明日に向けて

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明日に向けて(1798)クラスター潰し戦略の合理性と8割削減の意味-新型コロナの影響を民主主義的に越えるために(15)

2020年04月23日 21時00分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20200423 21:00)

前回に続き、クラスター対策班のとっている戦略を分かりやすくまとめます。

クラスター戦略の合理性

前回、クラスター対策班がロックダウンなど選択してはいけない。人々に対する「鉄壁の信頼」をもとに、目的は達成できると考えていることを紹介しました。
しかしもちろん僕は、それだけで支持してきたわけではありません。クラスター潰し戦略が、きわめてよくできていると確信して支持しているのです。

クラスター潰しは、感染がどのように広がったのかを丹念に聴き取り、分析していくものです。その中からさまざまなことをつかんでいる。
重要なのは、なんと感染した10人のうち、8人までは他の人に感染させていないという事実です。しかも残りの2人のうちの1人も、他の1人にしか感染させていない。
つまりこの感染症では、自分がかかったとしても、必ずしも人に感染させるわけではないのです。


ではどうして感染拡大が続くのか。答えは10人の中の1人が、たくさんの人々に感染させてしまっているからでした。
対策班たちは、なぜ10人のうちの1人が、感染を拡大させるのかを追いかけました。人による違いはそれほどなかった。それでうつした人の行動を追いかけたら、見えてきたのが、ライブハウスなどがクラスター源になっていることでした。
「3密」、密閉(空間)、密集(場所)、密接(場面)が重なった場では、18.7倍も感染力が上がっていた。それで3密を避ける、日本独自の戦略が導き出されました。これはとても理に適っていました。


ただし僕はいま、複雑な思いでこの点を書いています。僕の大切な友人の一人が、ライブハウスのオーナーだからです。彼は東日本大震災後も店を閉めず、大変な赤字を自分で補てんしながら、店と音楽を愛する仲間、働く仲間を守ってきた。
クラスター対策班の方たちも、自分たちの言動が、多くの方たちをとても苦しい立場に追い込むことを承知で、発言を続けています。辛い仕事だと思います。


3密を避けるとは、重なったところだけが高リスク・・・という意味ではない

しかしいつも大事なことが理解できないため、繰り返しクラスター対策班の努力をぶち壊している方がいます。安倍首相です。今回は、安倍昭恵氏の大分旅行をかばって、誤まったメッセージを発してしまいました。
「3密を避ける」戦略は、三つの重なりを避けることが強調されましたが、当然にもそれぞれの「密」が、感染リスクを高めるいので気を付ける戦略なのです。もちろん重なるところはとくに避ける場です。
しかしこれが「3つが重なると高リスク」と誤解され、公園での人の密集が起こっていることが見えてきました。公園は、散策したり、ランニングなどはかまわないのですが、密集してしまうと高リスクです。

ところが安倍首相は、明恵氏の大分旅行、しかも集団でのマスクもしないでの参拝について、「3密ではない」からとかばってしまいました。
昨日22日の記者会見は、実はこの首相の発した誤まったメッセージをひっくり返すことも含めて、誤解を解こうとしていたように思えます。「三つが重なったところを避けるとの誤解が生じたのは、自分たちの伝え方が悪かったから」ともいいつつ・・・。


このように対策班は、次々とクラスターの発生しやすい場を見つけ、理由を解明しています。例えばカラオケは3密だけでなく、歌う行為がウイルスを飛散させやすい。ウイルスは胸の深いところにいるので、大声を出すと飛びやすいから高リスクなのです。
あるいはナイトクラブなど、接客を伴う夜の場が、高リスクとなっていることが捕まれ、自粛が求められました。

ロックダウンという方法を採らない。いや、そもそも日本の法律に、できる根拠もないのですが、だからこそ、この細やかな取り組みが生み出されてもいます。
肝心なのは、安倍政権へのさまざまな不信がありながらも、多くの人々が、3密を避ける戦略を支持し、行動変容にも協力していることです。みんな踏ん張って「鉄壁の信頼」に応えている。
だから、私たちの努力の結果として、ここまで感染爆発は抑えられ、諸外国と比べて圧倒的に死者数を低く抑えられています。これこそクラスター対策班・医療者・私たち民衆の優れた連携プレーの成果です。


8割削減の意味

しかしクラスター戦略はいま、重大な岐路にさしかかっています。感染の拡大の中で、クラスターを追えきれなくなってきているからです。
ただし、追えきれなくなってきているのは、安倍首相が、感染拡大に見合った人員強化をしてくれないからでもあります。

しかも安倍首相がいるだけで、多くの人が不信感、不快感を持ってしまう。戦略を理解していない言動も繰り返される。
自粛を呼びかけながら補償も追いつかないので、生活苦から、人々の息苦しさや不安はますます高まってしまう。
専門家会議も、クラスター対策班も、よくもこんなひどい首相を担がざるを得ない状況で、頑張れるものだと驚嘆します。

それではクラスターが追いにくくなっている中で、どうするのか。そこで出てくるのが「行動変容」の強化です。人と人の接触を8割減らす戦略です。
これは、いまは目に見えていないクラスター発生地・発生条件を、抑えこんでいく戦略でもあります。同時にこれを行うことで、クラスターの可視化も目指されています。もう一度、クラスター潰しをより有効にしていこうというのです。
これらの重なりで、感染の山を下降させることが目指されています。実際、東京都の増加傾向はいま横ばい状況ですが、みんなで努力を重ねれば、下降に向かわせることもできるかもしれない。

しかしこの大型連休に、人の大きな移動が起こってしまうと、ウイルスが運ばれ、感染拡大が再び上向きになってしまう可能性がある。
それで昨日は、人と人の接触を避ける10のポイントが、とても分かりやすく打ちだされました。専門家会議から出された図をご紹介します。



この大型連休をうまく乗り越えられれば、その先、もう少し良い展望も見えてくるかもしれない。
ただし効果が目に見えるまでは2週間のずれがありますが、ともあれみんなで頑張りたいと思います。

続く

次回は、不穏に広がっている「死者数をめぐる疑惑」、「感染者データが実情を反映していないのでは?」という点にお答えします。

***

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#新型コロナウイルス #パンデミック #医療崩壊 #専門家会議 #クラスター対策班 #鉄壁の信頼 @安倍晋三

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明日に向けて(1797)感染拡大を抑えるための中軸、クラスター対策班のことを考察しよう-新型コロナの影響を民主主義的に越えるために(14)

2020年04月23日 16時51分56秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20200423 16:30)

いろいろなことが一気に見えてきました。大事な時なので、記事の連投をお許しください!

記者会見、感染症学会、NHKスペシャルから

昨日22日、新型コロナ対策の専門家会議が行われ、夜になって記者会見が行われました。
これに先立つ18日、日本感染症学会が「covit-19シンポジウム」を開催し、専門家会議や「クラスター対策班」からの報告が行われました。
またこうした内容を、3月から密着取材してきたNHKが、4月11日にNHKスペシャル「新型コロナウイルス 瀬戸際の攻防~感染拡大阻止 最前線からの報告~」でまとめて報道しました。

それぞれに見ごたえある内容がぎっしり詰まっています。以下に動画や報告記事のURLを示しておきますのでぜひご覧ください。なおNHKスペシャルは4月26日まで無料でご覧になれます。

人との接触を8割減らす10項目とは? 専門家会議が会見
2020年4月22日 THE PAGE 
https://www.youtube.com/watch?v=8Bu0TBScn90

ライブドアニュースより

クラスター対策班の最大の懸念は重症化する高齢者の増加。専門家の最新報告で見えたこと
2020年4月18日 BUZZFEED NEWS 千葉雄登
https://onl.tw/BYzQjPL

NHKスペシャル「新型コロナウイルス 瀬戸際の攻防~感染拡大阻止 最前線からの報告~」
2020年4月11日
https://onl.tw/L45bRWf


「クラスター対策班」が採用している対コロナ戦略は、国民・住民への鉄壁の信頼で成り立っている!

この3つの内容をできるだけ分かりやすくまとめてみます。

いま日本で採られている戦略は、クラスター潰しと国民・住民の行動変容の組み合わせによるものです。
クラスター潰しとは、小規模な爆発的感染が起こった場を探し、そこの利用を避けることや、申し訳ないけれども閉ざすことをお願いし、感染拡大のスピードを落とすことです。

行動変容とは、いままさに私たちが行っているように、さまざまな自粛などによって、人と人の接触を8割減らし、同じく感染拡大のスピードを落とすことです。
この二つを組み合わせつつ、感染拡大のピークが医療対応の限界を越えないようにすること。救えるべき命を確実に救いながら、感染症の終息まで、みんなで生き延びていくことが目指されています。

僕が当初から専門家会議に共感してきたのは、ロックダウンなどの強硬措置は、社会的害悪が大きく、違う悲劇をたくさん作りだしてしまうと考えて、それを避けようとする姿勢が強いからです。
実は強行措置は、対策者としては、感染症対策だけを考えれば最も合理的なので、やって欲しい面もあると思います。しかしそれは、社会の他のあらゆるものを壊してしまう。「暗い闇にしかつながらない」とこの方たちは言われます。


ロックダウンは暗い闇しか生まない。そんな状況は作ってはいけないと語る押谷仁さん

では強権発動をしないあり方に、専門家会議の方たちはなぜ自信を持てるのでしょうか。おもにデータ解析を担当している北海道大学教授の西浦博さんがこう言われました。
自分たちがデータを示すことによって、人々が「自発的ハイリスクの場所を避けてもらうように制御する」「それには日本人に対する鉄壁の信頼がありました」。


人々に対する「鉄壁の信頼」を語る西浦博さん

そうなのです。「強権など用いなくても、意を尽くして人々に危険の避け方を説明すれば、きっと人々は自発的に動いてくれる」。その鉄壁の信頼を胸に、専門家会議の方たちは、丁寧な情報開示を続けているのです。
しかし、残念ながら一部の方たちに、この思いがなかなか伝わっていません。森友、加計、そして桜と、安倍政権が不信を極め、まさに倒れる寸前の時に、新型コロナの猛威が始まってしまったからです。
それで僕は、多くの方たちが、専門家会議―クラスター対策班と、安倍政権を串刺し的に批判している中で、足を踏ん張って叫んでいます。「みんな。違うよ。専門家会議こそ、僕らの味方なんだ」と。

続く

次の記事で、それでは国民・住民に「鉄壁の信頼」を寄せている専門家会議、クラスター対策班が、どのように難局を切り抜けようとしているのか、その戦略を解説したいと思います。

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名前が「森田俊屋」になってしまっていますがご愛嬌ということで・・・
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#新型コロナウイルス #パンデミック #医療崩壊 #専門家会議 #クラスター班 #国民・住民への鉄壁の信頼 @安倍晋三

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