明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1323)原子力推進派は福島原発事故の流れ=放射能の放出を事前に的確に予測していた!

2016年11月21日 15時30分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です。(20161121 15:30)

このところ原子力規制委員会が、原発再稼働や老朽原発の運転延長に向けての新基準の合格を連続して出しています。無責任極まる行為です。
新規制基準の問題点について、これまで多方面にわたって紹介してきましたが、今回は、独立行政法人・原子力安全基盤機構が、原子力防災専門官向け資料として作成していた炉心溶融のシミュレーション画像をご紹介します。2009年作成のものです。
すでに「明日に向けて(1311)島根原発(沸騰水型原発)の構造的危険性を把握しよう」の中でもご紹介していますが、これはかなりレアなビデオです。

これを観ると、原子力推進派は、福島第一原発事故のような事故をかなりの精度で予測していたことが分かります。
その際、ベントを行うことも予定済みでした。にもかかわらず「過酷事故が起こりうる」という重大事実を社会的に明らかにせず、いわんや住民を逃がすための措置を施してきませんでした。
重大犯罪です。何よりも過酷事故が起きる可能性があり、その際にベントを行うことが予定済みなら、そのことを社会に対して、とりわけ原発周辺の住民に対して告げて、大がかりな避難の準備などをしておくべきだったのです。

にもかかわらず、現在の新規制基準のもとでの審査は、この重大なあやまちを問うことなく、同じ構造のもとに進められています。
そもそも正しい判断は、福島原発事故の教訓に基づいて原発を止めることですが、「再稼働」の基準を作ると言うのであれば、最低でも社会に対してこうした過酷事故がありうることをもっと鮮明に知らせるべきです。
またその際にベントを行うこと、つまり事故対策として放射能放出がなされることを周知徹底し、ベントの前に人々がどう逃げるべきなのかの方策も責任をもって作るべきです。

しかしこの点が曖昧なままに再稼働や、運転延長の許可が出され続けています。無責任極まりない。
なぜこんなことが続いているのでしょうか。過酷事故が起こり、放射能が放出されるリアリティが社会にきちんとつながったらとてもではないけれども原発の運転が認められなくなることを原発推進派が理解しているからです。
このために事故のリアリティが曖昧化されているのです。許しがたいことです。

私たちが確認しておかなければならないのは、そもそもベントとは、原発推進派にとってもあってはならない装置だということです。
格納容器の役目は過酷事故があったときに放射能を閉じ込めることにあるからです。その格納容器を守るために放射能のガスを外に排出する。そのことは技術的に格納容器が完成してないことを意味しているのです。
ベントがついた格納容器の運転など、ブレーキが壊れることがある車を動かすのと同じことで絶対に認められません。これは原発に賛成・反対以前の話です。賛成論の前提にある「安全」の根本的な崩壊だからです。

この安全・安心をまったく無視した原発再稼働や延長の動きに対抗していくために、今回はこのビデオ内容の文字起こしを行いました。
ぜひこれをご覧になり各地の学習会などで使ってください。裁判などでも使えるのではないかと思います。
このような事故が再度、起こりうることを前提に、現在の原発の再稼働や延長が認められていること、だから再び過酷事故が起こる可能性が極めて高く、許してはならないことを各地にきちんと伝えましょう。

ただしその際に付け加えて欲しいのは、事態はこのシミュレーション通りにはいかなかったことです。
なぜならビデオでは事故の進展の最後の方でベントを行うことが出てきています。(ベントという言葉は使われていない)
そのあとに、最悪の事態に至った場合、つまり放射能の放出にいたった場合でも、「住民に安心していただけるように努力している」云々という言葉が出てきてまるでパロディのようなのですが、実際の福島原発事故ではベントはうまくいかなかったのです。

1号機から3号機のすべてであらかじめの想定のようにはベントバルブが開かなかったのです。
それでも1、3号機は、圧縮空気を送り込むというマニュアルにはない思い付きでなんとか開けたのですが、2号機は最後までバルブが開かずにベントに失敗。格納容器下部が破損し、1~3号機の中でもっとも大量の放射能漏れを起こしたのでした。
その意味で配管破断から始まるメルトダウン事故の進展は完璧に予測されていたけれども、それに対する対策は失敗したこともしっかりとみてとってください。

以下、文字起こしを以下に貼り付けます。なおナレーションを文字起こしていますが、同時に画面に表示されたテロップもカッコでくくって表示しています。

*****

動画で見る炉心溶融  防災用事故シナリオ理解のための教材(BWRマークⅠ型)
https://www.youtube.com/watch?v=wwYk62WpV_s

今からご覧いただく映像は沸騰水型原子炉の設計基準事故を超えるようないわゆるシビアアクシデントを想定し視覚的に説明したものです。
この例では20数時間におよぶ事故の経過をおよそ5分の映像にまとめています。

「防災用事故シナリオ理解のための教材(BWRマークⅠ型)」
「事故事例 原子力圧力容器に繋がる大きな配管が破断し、大量の放射性物質が環境に放出される事故」

それではマークⅠ型格納容器を例に、原子炉圧力容器につながる大きな配管が破断し、大量の放射性物質が環境に放出される様子をご覧いただきます。

「事故シーケンス 事故発生後に制御棒が完全に挿入され、原子炉が停止した後、炉心を冷却するための全ての注水に失敗するケース」

これは事故発生後に制御棒が完全に炉心に挿入されたことにより、原子炉が停止し、その後、炉心を冷却するためのすべての注水に失敗するケースです。
配管破断事故が発生すると冷却材が流出し、原子炉圧力容器内の水位が低下します。

「冷却材喪失事故発生」
「炉心露出」

制御棒は挿入されますが注水に失敗するため炉心が露出します。
炉心が露出すると燃料の冷却ができないため残留熱により燃料温度が上昇します。
そしてもっとも温度が高くなる炉心中央部の燃料が溶融します。

「炉心溶融 事故発生から約30分後」

溶融した燃料はやがて原子炉圧力容器下部に到達します。

「圧力容器下部到達 事故発生から約1時間後」

解析により事故発生からおよそ1時間でこの状態になると予測されます。
原子炉圧力容器は、厚さおよそ12から15センチの鋼鉄製ですが、溶融した燃料は非常に高温であるため、ついには原子炉圧力容器を貫通します。

「圧力容器貫通 事故発生から約3時間後」

解析により事故発生からおよそ3時間でこの状態になると予測されます。
貫通した溶融した燃料は、原子炉圧力容器を支えるペデスタルの中間床面に落下します。
そしてコンクリートの床を侵食しながら、ガスを放出し、格納容器の温度および圧力を上昇させます。
マークⅠ型格納容器では、その後溶融燃料が、コンクリートで形成されたペデスタルの中間床面を貫通し、さらにその下部にあるコンクリート床面上に落下します。

「ペデスタル サブレッションチェンバ」(注:示された構造説明図の説明)

ペデスタル下部のコンクリート床面に落下した溶融燃料により、ガスが発生します。
このガスが格納容器内に充満して、温度および圧力が徐々に高くなります。

「格納容器異常漏えい」

そして圧力が格納容器の限界を超えたときに、格納容器のフランジ部から大量の漏えいが起こると想定し、防災策を講じます。

「環境への放射性物質の放出」

漏えいしたガスには、希ガスやヨウ素などの放射性物質が含まれており、原子炉建屋を経由して、排気塔から環境に放出されます。

今回は防災用事故シナリオ理解のために、配管破断に起因する最悪の事例をご覧いただきました。

「最悪の事態に至った場合でも、住民の方々に安全・安心して頂けるよう、日頃から、防災担当者への訓練を通し、原子力災害時の対応能力の習熟に努めております。」

万一、こうした事態に至った場合でも、住民の方々に安全・安心して頂けるように、日頃から、防災担当者への訓練を通して、原子力災害時の対応能力の習熟に努めております。

ビデオ終わり

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