明日に向けて

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明日に向けて(1789)PCR検査をめぐる「疑惑」を捉え返す―新型コロナの影響を民主主義的に越えるために(6)

2020年04月04日 13時00分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20200404 13:00)

PCR検査をめぐる「疑惑」が強いのは安倍政権の責任

新型コロナの考察の続きです。今回はPCR検査が意図的に少なくさせられていて、オリンピック延期後にどっと増やしたのではないかという「疑惑」について取り扱います。
僕はそんなことはないし、この検査は精度が高くなくて偽陰性・偽陽性をたくさん生み出すので、むやみやたらに拡大しても意味がないし危険だと考えています。
肺炎に進んだ人にしぼって、的確に検査を行っている日本の医療界の対応は、僕は正しいと思うし、実はそれでここまで医療崩壊を上手に切り抜けてきているとも思います。

しかしさまざまな疑惑や懸念が生じてしまうのも、ある意味で当然です。責任はすべて安倍首相にあります。この方を退任させないと、この困難を越えていくのは難しい。
理由は簡単です。安倍首相が森友・加計・桜など、国有財産を私物化するさまざまな不正を犯し、その上、忖度した官僚にデータ改ざんを重ねさせてきているからです。
そんな中でお役人として誠実に生きようとしていた、財務省職員の赤木俊夫さんが自ら命を絶ってしまった。その手記が公開され、首相の断言をかばうため、パワハラ官僚の佐川氏からの命令で改ざんがなされたことも明々白々になりました。

首相の断言は、自分や妻である明恵氏が「森友に関与していたら、首相も国会議員も辞める」というものですから、どう考えたって安倍首相はもう退任し、さまざまな罪を償うしかないのです。
にもかかわらず「再調査しない」という。ひどすぎます。だから小泉純一郎元首相などからも「辞めるべきだ」と言われているのにそれでも辞めない。こんな首相が信頼できるはずがあるわけない。
さらに多大な痛みを伴う自粛は要請するのに、金銭補償はしぶりまくる。そんな中でマスク2枚を国民に配れば喜ばれるとマンガのような勘違いをするし、側近たちも止められない。こんな政権を信頼せよというのが無理です。

「アベノマスク」が海外でも笑われていることを報じた朝日新聞


安倍首相は新型コロナのことをまったく分かっていない

安倍首相をすぐにも退任させることが必要なのは、新型コロナについても必要な学びをしないので、正しい認識を持っていないことです。
顕著な例が、2月27日に小中高の全国一斉の休校を突然、要請したことでした。理由は「子どもたちを守る」ことでした。しかもそう言いながら保育園や幼稚園、学童は行うというつじつまの合わないものでした。
しかし中国から出されていたデータで、20歳未満の患者はほとんど確認されていなかったのです。「子どもから大人に移した例がみられない」ことも、データの裏付けは不十分ながら指摘されていました。


「子どもの健康第一」とあたかも子どもに危機が迫っているかのように発言した安倍首相 ネットより

安倍首相はこの時、専門家会議に相談もしなかったのですが、専門家会議の面々はすぐに会見を開き、実は安倍首相のデタラメ発言を打ち消したのでした。
それが「10代から30代は重症化する危険性は少ないが、活発に行動しているこの世代に感染しても無症状の人がおり、リスクのある高齢者に感染させてしまっている。人の命を守るために若い方たちに行動抑制をお願いしたい」というメッセージでした。
ただし、いまは10代から30代だけでなく「元気に活動しているすべての世代」にこのお願いを拡張していますが。

PCR検査のことでも、安倍首相はとても顕著な発言を行いました。3月28日の記者会見における神保さんの「なぜ日本がギリギリのところで持っているという確信があるのか」という質問に答えてです。下記に示す動画の52分ぐらいからです。
【ノーカット】感染拡大のなか経済対策は・・・安倍総理会見 (20/03/28) 
https://www.youtube.com/watch?v=pD0M_XMptII

首相はこの中でPCR検査についてこう語ったのです。「私も質問をしたんです。批判があるんだけれどもどうなんだろうか、PCR検査が少なくて。それでうかがったのですが~」と。続いて医師たちの説明の内容を語り、「私は納得した」と言ったのでした。
「やはり何も分かっていなかったのだな」と思いました。当初より、専門家会議は「感染症予防の観点からは、全ての人に新型コロナウイルスの検査をすることは、有効ではない」と語ってきているのに、その点を共有化してきてないのです。
だから実は政府は一度も、PCR検査についての考え方を示していません。分かってないからです!そんな安倍首相を、専門家会議はうまくコントロールし、「緊急事態宣言」の発令をなんとか思いとどまらせているように僕には思えます。


「PCR検査をオリンピックのために抑制してた」論をファクトチェックしよう

さてこの大事な前置きをした上で、PCR検査疑惑、実際はどうなのか検証してみましょう。その際、説得力を感じたのは以下の毎日新聞の記事です。

新型コロナ「五輪延期後に検査急増」は本当か 「感染隠蔽」説を検証すると…
毎日新聞2020年3月28日 16時18分(最終更新 3月29日 12時43分)
https://mainichi.jp/articles/20200328/k00/00m/040/090000c

 

記事によると、安倍晋三首相とIOCのトーマス・バッハ会長が1年程度延期することで合意したのは3月24日でした。その上で以下のように書かれています。
「国内のPCR検査の実施件数は、2月18日~3月25日に計4万6869件。これは3月25日までに自治体などから回答があった件数の合計で、日々修正などもあるため数値は変動することがあるものの、五輪延期の動きがあった22日に772件の検査を実施し、その後、23日=1108件、24日=1959件、25日=1679件(いずれも25日時点)――となっている。
しかし、延期の動きが本格化する前から、一定程度の検査は実施されている。2月18日以降、1日当たり最低でも513件(2月24日)の検査が行われ、3月25日までの1日当たりの平均は1260件程度。3月10日=1945件、3月6日=1794件、3月12日=1718件――など、延期決定前後に匹敵する規模の日も多く、「延期が決定した後に検査が増えた」とは言えない状況だ。」

どうでしょうか。記事に添えられたグラフもぜひご覧ください。


毎日新聞の記事に添えられた東京都の検査数と陽性者のグラフ

あるいは専門家会議の4月1日の会見で出された累積患者数を見ても同じことが言えます。だんだん感染のスピードが上がってるパッと見、怖い表ですが、ともあれ、これを見ても24日以降に隠していたものがどっと出てきたとは感じられません。
その点で「PCR検査をオリンピックのために抑制してた」のではと感じている多くの方に、実はエビデンスのないこの論から離れていただきたいのです。


専門家会議会見で出された累計患者数

繰り返しますが、安倍政権と専門家会議や日本の医療界は別です。
「コロナ、そこまでのものか」と語り、諸外国のように都市封鎖などで自由と民主主義を抑制せず、穏やかにかつ民主的に事態を越えようとしている努力がなされています。
その医療界の合意がないと、安倍首相がどう思ってもPCR検査での隠ぺいなどできない。「オリンピックのために抑制してその後に拡大した」事実はやはりないのです。

続く

#新型コロナウイルス #PCR検査疑惑 #アベノマスク #専門家会議

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