守田です(20200423 21:00)
前回に続き、クラスター対策班のとっている戦略を分かりやすくまとめます。
● クラスター戦略の合理性
前回、クラスター対策班がロックダウンなど選択してはいけない。人々に対する「鉄壁の信頼」をもとに、目的は達成できると考えていることを紹介しました。
しかしもちろん僕は、それだけで支持してきたわけではありません。クラスター潰し戦略が、きわめてよくできていると確信して支持しているのです。
クラスター潰しは、感染がどのように広がったのかを丹念に聴き取り、分析していくものです。その中からさまざまなことをつかんでいる。
重要なのは、なんと感染した10人のうち、8人までは他の人に感染させていないという事実です。しかも残りの2人のうちの1人も、他の1人にしか感染させていない。
つまりこの感染症では、自分がかかったとしても、必ずしも人に感染させるわけではないのです。
ではどうして感染拡大が続くのか。答えは10人の中の1人が、たくさんの人々に感染させてしまっているからでした。
対策班たちは、なぜ10人のうちの1人が、感染を拡大させるのかを追いかけました。人による違いはそれほどなかった。それでうつした人の行動を追いかけたら、見えてきたのが、ライブハウスなどがクラスター源になっていることでした。
「3密」、密閉(空間)、密集(場所)、密接(場面)が重なった場では、18.7倍も感染力が上がっていた。それで3密を避ける、日本独自の戦略が導き出されました。これはとても理に適っていました。
ただし僕はいま、複雑な思いでこの点を書いています。僕の大切な友人の一人が、ライブハウスのオーナーだからです。彼は東日本大震災後も店を閉めず、大変な赤字を自分で補てんしながら、店と音楽を愛する仲間、働く仲間を守ってきた。
クラスター対策班の方たちも、自分たちの言動が、多くの方たちをとても苦しい立場に追い込むことを承知で、発言を続けています。辛い仕事だと思います。
● 3密を避けるとは、重なったところだけが高リスク・・・という意味ではない
しかしいつも大事なことが理解できないため、繰り返しクラスター対策班の努力をぶち壊している方がいます。安倍首相です。今回は、安倍昭恵氏の大分旅行をかばって、誤まったメッセージを発してしまいました。
「3密を避ける」戦略は、三つの重なりを避けることが強調されましたが、当然にもそれぞれの「密」が、感染リスクを高めるいので気を付ける戦略なのです。もちろん重なるところはとくに避ける場です。
しかしこれが「3つが重なると高リスク」と誤解され、公園での人の密集が起こっていることが見えてきました。公園は、散策したり、ランニングなどはかまわないのですが、密集してしまうと高リスクです。
ところが安倍首相は、明恵氏の大分旅行、しかも集団でのマスクもしないでの参拝について、「3密ではない」からとかばってしまいました。
昨日22日の記者会見は、実はこの首相の発した誤まったメッセージをひっくり返すことも含めて、誤解を解こうとしていたように思えます。「三つが重なったところを避けるとの誤解が生じたのは、自分たちの伝え方が悪かったから」ともいいつつ・・・。
このように対策班は、次々とクラスターの発生しやすい場を見つけ、理由を解明しています。例えばカラオケは3密だけでなく、歌う行為がウイルスを飛散させやすい。ウイルスは胸の深いところにいるので、大声を出すと飛びやすいから高リスクなのです。
あるいはナイトクラブなど、接客を伴う夜の場が、高リスクとなっていることが捕まれ、自粛が求められました。
ロックダウンという方法を採らない。いや、そもそも日本の法律に、できる根拠もないのですが、だからこそ、この細やかな取り組みが生み出されてもいます。
肝心なのは、安倍政権へのさまざまな不信がありながらも、多くの人々が、3密を避ける戦略を支持し、行動変容にも協力していることです。みんな踏ん張って「鉄壁の信頼」に応えている。
だから、私たちの努力の結果として、ここまで感染爆発は抑えられ、諸外国と比べて圧倒的に死者数を低く抑えられています。これこそクラスター対策班・医療者・私たち民衆の優れた連携プレーの成果です。
● 8割削減の意味
しかしクラスター戦略はいま、重大な岐路にさしかかっています。感染の拡大の中で、クラスターを追えきれなくなってきているからです。
ただし、追えきれなくなってきているのは、安倍首相が、感染拡大に見合った人員強化をしてくれないからでもあります。
しかも安倍首相がいるだけで、多くの人が不信感、不快感を持ってしまう。戦略を理解していない言動も繰り返される。
自粛を呼びかけながら補償も追いつかないので、生活苦から、人々の息苦しさや不安はますます高まってしまう。
専門家会議も、クラスター対策班も、よくもこんなひどい首相を担がざるを得ない状況で、頑張れるものだと驚嘆します。
それではクラスターが追いにくくなっている中で、どうするのか。そこで出てくるのが「行動変容」の強化です。人と人の接触を8割減らす戦略です。
これは、いまは目に見えていないクラスター発生地・発生条件を、抑えこんでいく戦略でもあります。同時にこれを行うことで、クラスターの可視化も目指されています。もう一度、クラスター潰しをより有効にしていこうというのです。
これらの重なりで、感染の山を下降させることが目指されています。実際、東京都の増加傾向はいま横ばい状況ですが、みんなで努力を重ねれば、下降に向かわせることもできるかもしれない。
しかしこの大型連休に、人の大きな移動が起こってしまうと、ウイルスが運ばれ、感染拡大が再び上向きになってしまう可能性がある。
それで昨日は、人と人の接触を避ける10のポイントが、とても分かりやすく打ちだされました。専門家会議から出された図をご紹介します。
この大型連休をうまく乗り越えられれば、その先、もう少し良い展望も見えてくるかもしれない。
ただし効果が目に見えるまでは2週間のずれがありますが、ともあれみんなで頑張りたいと思います。
続く
次回は、不穏に広がっている「死者数をめぐる疑惑」、「感染者データが実情を反映していないのでは?」という点にお答えします。
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