守田です。(20141016 15:00)
台風19号到来の中、岡山県にて連続講演を行ってきました。
12日は吉備中央町で講演。20人ほどが集まってくださいましたが、町議会議長さん他、数人の地元の方以外はすべて関東からの避難者でした。密度の濃い講演会と交流会ができました。
13日は瀬戸内市長船福岡住宅自治会で災害対策についての話。初めに南三陸町で津波に被災された渡辺由紀子さんが体験談を語ってくださいました。渡辺さん自身は4人のお子さんもお連れ合いも無事でしたが、介護していた義理のおばあさまを亡くされています。
この会合はほとんどが地元の方たちがあつまり、ちょうど台風が近づいてくる中での開催となりましたが、渡辺さんの話から伝わる三陸海岸の方たちが受けた悲しみに、会場全体が涙を流しながら聞き入りました。
渡辺さんのお話は同時に、僕が災害対策の重要な点として話したいことを実際にリアルに体験してきた方のものでもあり、その点でも参加者の方々にとってとても有意義でした。
これらを踏まえて、災害対策としてすべての災害に共通する「正常性バイアス」のこと、この心理的ロックをはずさなければ避難行動に移れないことを伝え、さらにこの考えの適用として水害・土砂災害対策、原子力災害対策のお話をしました。
とても印象的だったのは「防災意識が低い」と聞いていたこの地区の方たちがたくさん集まってくださり、たくさんの方が熱心にメモなどをとってくださったことでした。
「防災意識が低い」と言われるのは、これまで岡山県では地震や津波などの災害が少なく、どの原発からも比較的遠くにあるなど、暮らしの安全度が高いためでもあります。
しかし歴史を振り返れば、地震も津波も起こっており、南海トラフ地震における政府のシミュレーションでも、3時間後には5メートルの津波が押し寄せる可能性ありとされています。およそ日本ではどこでも災害対策は必要なのです。原発からも福井判決の根拠となった被害のおよぶとされる250キロの円をえがけばたくさんのものが入ってくる。
その点で、渡辺さんのお話で、集まってくださったみなさんの災害への関心が開き、その中で僕の話への構えができたのではないかと思います。とてもいいコンビで発言できたと思います。
ちなみに会場は福岡住宅の中の「ふれあいプラザ」で、みなさんのご自宅から近所でもあり、まだ台風が遠くにある午前中の開催だったので危険のない形で集まっていただくことができました。
集中した素晴らしい会を実現できたと思います。その後、台風は夕方から夜半にかけて岡山に最接近しましたが、岡山には大きな被害をもたらすことなく抜けていきました。
明けて14日は台風一過の青空の中のもと、瀬戸内市民会館で災害対策についてお話しました。今度は関東からの避難者の方たち、避難者をサポートしている地元の方たちが多く集まってくださいました。
避難者の方たちは岡山が災害が少なく、原発からも比較的遠いからこそ岡山を選択されていますが、さすがに防災意識は高い。津波の可能性などもきちんと把握している方が多く、岡山県民の健全な危機意識の向上をのぞんでいました。これに地元の方たちが大いに触発されていました。
また交流会では避難者の方たちから、関東にいるときにさまざまな身体症状が出てきたこと、そのため避難したわけですが、岡山に来て快復に向かっていることなどのリアリティをうかがうことができました。あらためて避難の効果と重要性を参加者一同で確認することができました。
これまで繰り返し語ってきたように、「正常性バイアス」は、普段、命の危機に瀕することのない安全な現代生活の中にいる私たちが、危機への心構えが未形成であるがゆえに、とっさの時に危機の到来を認知することができず、「これは危機ではない。正常だ」と現実にバイアス(偏見)をかけてしまう人間心理のことです。
例えば火災報知機がなったとする。火事が起こっているので命がけで脱出しなければならないわけですが、とっさに誰かが「誤報じゃないの?」といったりすると、そう思う方が心理的に楽なので、そちらになびいてしまうのです。それでその言葉にあわせて「そうだよ。前にも誤報があってさあ」などと同調したりしてしまう。ここには「同調性バイアス」も働いています。
このバイアスが避難行動を遅らせる。あるいは不可能にする。そのために避難を可能にするにはあらかじめこの「正常性バイアス」を破っておく必要があり、そのために有効なのが避難訓練なのです。訓練がなされているといざというときの心の拠り所があるので、現実を受け入れられるからです。
ちなみに今、日本には全体として放射能に対する「正常性バイアス」が色濃くかかっています。現実には福島原発事故まで重要な放射線の管理目標とされていたさまざまな数値が桁違いで破られてしまう汚染が生じていながら「健康に害はない」などという無根拠な言説が流布している。
あるいはどうみたって福島原発そのものが崩壊しており、巨大な余震の発生の場合など、東日本壊滅にいたるような被害が出る可能性がいまだに存在しているのに、直視することなく2020年に東京オリンピックまで開催しようとしている。
そこにある危機を認めたくない心理が蔓延しており、その音頭を政府と電力会社が先頭でとっています。ここに現代の私たちの危機が存在している。だから私たちはこの心理的ロックを解除するために、危機を危機として認知し、避難訓練を行うことが必要なのです。
僕の講演はその一環としてあります。災害を対象にしたものではなくてもです。明確にそのような位置づけを持って臨んでいます。放射能に対して働いている「正常性バイアス」の心理的ロックを解除することが目指すところです。
これまで各地で何回もお話してきて、実は活動的に動いている人ばかりではなく、多くの人々、一見、普通に生活している人々が、迫りくる危機に対してかなり明確な危機感を持ち始めていることを僕は感じています。
だから「正常性バイアス」の中にある心情対して、攻撃的な批判を避け、さまざまな災害の例から丁寧に説明していけば、わりと容易にロックを外すことができると感じています。そのためにもぜひもっとあちこちで講演したいし、同時にこの内容を書籍化してもいくつもりです。みなさんのご協力をお願いしたいと思います。
さて今回は災害対策の観点から、とくに正常性バイアスの観点から御嶽山の噴火について考えてみたいと思います。
今回の御嶽山噴火は9月27日に起こりました。現在までのところ56人の方が亡くなられたことが確認されていますが、まだ不明情報があります。捜索が続けられていますが、降り積もった火山灰の上に二回の台風で降雨がもたらされ、さらに山々には一足早く冬が訪れており、捜索が困難になってきているようです。
犠牲になられた方のご冥福をお祈りするとともに、不明の方が発見されることを願ってやみません。同時に私たちの社会が失った尊い命を弔うためにも、教訓に学び、次の災害への備えとしたいと思います。
こうした点で噴火に遭遇したらどうするべきなのかを考え見ましょう。この場合、噴火の規模によっても、その時にどこにいるかによっても違いはありますが、とにかく第一に考えるべきことは命の危機が迫っていると認識すべきだということです。
絶対にやってはいけないことは悠長に写真やビデオを撮っていること。そんなことはせずにとにかく早く逃げること、少しでもより安全な場に移ることが重要です。
まさに「正常性バイアス」に囚われず、命の危機が迫っているという認識を持って行動すること。どうすればより命を守れるかを考えて行動することが大事です。
今回の教訓から言えることは、何をおいてもまずは数百キロものスピードで飛来する噴石から身を守ることが必要です。溶岩などが流れてきていないことが前提になりますが、ひとまず大きな岩の陰に隠れたり、尾根上なら噴火とは反対側の斜面を下って、身を小さくするなどして噴石の直撃から身を守ることも必要です。山小屋があったら駆け込み、壁から離れて持ち物で身体を守ります。
特に頭を守る必要があるので、まずは周りにあるものを頭に乗せた方が良いです。今回は数センチのものが頭を貫通し、即死された方もおられます。確実な方法はないですが、ともあれまずは頭部を守り、続いて身体を隠せる場に退避するという具合に、噴石によるダメージをできる限り少なくすることです。
現実に頭にザックを載せたところ、噴石があたり、中に入っていたコッヘルが潰れたものの頭部の損傷を免れた方がおられます。より大きな噴石なら助からなかったでしょうが、命を守る可能性を大きく広げたために助かったのです。
ここで重要なのは群馬大学の片田敏孝さんが提唱されている避難の3原則を守ることです。一つはハザードマップなどを過信しないこと。二つはどのような状況にあっても最善を尽くすこと。三つ目は率先避難者たることです。
ハザードマップは災害ごとに作られた危険地帯を記したマップのことですが、それらはすべてこれまでの災害からの推測で作られいます。作ることに意義はありますがあくまでも推測なので過信すると危険だという意味です。いつでも想定外がありうるからです。
最善を尽くすとはどのような状況でも命を守り抜こうとすること。運に頼らざるを得ないぎりぎりまで人事を尽くすことです。率先避難者とは「逃げろ!」と叫んで率先して避難を行う人のこと。とっさの時に周りの人の「正常性バイアス」のロックを解いてあげられることにつながりうるので、率先避難が大事なのです。
噴石に続いて恐ろしいのは噴煙です。一気に濃厚な噴煙にやられると息ができなくなります。吸い込むのはとても危険です。そのためタオルなどで口元を覆う必要があります。
また噴煙はマグマが冷えて細かく砕けたものであり、ガラスの粒のような性格を持っています。そのため目に入ると傷をつけるし、コンタクトレンズをしているとすぐに網膜剥離などを起こす可能性があります。
吸い込まないようにするとともに、ガラスの粒のようなものだと認識して、身体の被害やものの被害に対処します。目に入った場合は、極力こすることをせず、水洗いをするか涙を流して流し出すように努力します。
ちなみに噴煙は麓にも降ってくることがあるし、大噴火では相当に広範な地域にも降ります。江戸時代の富士山大噴火では江戸の町が噴煙に覆われました。
このためただちに命の危機がないところでも、噴煙の被害に巻き込まれる可能性があります。このときもコンタクトレンズはただちに外し、可能な限り屋内にたてこもるとともに、不可欠な外出の時は、ゴーグルを着用すると良いです。
その点で放射能対策や黄砂PM2.5対策のためにも、ご家庭に人数分だけのゴーグルを常備しておいた方が良いと思います。その際、ゴーグルは曇ると使用が困難になるので、曇り止め対策がしてあるものをそろえておくことをお勧めします。
今回は水蒸気爆発だけでもこれだけの被害が出てしまいましたが、恐ろしいのは火砕流や溶岩流が飛び出してきた時です。火砕流の場合、冷えたマグマと高温化したガスが主成分で多くの場合数百度あります。溶岩はマグマがそのまま流れ出たものです。
とにかく巻き込まれたらとても生きていることはできませんし、火災流の場合、発生したら100キロを超えるスピードで麓に駆け降りるので、噴火口から遠いところにいても直ちに退避行動をとるべきです。
なおこれらの点について、「富士山噴火ネット」というサイトをご紹介しておきます。ぜひ御嶽山の教訓が冷えてしまわない前に一読されてください。
富士山噴火ネット http://富士山噴火.net/
さて続いて検証していきたいのは、火山噴火に備える社会的体制ですが、端的に言ってものすごく弱かったこと、弱いままにおかれていることを指摘せざるをえません。
これは私たちの社会が原発問題だけでなく、現にあるさまざまな危機に対して目を背けて暴走していることを表しています。これまでのすべての政権がそうした弱点を抱えてきましたが、自分に不利なことを認知することを極端に嫌う安倍政権は、構造的な弱点を最悪のものに広げつつあります。
その意味で私たちの国の政府は、放射能に対してだけでなく、火山災害に対しても、水害や土砂災害に対しても、実は正常性バイアスの中にあり、かつ強めつつあるのです。この点を大転換することこそが私たちの最優先課題です。
続く