくと、WBCによる検査をできるだけ少なくしたいという意図が容易に汲み取れる。
 そして第二回の本会合で最も激しい議論となったのが、尿に含まれる放射性物質の量から内部被曝線量を調べる『尿検査』をめぐるやりとりだ。」(同書p110)
「内部被曝の危険性を指摘し続けてきた琉球大学の矢ヶ崎克馬名誉教授によると、子どもの場合、尿検査であれば約6ベクレル以上を検出できるが、一般的なWBCだと250~300ベクレル以上でなければ検出できないという。その差は実に約50倍にもなる。」
「この尿検査に関する発言が全て、非公開だった本会合の議事録から削除されたのである。」(同書p111)

非常に重要なポイントです。福島県は何よりも低線量内部被曝に関する秘密会議での論議を隠したかったのです。WBCを嫌がり、さらにそれよりもずっと精度の高い尿検査を嫌がり、排除していったことを隠したのです。
反対に言えば、それらの検査を徹底して行えば、被曝実態がより正確に把握され、県民の置かれている危険な状態が明らかになることを福島県は知っていたことになります。だからやらなかった。県民を「逃がさない」ためにです。これを「てひどい欺き」と言わずして何と言うのでしょうか。

ではこんなにひどい「調査」を担ってきた人々の行ってきた子どもたちの甲状腺がん調査は信用できるのでしょうか。もちろんできるはずがない。そこでも隠されているものがあるはずです。
この点で日野さんは、資料の分析から次のようなことをつかみとっています。

「開示された資料に、第二回の秘密会(2011年6月12日)に提出したとみられる「甲状腺調査に関して」と書かれた四ページの文書があった。手書きで『鈴木(真)』と書かれている。
 文書は小児甲状腺がんに関する一般的な説明から始まる。『全甲状腺がんにしめる割合は極めて少ない。年間発生率は人口10万人あたり約0.2名」と書かれている。」
「そして成人の患者と異なる点を説明している。『肺転移が多い。(甲状腺の)全摘、内照射も必要になることがある。しかし、成人に比べ再発は多いものの声明予後に関しては成人に比較して良好。
チェルノブイリでも5000人以上の小児甲状腺がんが手術された。死亡例は約30名(0.6%)と非常に少ない』としており、記載は明確だ。」(同書p127、128)
「『初年度検査の対象はどこまでにするか。スポットで行っても、通常は検査の必要がないことをコメントしないと、結局全県検査になりかねない。小児甲状腺がんの危険性が高いことが県内に知れ、不安を招くか』などの記載がある。」(同書p128)

ここで重要なのは、小児甲状腺がんが、「肺転移が多く、再発しやすいもの」として把握されているにもかかわらず、その発言が削除されていることです。肺転移が多い!実に危険なのです!
「小児甲状腺がんの危険性が高いことが県内に知れ、不安を招くか」などの文言も削除されていました。ここにも子どもたちの甲状腺の調査が、被曝実態の把握のためではなく、偽りの安全論のためにのみなされていることが如実に表れています。

本書はこの後、福島県弁護士会や国連人権理事会からの福島県への批判、一方での原子力規制委員会のあいまいな対応などにも言及したのち、山下俊一氏への直接インタビューをもって閉じられていくのですが、最後に日野さんは次のように自らの主張をまとめています。

「誤解を恐れずに言えば、広島・長崎の原爆、世界各国の核実験、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故などにおける、放射線被曝(特に内部被曝)と健康被害の歴史は、国と一部の『専門家』による隠蔽と情報操作の繰り返しだった。
 常に『科学』の名を語り、『権威』を身にまとって、『因果関係はない』『これは精神的なものだ』と言い張り、病に苦しむ1人ひとりの姿を無視する人々がいた。
 そしてわずか二年間ではあるけれど、福島県が実施する県民健康管理調査がたどってきた経過を振り返って、どうだろうか。重なるものはないだろうか。」

その通り!福島県が行っていることは、これまで繰り返された被曝被害の現場で繰り返されてきた隠蔽工作とぴたりと重なるのです。被曝による被害を過小評価することがその狙いです。まさに県民だけでなく、私たちに対する「てひどい欺き」なのです。

日野さんの書は、このことを余すところなく曝露した素晴らしい書です。実は今回、『美味しんぼ』で非常に明確に福島の危険性を語った井戸川元双葉町長は、この書が出たときに感激し、自らたくさん購入して多くの方に配り歩いていたと聞いています。
これまで僕は繰り返しマスメディアの方々に批判的な言葉を送ってきましたが、このような綿密な調査報道は、まさに大新聞の力があってこそできること。日野さんと毎日新聞、そして書物化してくださった岩波書店に感謝するばかりです。
どうかみなさん。ポイント紹介で満足せず、直に本書を手にとり、読んでみて下さい。そうして日野さんの取材活動を追体験し、福島県にとどまらず、今、現にある危険性を「科学」の名のもとにないものと語る多くの人々の「詐欺性」と対決する一助にして欲しいと思います。
とくに一番ひどいのは今回の『美味しんぼ』バッシングに乗り出している政府です。福島県に対するこれだけの調査が明らかになっているのですから、本来、政府が福島県の健康調査の批判的検討を行うべきなのにそんなことはまったくすっとばしてしまっている。

もちろん、福島県を上回る大嘘つきの安倍首相をいただく政府に、そんなこと、まったく期待などできません。嘘に嘘を重ねて、目の前にある放射能や福島原発の危機を隠そうとし、一方でありもしない「危機」を言いたてて「集団的自衛権」だとかを振るおうとしているからです。
私たちの国はいつからこんなにひどい大嘘つきが大手をふるって歩く国になってしまったのでしょうか。・・・実はかなり前からだったのです。大きな違いはそれに気が付き、覚醒した人が今、急速に増えていることです。
その中で『美味しんぼ』の記述が飛び出した。嘘つきの福島県は、5月17日に、とうとう90人にもなってしまった福島の子どもたちの甲状腺がんの実態の発表をも控えていました。
しかも当初は鈴木氏までもが「10万人に0.2人」だと思っていたものが10万人に40人もの割合ででてきてしまった。だからこそ、福島県は「逆切れ」したのではないでしょうか?僕にはそう思えて仕方がありません。

事実としてあることは、福島県が明確に県民をてひどく欺いてきたことであり、なおかつ、それが満天下に知れ渡ってしまっていること、そのことを福島県もまた熟知しているという点です。政府もまったく同じです。
しかし福島県も、政府も、あまりに大きな嘘を系統的につきすぎてきてしまったのでもう戻れないのでしょう。とても一つや二つ、謝って修正できる問題ではない。
福島県であれば、初期にSPEEDIの情報を削除してしまったことだとか、十分な備蓄量のあった安定ヨウ素剤を配らなかったこととか、後から、県民に刑事告発されるべき事実もたくさんあります。おそらくまだまだ酷いことが隠れているでしょう。
だから曝露を恐れつつ居直っている。「逆切れ」を深めている。それが現在の姿なのではないでしょうか。

福島県のこうした姿こそ、福島県民の、いや、私たち全体の最大の脅威です。だから今、私たちは『美味しんぼ』を守るという受け身の姿勢に立っていることはできません。
もっと徹底して隠されたものを暴きたて、真の危機を明らかにし、対処を行う必要があります。そのことでこそ福島の人々、いやこの国のすべての人々、子どもたち、未来を守ることができるのです。
僕も日野さんの大活躍に学び、さらに一層、奮闘することをお誓いします!

*****

なお、鎌仲ひとみさんが次回作に向けて出しているカマレポをまとめた「カノンだよりvol.2」に、日野さんへのインタビューが収録されています。大変分かりやすいです。
僕はカマレポを購読し、メール配信していただいているのでそこで観ました。興味のある方は以下をご参考ください。他の号も素晴らしいです!

カマレポを収録したDVD
「カノンだよりvol.1」
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カマレポ申し込み
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明日に向けて(860)県民をてひどく欺いてきた福島県・・・『福島原発事故 県民健康管理調査の闇』を読む(上)

2014年05月29日 12時00分00秒 | 明日に向けて(801)~(900)

 守田です。(20140529 12:00)

『美味しんぼ』応援記事第7弾です。

今回は岩波新書の一冊として昨年2013年9月に出版された『福島原発事故 県民健康管理調査の闇』を取り上げます。

福島県は『美味しんぼ』を激しく罵倒しました。しかし福島県は事故当初、除染などに見向きもせず、子どもたちが高線量のままの学校に通っている事態に対してすら何もしないでただ安全宣言を繰り返していたのでした。
「そんな福島県に『美味しんぼ』や荒木田さんたちを批判する資格などない!」と僕は主張してきましたが、しかしこれだけではまだまだ福島県への批判が足りない。
なぜなら福島県こそは、当初よりあるべき県民の健康調査の方向を著しく歪め、根拠のない「安心・安全キャンペーン」をはることで、むしろ多くの県民を不安の中に陥れてきた張本人だからです。

毎日新聞の若きエース、日野行介記者によって書かれた本書は、このことを綿密な取材によって的確に暴き出した良書です。この書に記された内容を紹介しながら、福島県の行ったあまりにひどい対処、県民を被曝するままに任せてきた実態を明らかにしたいと思います。
福島県は初めから「県民を逃がさない」ことに徹してきた。県民に迫る放射能の脅威と立ち向かうのではなく、危険性が明らかになることで避難が進むことをおしとどめることばかりを行ってきたのです。
だから「鼻血」をはじめとした健康被害の実態を無視し、有効な被害調査をほとんど行わなかった。今もさまざまな健康被害の兆候が無視され続けています。
しかし危険性を無視するばかりか、危機に対する県民の警戒心を解体しようとしてきた福島県の行為こそ、県民に対して加害的であり犯罪的ではないのか。ぜひ、本書からこの点をつかみとって欲しいと思い、内容のエッセンスを紹介したいと思います。

日野さんはまず県民健康管理調査とは何かを説明しているところから本書を書き起こしています。

「福島第一原発事故による健康影響を調べるための唯一の網羅的な健康調査が、福島県が2011年6月から実施している『県民健康管理調査』だ」(同書p)
「検討委員会は約1年半もの長期間にわたって、一切その存在を知られることなく『秘密会』を繰り返し開催してきた。
報道機関や一般に公開する検討委員会の会合を開く直前に、福島県と県立医大は『準備会』『打ち合わせ』の名目で秘密裡に検討委員たちを集め、『どこまで検査データを公表するか』『どのように説明すれば騒ぎにならないか』『見つかった甲状腺がんと被曝との因果関係はない』などと、事前に調査結果の公表方法や評価について決めていたのである。」(同書p)

「検討委員会を経て決定された調査目的は、『原発事故に係る県民の不安の解消、長期にわたる県民の健康管理による安全・安心の確保』としており、『不安の解消』を真っ先に挙げている」(同書p18)
「秘密会では住民に放射線の危険性を感じさせず、安心させるために、本会合でどのようなやりとりが必要か、議論していた。検討委員会の関係者に送られたメールなどを見ると、県側の担当者は県民を安心させる説明を『リスクコミュニケーション』と呼んでいた。」(同書p36)

いきなり唖然とする話です。福島県は、原発事故による網羅的な健康調査を始めたものの、公開の検討委員会の前に常に秘密会を行い、「どのように説明すれば騒ぎにならないか」などを決めていたというのです。
しかも目的として「不安の解消」が真っ先に掲げられた。本来、健康被害があるのかどうかを調べるべきものが、人々に安全だと思わせるためのものに変えられていたのです。
これでは鼻血をはじめ、事故直後からさまざまに報告されていた健康被害と思われる事例に対する調査がまったく行われなかった理由も自ずと見えてきます。
「不安の解消」が目的となっているため、何らかの被害実態があると思われるものには一切、手を付けなかったのです。あまりにてひどい県民への裏切りだったのではないでしょうか。

しかもこの健康調査が始まるいきさつとして日野さんが指摘している点をみていくと、福島県が県民の健康調査を行う権限を、かなり強引に、国や関係機関から奪い取っていったことも見えてきます。
典型例は、放射線医学総合研究所(放医研)がつくった被曝線量のインターネット上での調査システムが、福島県の強い圧力のもとに非公開とされてしまったことです。2011年5月のことです。理由は「県民の不安をあおるから」だったといいます。
福島県は同じように、弘前大学の床次眞司教授が、事故直後に浪江町などで独自に甲状腺検査をしようとしたときにも「不安をあおるのでやめて欲しい」と圧力をかけたといいいます。
これらを通じて福島県は、県民の「健康調査」を県のもとに一元管理する体制を作り上げ、危険な実態をきちんと調べようとする他のモメントを抑圧し、「安全宣言」をするための名目的な調査を進めていったのです。

調査は山下俊一氏を座長に行われてきました。ご存知のように事故直後から福島県に入って安全宣言を繰り返し、2011年7月に福島県立大学副学長となった方です。この山下氏の下で、200万人の県民に事故後4か月の行動記録を問診票に書いてもらうことを中心とする「基礎調査」と、より詳しい内容を調べる「詳細調査」が始められましたした。
詳細調査の中で最も社会的関心を集めてきたのは、事故当時18歳以下だった福島の子ども36万人を対象とした超音波による甲状腺検査です。(2011年10月より)。
この他、避難地域の人々と基本調査から必要とされた人を対象とする問診に血液検査などを上乗せする「健康調査」、こころの状態を尋ねる「こころの健康度、生活習慣に関する検査」(12年1月より)、妊婦にこころの状態を尋ねる「妊婦に関する調査」(12年1月より)が行われてきました。
ただし内部被曝に関しては、チェルノブイリ事故後に多発が確認された甲状腺がんの影響のみを調査対象とし、外部被曝の影響を調査するとした健康検査についても、どのぐらいの線量で何を調べるのかの対象基準についてすら十分な議論が行われないままに進行したのでした。

この調査の闇がもっともよく表れたのは、子どもの甲状腺がんへの対応でした。福島の子どもから初めて甲状腺がんが見つかったと発表されたのは2012年9月11日の第8回検討委員会の席上。このときにも事前に秘密会がもたれました。日野さんはこの様子を克明に書き表しています。

「午後1時前、福島県立医大の山下俊一副学長や甲状腺検査の責任者である鈴木眞一教授らが、次々と県庁の保健福祉部長室(注、秘密会の場)に入った。」
「午後2時からの『本番』でも配布される検査データが配られると、鈴木教授が、二次検査で一人の甲状腺がん患者が見つかったことを報告した。『顔合わせ』の名目の会合だが、実際は、甲状腺がん患者が初めて見つかったことをどう評価するか、検討委のメンバーで意見を擦り合わせておくのが大事な目的であった。」(同書p45)

「山下副学長や鈴木教授はこれまで、「チェルノブイリでは事故から4~5年後に患者の増加が見られた」として、事故後から7か月後に始まった一回り目の検査について「被曝の影響はありえないが、保護者の不安を払拭する目的の検査だ」と説明してきた。
 鈴木教授は2012年4月26日の第6回検討委員会の本会合で・・・『一般的に小児甲状腺がん患者は100万人に1人程度発生する珍しい病気だ』と繰り返してきた。
 しかし今回判明したがん患者は、11年度に1次検査を受けている。さらに別の患者が見つかる可能性があり、これまでの説明との整合性を問われる可能性があった。
 秘密会で話し合われたのは、2時から開かれる検討委員会やその後の会見で『どこまで説明すべきなのか』、そして『何と説明するのがよいのか』だった。」(同書p47)

「『甲状腺の異常が見つかっても、福島第一原発事故による被曝の影響ではない」という結論が、検査の前提であるということだ。そして、個別の事例については『個人情報』を盾に説明せず、一般論を述べるという趣旨になる。」(同書p48)

日野さんの描写は「お見事!」の一言につきますが、しかし本当に唖然とする重大事態の連続です。この暴露を読んでいて何よりも腹立たしいのは、山下氏や鈴木氏をはじめとする委員たちには、福島の子どもたちに甲状腺がんが見つかったことへの憂いなどまったくなく、ただそれをいかに原発事故の影響でないと説明するかにばかり腐心していることです。あまりにひどい!
こんな人々によって「健康調査」の名のもとに、新たな「安全神話」づくりが行われていることこそが福島県民の危機に他なりません。
その検討委員会が、新たな甲状腺がん検査の結果を発表したのは本年5月19日。第15回検討委員会の場でした。かつて鈴木教授が「100万人に1人発生する程度」と強調した甲状腺がん患者はとうとう28万7千人中、確定が50人。濃厚な疑いが39人にまで増えてしまいました。
この深刻な発表がなされたのは、福島県や政府による『美味しんぼ』へのまさに強烈なバッシングの最中のこと。この2つのトピックスの重なりははたして単なる偶然だったのでしょうか?

続く 

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