明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1228)原発再稼働をみすえヨウ素剤配布など民衆の側からの災害対策を進めよう!

2016年03月03日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1201~1300)

守田です。(20160303 23:30)

このところ高浜原発再稼働問題の記事を連投しています。
とくに4号機の問題にフォーカスしていますが、前々回の記事に書いたように、今、目前で起こっているトラブルの連続は、本質的には4年以上も停まっていた原発が必然的に起こしている不具合の連続でもあります。
この点を考えるならば、稼働中の川内1号機、2号機、高浜3号機も大変危険であることが分かります。即刻運転を停止せよと言う声を高めていきましょう。

同時に、非常に大きな危険性の前に私たちが立っている以上、いざという時の大事故の発生への備えを逞しくしていく必要性があります。
その前に原発を停止させたいのはやまやまですが、しかしたった今も稼働しているのですから、明日に、いや数時間後に、大事故が発生するかもしれません。
私たちはこのリアリティに立ち切る必要性があります。「危険だ!危険だ!」といいつつも、事故への遭遇を心の底から避けたいと思っている私たちには「そうは言っても明日は大丈夫だろう」という気持ちが忍び込んでもくるからです。

確かに明日は大丈夫な可能性が高いかもしれません。昨日も一昨日も大丈夫だったからです。しかしそんな気持ちの積み重ねの上に、私たちは福島原発事故を迎えてしまったのではなかったでしょうか。
だからこそ、危険性を危険性として正しく認識するためにも、私たちには、事故が起こった時を想定し、対策を練っておくことが必要なのです。
では原発事故対策の核心は何かと言うと、重大事故がおこったら「とっとと逃げだす」ことです。同時にいかに逃げるのかを普段からできるだけリアルに考えた「シミュレーションを持っておく」ことです。

2014年5月に福井地裁樋口裁判長が大飯原発運転差し止めを命じた画期的な判決を出してくださいましたが、その主文で言われたことは関西電力は原発から半径250キロ以内に居住する原告166人との関係で原発を動かしてはらないというものでした。
原発事故が半径250キロに被害を及ぼしうると断定したわけですが、根拠は2011年3月25日に内閣府原子力安全委員会の近藤委員長が首相に提出した最悪時を想定した通称「近藤シナリオ」でした。
4号機の燃料プールの放射能がすべて出てしまったら、半径170キロは強制移住、東京を含む半径250キロが希望者を含む避難ゾーンになるというもので、当時、政府はこのシナリオに基づいて動いていました。

しかし僕の計算ではこれでもまだ最悪の場合とは言えません。あのとき福島第一原発には、燃料棒の数にして4号機のプールの6倍もの放射性物質がありました。しかも近隣の第二原発にもこれに匹敵するほどの核燃料がありました。
近藤シナリオはこの中の4号機のプールの核燃料の放射能漏れを想定したものに過ぎないのです。これに対し福島第一原発の故吉田所長は「チェルノブイリ級はなくてチャイナシンドローム」「われわれのイメージでは東日本壊滅ですよ」と語っています。
いやチェルノブイリ原発事故でも、例えば1000キロ離れたトルコの黒海沿岸部でも大変な量の被曝が起こっています。放射能は1000キロを越えて甚大な被曝を引き起こしうるのです。

実際の事故では最悪のケースから、もっとも被害の少ないケースまで、どこで収まるか分かりません。だからこそ、事故時の心得は、放射能被曝を少しでも減らすべく、最大限の努力をすることです。可能性にかけて懸命に逃げることです。
そしてその際に、安定ヨウ素剤を飲んで逃げることが大事なのです。原子炉から飛散する放射能の中でも大量に生成され、かつ原子炉から出てきやすいものが放射性ヨウ素だからです。同時にこの放射能は薬で被害を軽減できるほぼ唯一の放射能です。
もちろん放射性ヨウ素が飛んでくる時は他の放射能も飛んできます。だからヨウ素剤を飲めば大丈夫なのではありません。あくまでもこれを飲んで「とっとと逃げる」ことが大事なのです。

以上の点に基づき、僕が原子力災害対策検討委員会の委員を務めている兵庫県篠山市はこの1月31日から安定ヨウ素剤の市民に対する事前配布を開始しました。
事前配布は、いざ重大事故が発生し、混乱も予測されるときに、安定ヨウ素剤を配ることを想定するのは難しいこと、また放射能降る中、ヨウ素剤を取りに行ったり、配ったりするのは不合理であり、その時間にとっとと逃げて欲しいと思うからです。
同時に極めて重要な点は、人はいきなり薬を渡されても、その効能や副作用などについて飲み込めないと、俄かに服用することが難しいからでもあります。その点でも薬は事前に配布しておくことが望ましいのです。

もう一つ大事なことがあります。この薬を手にし、説明を受けると、原発事故に対するリアリティを感じることになることです。その点で、安定ヨウ素剤配布は大きな意識啓発になります。
実は政府がこれまで安定ヨウ素剤の配布を行ってこなかったこと、また福島原発事故後でも5キロ圏内にとどめている最大の理由がここにあります。安定ヨウ素剤を手にすることは原発の危険性を知ることなので、配りたくないのです。
その姿勢こそが、福島県でも大量の備蓄がなされていたのに、ほとんど配られなかった結果を生みました。その意味で安定ヨウ素剤を持つことこそ、原発の危険性を周知していくことなのだということを知って下さい。

これらの点から、篠山市では何段階にわたる事前学習会を重ねて、ようやく事前配布まで漕ぎ着きました。それまで2年近くをかけて各レベルでの学習の積み上げをしてきています。
ぜひこれにならって各地で安定ヨウ素剤の配布に向けた努力を重ねて下さい。それと学習を重ね合わせ、安定ヨウ素剤が万能薬ではないこと、これを飲んで「とっとと逃げる」ことこそが重要であることを周知徹底してください。
参考資料として、毎日放送が編集して下さった当日のニュースの動画(1分)と、ちちんぷいぷい(石田ジャーナル)という特集番組の動画(16分)のアドレスを示しておきます。良くできているのでぜひご覧下さい。

安定ヨウ素剤事前配布
https://www.facebook.com/toshiya.morita.90/videos/10206896106819511/?pnref=story

原発事故から子どもたちをどう守る?篠山市がヨウ素剤を事前配布
http://www.dailymotion.com/video/x3smqqd

とくに石田ジャーナルは非常によくまとめられています。僕が語って欲しいと思う内容が極めて的確に語られています。一番重要なのは避難であることも語られています。酒井隆明市長もコメントしていますが一番良いところがピックアップされています。
しかし少々誤りがあります。最後の方で「妊婦と1歳未満の子は飲んではいけない」と語っているところです。この点は篠山市の側の説明も不明確な点があったので毎日放送の責任とは言えないのですが、そんなことはありません。
確かに胎児に対する非常に小さなリスクはありますが、それよりも母体と胎児を守るメリットの方が断然高いので飲むべきだというのが私たち検討委員会の結論です。この点を頭に入れてご覧下さい。

さらにより詳しいことを知るために、私たちの委員会が篠山市長と市民に提出した「原子力災害対策計画に向けての提言」をご紹介しておきます。
とくに「第4章 被曝防護の安定ヨウ素剤の服用」は、これまで日本で出されているどの文献よりもこの問題を深く掘り下げて書いてあると自負しています。ぜひご一読ください。
以下にアドレスを示しておきます。

原子力災害対策計画に向けての提言
http://www.city.sasayama.hyogo.jp/pc/group/bousai/assets/2015/06/teigensyo.pdf

より進んで原発事故対策を学びたい方に、昨秋に緊急出版した僕の著書を強くお勧めしておきます。
以下の注文書を書店にお持ちください。

『原発からの命の守り方』
http://greens.gr.jp/uploads/2015/08/morita_kinkan_tirasi.pdf

本書は日本図書館協会選定図書にも選ばれています。そのことを含む出版元の海象社さんのページもご紹介しておきます。
http://www.kaizosha.co.jp/HTML/DEKaizo59.html

なお安定ヨウ素剤について、そうはいってもなかなか行政が動いてくれないのですぐに欲しいと言う方のために、僕が前から購入先としているところをお教えしておきます。
シンガポールからの並行輸入になります。ただし国内で買えば100丸600円の薬が、3830円(送料込み)で売られています。
ぼったくりなのでご紹介することをはばかる気持ちもあるのですが、今はやむを得ないと考えてお知らせしておきます。

ファミリー薬局シンガポール
ヨウ化カリウム丸50mg「日医工」:100丸入3830円
http://sg.mimaki-family.com/products/31887/

以上、危険な原発を止めよという声を高めながら、同時にその危険性ときちんと向かい合い続けるためにも、原発災害対策を進めましょう!
それがまた私たちが核の脅威から解放される日を近づけることにもつながるのです!

 

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