守田です。(20141015 21:30)
このところ、放射線被曝から身を守る講演の中で、僕は繰り返し食べ物の話をしています。
マクドナルドハンバーガーやヤマザキのパンなど、添加物が非常に多く、砂糖分も過多なものを避けることなどを提案しています。
これらの話をし出したのは、福島や東北、関東の子どもたちを対象にした保養キャンプでの子どもたちへの講演の際のことでした。
放射線被曝から身を守るためには、放射能を身体に入れないことが最も大切です。そのためには汚染地から可能な限り離れた方が良い。
しかし子どもたちは基本的には自力で移転することができません。
では子どもたちはどうやって身体を守れば良いのか。
一つにはできるだけ放射能を身体に入れない方法を身に付けること。僕はインフルエンザ対策や花粉症対策を真似することを教えています。
端的にはマスクをし、うがい、手洗いなどをこまめに行っていくこと。家に入るとき、身体をはたくことなどなどです。
同時に、身体の免疫力を最大にあげて放射能に立ち向かっていくこと。そのために良く寝ること、良く噛んで食べること、そして良いものを食べることが凄く良いと強調しています。
とくに子どもたちに食べ物を見分ける目を養って欲しいと考えて、「自然状態に近い形で、きちんと作られたものが良い」という話をしています。
そのときの例として最近、頻繁に使っているのが、理想的な放牧で育てられた牛の写真です。タイトルにあげた奥出雲の放牧牛のことです。
僕が使っているのは実際に僕が会ってきた牛たちの写真。これを牛舎にいる牛の写真と比較すると、驚くほど違いがあるのです!!
このことを最初に知ったのは牧場主の成瀬さんに教えられてのこと。京都市左京区の自然食レストラン、キッチン・ハリーナでのことでした。
実はこの場で昨年から、フードポリシー=食政策の研究家、平賀緑さんを囲んだ学習会を月1回(正確には同じ学習会を午前中と夜間と1回ずつ)行っています。
緑さんは食べ物の作られ方を、歴史的論理的に徹底的に追いかけている京都大学大学院在住の研究者で、油を主要なテーマにしながら食べ物産業がいかに変遷してきたのか、その結果、どんな食べ物が社会に流布しているかを調べ、警鐘を鳴らしています。
この学習会に、奥出雲で理想的な放牧を行い、そこで絞った美味しい牛乳をハリーナに届けてくれている成瀬さんが参加されるようになりました。
僕らはハリーナを通じて、成瀬さんの牛乳を共同購入している立場でもあり、その美味しさをいただいているものでもありますが、牧畜の現場を知り尽くしている成瀬さんの超レアな話のリアリティが面白く、緑さんのレクチャーとともにいつも聞き入ってきました。
あるとき、その成瀬さんが「放牧されている牛は頭がいいです。牛舎の牛とぜんぜん違います」というので「どうやって分かるのですか?」と聞いたら「そりゃ、後姿が違いますもん」と笑いながら言う。「一目見れば分かります」とも。
それでもうどうしても成瀬さんの牧場に行きたくなってしまった!善は急げで急きょ、ハリーナで参加者を集い、ワンボックスカーに分乗して奥出雲に向かいました。昨年12月のことでした。
中国自動車道を一路、西に走り、途中で北に折れて成瀬さんの牧場に到着。さっそく牛たちにご対面しました。
そうしたら遠くからみるだけで確かに風格が違うのが分かる。近寄って見ると毛並みがとても美しい。足がしっかりがっしりしている。そして何よりも、なんとも言えない落ち着き払った雰囲気がある。
牛たちはすぐには近寄ってきません。「あいつら僕がいるんで必ずそのうち寄ってきます。でもすぐに近づくと馬鹿にされると思って、様子をうかがっているんです」と成瀬さん。
確かに悠々と草を食みつづけながら、時々僕らをちらちらとみている。
そのうち近寄ってきたのはその群れの「格下」の牛でした。そののちにその場のボス牛がのっそりと近寄ってきました。
圧巻でした。本当に「一目見れば分かる」世界でした。とにかく存在感が凄い。うーんと唸り声をあげさせらてしまう。
そこに成瀬さんが他の牛舎から買い入れたばかりの牛を連れてきました。確かに顔つきがまったく違う。それよりも態度が違うのです。それを見ていて、「ああそうか」とがてんするものがあった。
牛舎にいる牛は人間に全面的に依存して生きています。ただ給餌されるのを待っている。だから人間を見るとおどおどしながら何かをしてくれるのではないかと思って近づいてくるのです。
ところが放牧されている牛たちは自分の判断で野山を駆け巡り、美味しい草を選んで食べている。常に頭を使い続けているのです。
牛舎の牛はふだん考える機会を奪われているから、野に放たれても最初は草を食べることすらできないのだそうです。先輩の牛たちに教えられて草を食べることができるようになる。そうして少しずつ能動性を取り戻していくのです。
放牧されている牛は自分の意志で生きている。さまざまな判断を繰り返しているのです。だから頭がよくなって当然なのです。「なるほど!」と非常によく分かる気がしました。
堂々と尊厳に満ちて生きている牛たちの姿は、いろいろなことを私たちに教えてくれます。牛舎が自然の中にはまったくない人工物であり、牛舎の牛たちのあり方は自然からかけ離れたものであると言う当たり前のことがすごくリアルに迫ってきます。
その意味で成瀬さんの牧場は、ただその場にいくだけで、自然とは何か、食べ物とは何か、牛と人間との関係とは何かを考えさせてくれる素敵な場でした。ぜひまたみんなで行きたいと思っています。
そうしたら成瀬さん。「あいつらは凄く頭が良いのでみなさんのことをすっかり覚えていてすでに格付けしています。今度いったら牛がみなさんをどうみなしたかが分かります!」なんて言う。どきどきしながら再会することになりそうです。
さて、今回はそんな成瀬さんの牧場で育った雄牛を一頭をキッチン・ハリーナで共同購入したので、その肉のおすそ分けを行っています。
尊厳を持って生きていた牛、実際に牧場であってきた牛、でも搾乳のためには雄の牛は必要ありません。種付けが終わったら、というより2歳を過ぎて自我が強くなって、人間に張り合いだすようになったら置いておけないのだそうです。
そこで奥出雲牧場の牛乳を美味しくいただいている私たちが、食べさせていただくことにしました。
残酷と言えば残酷な話で、だから一切、肉類を食べないというベジタリアンの方の考えも理解できるというか、そういう方に「野蛮だ」と言われたら僕には返す言葉がないです。
しかし肉になった動物が、どう育てられ、肉にされ、食卓にのぼったのかを一切考えることのない普通の都市生活から比べれば、少なくとも理想的な放牧を見届けてのこうした食べ方の方が、牛の命に感謝しつつ、大切に食べることができるように思います。
そしてやはりそのことが健康とつよくつながっているように思えます。
それやこれや、ぜひ成瀬さんの牧場の牛たちを賞味していただきたいと思い、販売情報を載せることにしました。
詳しい情報はキッチンハリーナにお尋ねください。
以下、平賀緑さんによる、肉販売のお知らせ分を転載します!末尾に成瀬さんのFACEBOOKページもお知らせしておきます。牧場の牛たちの写真も見れます!
*****
みなさん、こんにちは。平賀緑です。
めったに入手できない貴重な元気牛肉が京都市内で提供される絶好のチャンスなのでお知らせします。
奥出雲で生まれ、奥出雲の牧場で24時間365日完全放牧され、その人生(牛生?)に配合飼料を食べたことも抗生物質などの薬剤を受けたこともない、元気印の牛さん(雄2歳)をキッチン・ハリーナに集う人たちで一頭買いしました。
その牛肉がほどよく熟成されて、今が食べ時です! 冷凍保存も可能ですが、できれば冷凍する前の今、本当に元気な牛の肉とはどういうものか、体験していただくことお勧めしたいと思います。
育ちによって肉の味が天と地ほどに違うことを私が初めて体験したのは香港時代でした。ランタオ島というひなびた島の道ばたで若鶏を拾い(!)、卵を産ませようと持ち帰って育てていたら、ある朝元気に「コケコッコー!」と。
雄では卵を産まないので、キースが首を切って二人で羽をむしって丸焼きにして食べました。その鶏肉の味の濃いかったこと! その後、自分で卵から育てた鶏や鴨やガチョウを食べてきた後には、スーパーの鶏肉はなかなか買えずにいます。
食べものによって身体が変わるとは人間の世界で考えたら当たり前のこと。家畜だって同じです。食べるもの、その食べ方、生活の仕方で肉の味も質も変わります。
今回の牛くんは、生まれたときには自分の母牛のお乳を飲み、その後は牧場に生えている牧草を自分で囓り反芻してじっくりお肉にしてくれたもの。成瀬さん自身が京都まで持参くださったお肉を、キッチン・ハリーナの友子さんが大切に熟成してくれました。
この際、奮発して分厚いステーキもお勧めですが、すじ肉をホロホロになるまで煮込むのも最高です! ペラペラ薄切り肉を基本とする日本式すき焼きなどには向かないかもですが、臭みのない、牛肉本来の味をぜひ堪能してみてください。
普段はお肉を、ましてや牛肉を食べない人も多いかもしれませんが、牛乳をいただくためには、子牛を産ませなくてはいけない。子牛が生まれたら半分は牛乳を絞り出さない雄なので、酪農を続けるためには雄牛をお肉でいただくことが循環を回すために必要になります。
工業的畜産ではそんな不要な雄をゴミのように捨ててしまうけれども、成瀬さんの牛乳をいただく私たちはそうではなくて、牧場から生まれるお肉もありがたくいただきたいと思います。
そろそろ熟成できたので残りは冷凍する予定ですが、その前に本物の味を味わうためには今週あたりが食べごろだそうです! また、ハリーナさんでは、この牛くんのお肉を使ったステーキやボルシチなど牛肉料理も食べられます。
ぜひこの機会に、動物工場とは違う、元気印のお肉の味を体験してみてください!
お肉購入のご連絡先はこちら
キッチン・ハリーナ
メール:kitchen-halina@cpost.plala.or.jp
電話:075-724-3568
京都市左京区田中大久保町28-6 冨田ビル
【アクセス】
<電車> 京福電鉄叡山線「元田中」下車、北へ徒歩5分
<バス> JR京都駅から「北大路バスターミナル行き206番」で「田中大久保町」下車徒歩2分
サイト
http://kitchen-halina.net/
Facebook
https://www.facebook.com/Kitchinharina
牛くんが生まれ育った「奥出雲牧場」はこちら。
https://www.facebook.com/okuizumo