明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(2450)高感度体質者、能力減退症、全国の被曝に着目を ―三田茂医師講演・「原爆ぶらぶら病」と『能力減退症』=被爆者と『新ヒバクシャ』その類似性 全文文字起こしその7

2024年08月20日 22時00分00秒 | 明日に向けて(2401~2600)

守田です(20240820 22:00)

三田茂医師講演を動画をご覧下さい

続いて岡山の三田茂医師講演の全文文字起こしの7回目、最終回をお届けします。

今回も動画をご紹介しておきます。以下の画像をクリックして下さい。

三田茂医師講演 「原爆ぶらぶら病」と『能力減退症』=被爆者と『新ヒバクシャ』その類似性、共通性ー被爆・被曝の新しい理解・病悩の解決の可能性

ここでは1時間53分57秒から 以下文字起こしを貼り付けます。

*****

◯「高感度体質者」における「放射能敏感症」について

さらにですね、これ去年の暮れの医学会なのだけれど、一番最近の医学会で、アンケート「あなたの体質について教えてください」という、こういう研究をしました。

どうも、患者さんたちを見ていて311で被曝して具合が悪くなった人たちって、なんかちょっと違うのですよね、平気だって言っている人と。虚弱だったのではないか。子どもの時に虚弱とか特異体質と言われたのではないか。化学物質過敏症を持っているか。電磁波過敏はどうか。発達障害という診断を受けている、或いは自分でそう思っている。それからさっきのHSP=Highly Sensitive Person、とても敏感な人。例えば洋服なんかもちくちくして着られなくて嫌だとか、それから匂いがきついともう食べられないとか、そういうような人ではないとか、そういうアンケートを取っています。

その結果、ここも動画にしてあるので興味があったら見てみてください。https://youtu.be/FEhmZEJbI2o?si=CzKx0xPI1YcfUHgt これがキーワードなのだけれど。「『高感度体質者』における『放射能敏感症』」という、こういう理解が必要だろうという事で、これも提唱しました。こんなの当たり前と言えば当たり前の事なんですけれども、認識しないと治療に結びつかないというふうに考えたわけです。



高感度の体質の人っていう、だから、並みの、普通の人とは違ってとっても敏感で、優秀で洞察力が高くて、と言うような人がやっぱり色々感じてしまうのですよね。『放射能敏感症』と言うのは、「生物学的な感作」というのが関係していると思います。 

 

「感作」というのはちょっと大事な言葉、感作というのは、医学的な感作と言うのはアレルギーですね、主に言われるのは。タンパク質、例えばスギ花粉のタンパク質、それから蜂の毒のタンパク質、こういうものに1回浴びた時は良くても、身体が覚えてしまう。だから、2回3回目と、どんどんどんどん反応が強くなっていく、というのを医学的感作というのです。

「生物学的感作」というのは、そこまで厳密な定義ではなくて「末梢的感作」「中枢的感作」と、末梢性・中枢性というのだけど、いろんな刺激を受け続けていると、どんどんこう感じが敏感になっていく。それで、感じて敏感になって具合が悪くなっていく事を繰り返していると、どんどん具合が悪くなる。こういう事の組み合わせで、感作によって放射能に敏感な状態と言うのを作ったのではないかとそういう事です。

「鼻血が沢山出た」。「いや、そんなの出るわけない」、こういう議論というのはお粗末だけれど、そういうのがありました。さっきも言ったように、総理大臣がそれで漫画家を攻撃しましたね、すごい攻撃しました。
敏感症と言うのは鼻血やなんかで感作によるものだと思ったのは、311のあと、3月12日に爆発し始めて沢山プルームが飛んで、もう関東には3月15日にプルームが飛んできて、塵が飛んできた事が分かっている。21日に海から入ったのが東の方に雨で落ちたのが分かってる。じゃあ、その時に鼻血が出たのかって言うと実は殆ど出てないですよ、みんな。


よく聞いてみると5月6月7月なのです、みんな出始めたのが。だからこれは感作したとしか言いようがないと僕は思う。だから、1回目の曝露の時に、調子悪い人はいますよ。そりゃあ敏感な人なんか、すごい調子が悪かった。色が見えたとか、匂いがしたとか、変な味がしたとか。沢山います、そういう人は。


実は広島の肥田先生の聞き取りでも、色が見えている人がいます、広島でも。エノラゲイの乗組員は、爆弾を落として後ろの方で光った瞬間に、みんなが「鉛の味がした」と言っています。飛んできてないですよ、物質なんか。その瞬間にですから。ですから、敏感な人によっては、いろんな事を感じるのだけれども、「感作するから鼻血が出た」と考えるべきかな。そうすると感作して敏感になった子は、東京から岡山へ避難したわけですけど、東京からおじいちゃん、おばあちゃんが会いに来る、そうすると鼻血が出る。東京から荷物が届く、宅急便が届く、鼻血が出る。こういう事が起きてしまう。

僕も2010何年かな、2016年か2017年かな。実は東京から荷物を、あまりそのように来てほしくないと最初は思ったけれど、東京からスーツを着て、ガラガラ荷物を引っ張って、患者さんが来て、1時間ほどいろんな話をして、終わるかなと思った時に、鼻の奥に激痛が走って鼻血が出て僕は3日間止まらなかった。それで、「あっ、これが患者さんたちの言っている鼻血なんだな」と思いました。
あの頃、僕はとっても敏感だったから、ホームセンターとかスーパーに行っても、とっても具合悪くなりました。特に農薬やなんかの近くに行くと、もう視野は狭まってくるし、ドキドキしちゃってダメだった。今はずいぶん良くなりましたね。だからこう思うにいたりました。


◯「DNAの切断」だけでは被曝の実相に迫り切れない 『能力減退症』という捉え方が必要


長崎大学、「長崎原爆被爆者の病理標本におけるプルトニウムアルファ粒子の軌跡」というのね。これが311の後なのかな、こういうのがね、公開されたのです。これは長崎の原爆で亡くなった方の病理標本です。



プレパラート作る前のブロックと言うのがとってあるのですね、小さいサイコロみたいなやつ、組織がとってあって、そこから新しく切り出して、これが膀胱か、前立腺、肝臓、骨、こっちが肺かな、そのプレパラートを作って特殊な方法で撮影したら、ここにちょっと線が出ているのが見えますか?ちょっと後ろの方、見えにくいかもしれないけれど、小さなひげみたい線が沢山あって、これがその何十年も経った新しく作った標本を撮影した時に、放射線が写ったのです。

だから、いろんな臓器に取り込まれた、多分プルトニウムからアルファ線が出ました、とそういうスライドです。ここからこう出て、この黒いツブツブがあるでしょう?これが細胞の核なのです。肝細胞の核。こういうその核の近くをこれがピュッと通るから、だからこのDNAを距離が短いけれど通るので、DNAを分断しちゃうよって、こういう理論と言うのは非常に有名で、みなさんもよく知っているし、何かと言うとこの話が出てきて、ここで終わりになってしまうのですけれど。


それで理解をする時に、どうしてもこういう研究レベルの話って、分子レベル、DNAを損傷するから発がんするんだというところで、話が一回終わっちゃうので、そこから先がないじゃないですか。僕はやっぱり細胞組織器官、全身で見た時に、機能的なネットワークですね、身体ってものすごく複雑なネットワークで動いているから、そういう事で言えば、ホメオスタシスなのですけれど、それが障害された時の『能力減退症』というのが、死んでしまうほどの被曝ではないような被曝を受けた人、それからその二世三世、そういう時に問題になっているのだろうと思う。

ですから、ここ(分子レベル)の話だけ、幾らしてても、研究としてはいいかもしれないけれど、僕たちの、みなさんの生活がよくなるという事に結びつきにくいのですよね。それで、この高線量被曝の問題としてこのDNAの損傷って出てくるけれども、どうもそれじゃ説明できないので、「ゲノムの不安定性」と言う言葉とか「ベトカウ理論」とか、「バイスタンダー効果」とか、「ミトコンドリアの機能関連」とか、こういう考えを付け加えるのだけれども、全然これではすっきりいかないわけですよね、一般の人は。だからどうしても「DNA、DNA」といってしまう。

ゲノムの不安定性というのは、エピジェネティクスというものだろうというのが、最近の遺伝的な研究を調べて見ると、もうメインですね。8~9割がこれだと思うのです。この話を知らないで述べてもダメだし、でもこの話を知っていても、こっち(全身レベル)はまたちょっと、階層の違う話だと思うのです。

◯首都圏や西日本の深刻な被曝と向き合い、被曝隠しに対抗して調査を進め、みんなを被曝から守ろう

311の『新ヒバクシャ』というね、僕が言っていることですけれど、いろんな切り口があると思います。



一番多いのは、多数派は「福島を復興したい」と言っている人たちです。僕は無理だと思っています。

「まだそんなことを言っているの?関係ないよ」と言っている人たち。ともかく、テレビなんか見ていても東北へおいしいもの食べに行ったとか、そういう話が多いから、こういうのは大多数派。

福島の子どもたちって甲状腺がんが出ているって言うけど大丈夫なの?原発の作業員って大変なんじゃないの?東北の人大丈夫?もしかしたら北関東も危ないんじゃないの?って言うのが、僕はこれを「良心的少数派」って言いたいと思う。だから、数の上ではすごく少ない。それで一番被曝のことを心配している人たちっていうふうに思われていると思う。


僕と、理解してくれる人は、超超超少数派だと思います。『新ヒバクシャ』というのは、首都圏が深刻だと僕は言っている。福島の問題ではない。関東、首都圏の問題です。どっちかって言うと数の上でも重症度でも。全日本の問題でもある。 


最後に出しますけど、西日本も被曝しています。北半球、アメリカも相当被曝しています。あの直後もう西海岸の線量が上がったり、いろんなことが起きています。

さらに言うと我々の子孫、だから二世、僕たちの二世。もうあの311の二世は生まれていて、やっぱり『能力減退症』の人が多いから、だから今後の問題もね、こういう心配をする超超超少数派。

これが、冊子なんですけど、『子どもたちを放射能から守るために、わたしたちができること』というものがあります。



これは政府側・推進側の人ではないのです。これは少数的・良心的な少数派の人たちの作ったものです。「はかる、知る、くらす」。どういうところが危ないのか、どういう食べ物が危ないのか。食べ物が危ないものはどういうふうにやれば線量が下がって食べられるようになるのか。煮方がどうなのか。で、「そういうところで暮らしましょうよ」、という事を言っている。

これは推進側とかエートスという、これはフランス発でチェルノブイリの時に「どうやってそこにみんなを住まわせるか」という、それが文化であると平気で言う人がいて、まあそんなもんかなって思ってしまう人もいるのですけれど。こういうこと。

僕は「はかる、知る」って「もう分かっているでしょう」と思う。そんなところで暮らしてどうしようと思うのか。具合が悪くなるに決まっているのですよ。特に敏感な人から。気が付かなくたって、知らないところで身体を壊します。次の世代、その次の世代に対する責任を持てるのかという事だと思う。

これね、東京の問題でもあるので、これ、『FRIDAY』という雑誌が、今あるのか知らないけど、(注:今も発刊されています)2015年にこういうところの(空間)線量が高いよと、東京駅とか渋谷駅とか、それから成田とか羽田とか。あと池袋のサンシャインとか、フジテレビとかディズニーランドとか、東京ドーム、浅草寺、スカイツリー、まあこういうところも線量が高いよと、この時は書いていた週刊誌もありましたよね。まあ、こういう事です。こっちのほう。



これはさっきの高いところの江戸川の近くで、お花がこういう花のはずだったのが、こんなふうに、奇形と言えると僕は思うのだけれど、こういうのがすごく多かったです。これは三田撮影の写真です。



これが原子力規制委員会の出しているものです。毎月毎月出ています。急いでいきますね。原子力規制委員会のホームページから「月間降下物fallout」。1ヶ月どれぐらい降っているか。2024年1月、最近のものを持って来ました、調べて。



単位がちょっと聞いたこともないような単位なのですけれど、福島県はやっぱり高いです。これは、福島の原発の近くじゃなくて福島市です。ちょっと離れている福島市はやっぱりちょっと高い。

ここが北関東、南関東、これは全部省略しました。西日本は今ね、NDだから測定できないです。それで福島が9.3。その次に高いのはと見ると東京なのですよね。だから、距離的にはずいぶんあるのだけれど、東京が北関東よりも高い。

これは蛇口のお水。これも福島で出ている。この時は千葉とか神奈川には、ようやく出なくなりました。この1~2年で。ずーっと出ていました。福島は0.0005なんだけど、東京は0.0023。だから、福島の5倍ぐらい東京の水って汚染されているのですけれど、東京の水が一番汚いです、あの直後から。13年間単位は少ないけど、こういうものを飲んだり、そういうところで呼吸したり、生活したりするのは危ないだろうと僕は言っている。



「そんなの無理だよ」と言う人がいるのは知ってる。「だったら譲歩しますよ」と僕は言いたくない。僕のいう事を聞いてくれるなんて思っていないから、情報としてそういう事です。
これがね、さっき言った土壌の汚染と言うのがやっぱり、これ示しますよね。こういう事なのね。




これがドイツの気象省が出したプルームの流れですね。放射能の流れ。これは2011年の3月ではなくて、4月の6日のシミュレーションです。実測図じゃないけれども、西日本かなり汚染している。西日本は4月6日と4月18日に2回かなり汚染しています。実はこれはいろんな自治体が公表してます。直後には僕も見つけられなかったけれど、最近なんだかネットで検索していると出てくるようになりました。



だから、やっぱり西日本も被曝した。被爆二世の人も、もう1回被曝しているかもしれない。東日本に住んでいる人は注意しないといけない。やっぱり東日本に行く時は注意して欲しいと。まあ、そういう話ですみません。時間が過ぎましたけど、終わります。

あとちょっとだけ補足します。今日お見せしたように、あの政府とか公的機関とか、放影研とかね、そういうとこがやる研究と言うのは、もう目的があるのですね。
それに対抗する唯一のものなのではないでしょうか、これが。(注、『被爆二世三世健康調査アンケート結果報告書』を示しながら)。



とっても大事だと思う。これをやらないと結局、向こうの言いなりになることになる。もう文句もなかなか言えない、向こうのほうが取り繕いの専門家ですから、うまいところを突いてくるので。頑張ってやって下さい!(おわり)

注記:文字起こし・原稿編集 (注と見出し作成含む)を、守田敏也・柳田かや乃が担いました。

*****

今回の講演で、三田さんは『被爆二世・三世健康調査アンケート結果報告書』(京都「被爆二世・三世の会」作成)を手に読み解きを行って下さっています。これが手元にあった方が理解しやすいので、入手先を示しておきます。

『被爆二世・三世健康調査アンケート結果報告書』
ダウンロード申し込みフォーム
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明日に向けて(2449)ウクライナ政府報告書・慢性原子爆弾症後障碍・間脳症候群・能力減退症・ホメオスタシス―三田講演・原爆ぶらぶら病と『能力減退症』=被爆者と『新ヒバクシャ』その類似性 文字起こし6

2024年08月20日 18時00分00秒 | 明日に向けて(2401~2600)

守田です(20240820 18:00)

三田茂医師講演を動画をご覧下さい

少し間が空いてしまいましたが、岡山の三田茂医師講演の全文文字起こしの6回目をお届けします。
今回も動画をご紹介しておきます。以下の画像をクリックして下さい。

三田茂医師講演 「原爆ぶらぶら病」と『能力減退症』=被爆者と『新ヒバクシャ』その類似性、共通性ー被爆・被曝の新しい理解・病悩の解決の可能性

ここでは1時間36分22秒から

*****

◯『ウクライナ政府報告書』『慢性原子爆弾症の後障碍』『間脳症候群』『能力減退症』について

急に話題が変わるようなのだけれども、ウクライナ政府が、1986年にチェルノブイリが爆発しているので、25年後に“SAFETY FOR THE FUTURE”、「未来のための安全」と言う報告書を出したのですね。


ここには、ガンとか白血病の事も書いてはあるのだけれども、一番問題なのはこれ、二世の時代ですよ、25年後ですから。「こどもの」、二世のね「78%に慢性疾患があって健康なこども」がいないという事を一番の問題だとウクライナは言っている。
だから、「事件とか事故」が多発するし、「犯罪とか汚職」がはびこるし、「社会が混乱して国力がどんどん低下」して行くという事をチェルノブイリ、ウクライナは困っていたわけです。まあ戦争にもなってしまいましたけど。

それで肥田先生は、当然がんの事も言っている。被爆者が急性原爆症で亡くなった事も言っているけれども、「一番辛かったのは『ぶらぶら病』だ」と。差別されて、みんな野垂れ死んで行ったのですよね、「ぶらぶら病」で。
 

 
広島・長崎の研究と言うのは、数年間はやられていたのです、原爆の後。アメリカに対抗するような研究も行われていました。国会でもいろいろ答弁されています。
東大の都築教授(注:都築正男)は『慢性原子爆弾症の後障碍』というふうに言いました。身体の「身体的状況の異常」。それから「精神的能力の衰え」。こういうのを僕は『能力減退症』と言いたいのですよ。だから『能力減退症』って、結構さっと付けたようだけれど、僕は半年ぐらい悩んでつけた名前なのだけれど。だから体力、それから精神的能力、こういうのをひっくるめての減退した状態という事で『能力減退症』と付けました。

この時代、戦後すぐは原因がよく分からなかったし、それから治療法もない。ですから「無理な生活を避けしめるように指導する」しかないと都築先生はおっしゃっている。「ひびの入った容器を大切に扱わなくちゃいけない」と言っている。




小沼先生(注:小沼十寸穂 こぬまますほ)。広島大学の精神科の教授ですけれども、『間脳症候群』だと言っている。間脳と言うのは脳の一番中心のところ、あとで出てきます。間脳と言うところに原因があるのだという。これは解剖してみてやっぱり間脳がおかしいからです。
それからそれより前の時代に、頭を強くぶつけて廃人同様になった人など、間脳がやられるという事を知られていたので、『間脳症候群』という言い方をしたのですね。
精神科の先生に、最近、『間脳症候群』なんて事を言うかなと思って、聞いてみたけど、知らないって言う。だから、だいたいこういう話ってそのあと続いて行かない。根が絶えてしまう。肥田先生もこう言っていましたよね。こういうのが大変だったのだと思うのですよ、やっぱり。だから被爆二世のみなさんの病悩の8~9割は、『能力減退症』だと僕は思います。

『能力減退症』。「三田」と書いてあるけど、みんなが使ってくれないからまだ三田なのだけれど、僕はこういう概念を提案しています。


それで、なんで『能力減退症』という概念をひとつ作らないといけないと思ったかという事ですけれど、これも医学会のスライドそのものですけれど、診療体験です、これは。
311の『新ヒバクシャ』たちを僕は見ていて、こういうエピソードがある。「風邪をひきやすい」と患者さんが言っている。風邪というのはちょっとよくわからない病名だから、具合が悪くなるという事だと思うけれど、「なかなか治らない」。だから、被爆二世のみなさんと同じでしょう?「検査をしてもどこも悪くないと言われる」。「薬を変えても効かない。だるくって非常に長く休む」。



お父さんが2週間会社に行かれない。子どもが1週間学校に行けない。
それで診察所見、これは患者さんの話を聞いても、診察をして問診して、聴診して、触診して、打診して、検査をしてみても異常所見があんまりない。だから、僕たちには異常はよく分からない。だけど患者さんたちはとっても自覚症状が強くて困っている。「乖離」と言うのはそういう事です。論理的に一致しないという意味です。

「今までこのような事を経験した事がない。内にこもった状態から抜け出せない」とこの赤字で書いているのは患者さんの表現、さっきから言っているように、患者さんの表現と言うのは同じような表現をするのです。同じように具合の悪い人は。違う具合の悪い人は違う表現をする事が多いから、「これはひとつの症候群だな」となんとなく思ったのですね。これを「異常なしだね、気にし過ぎだね、大丈夫だ、検査でなにも無かったから~」で、これで終えてしまうのかという事だけれども、まあこのへんはちょっといろいろ大変な事がありましたけれども、検査してみると感染のストレスがかかると、そのストレスを乗り越えないといけないので、コルチゾールというのは副腎皮質ホルモンです。ステロイドホルモンです。身体の中で出ているステロイドホルモンの分泌が急に3倍4倍に上がって、それでさっき言った炎症を起こして、乗り越えていく、治っていく。それが出ていない事に気が付いたのです。


それで「ステロイド単回」というのは、例えば「このお薬を2錠、今飲んでみて」、それから短期間というのは「今日の朝と夜、明日の朝と夜飲んでみて」、こういう事ですけど、そういうふうに渡す。
もし「今飲んでちょっと待合室で1時間休んでいって」と言うと、「15~30分ぐらいでスイッチが入ったように治り始める」。表情が無くって、どろーんとして、力なくうなだれていた人が30分後に呼んだ時にはぴんぴんして入ってくる。こういうエピソードが沢山あった。
だから、多分、そうじゃない人もあるのかもしれないけれども、『新ヒバクシャ』に起きてる事は、こういう事だろうなと、このへんからちょっと疑い始めたというか、気が付き始めたというところです。

◯3つの症例から

ここから、3例、症例を提示します。56歳の男性で船乗り。





今、岡山に居る人ですけれど、3月12日に福島原発沖で航行していたのです。津波が来て動けなくなってそこで停泊していた。周りはガレキだらけだって、だからもうどこにも動けなくて、そこでしばらく停泊してた。それで、多分大量被曝してたと思いますよ。誰も証明できないけれども。

そしたら、そのあと目が悪くなった。遠くが見えなくなった。船乗りさんが、遠くが見えないのは大変なのですよね。持ち場が変わって数年したら、「重度の倦怠感。憂鬱。体が動かない。仕事が辛い。同僚それから先輩たちについていけない。だから仕事を辞める」。ホルモンが低くて補充して、さっきいったステロイドの補充をするわけだけれども良くなった。

52歳の女医さんです。東京から名古屋に移住してよくならなくて岡山に移住した人です。




2015年ぐらい、だから被爆後4年ぐらいから「記憶力低下。ストレスに耐えられない。回復しない。余裕がなくイライラしている。不機嫌。落ち込む。眠気が強くって診察中に寝た」。患者さんが出て行って、看護師さんが次の患者さんを呼び込むまでの間にすっかり寝てしまったと言ってました。「とても仕事は続けられない。目はかすむ、皮膚炎はひどい」。それで、この人も低くって補充したら、仕事が続けられる。

69歳の女性。身体を動かすのがすごく好きで、夕方まで元気に働いていた人。





2017年の春から、このへんですよね。16年、17年ぐらいがすごく多いのだけれども、だから311で被曝した数年後、5年後、6年後ぐらいから、こういう訴えがすごく強くなってきた。「物忘れ、眠気、夜はよく寝られなくて冷や汗が連日出る。急に十歳年を取った感じが自分でした」と。「去年と顔つきが違うと仲間に言われた。朝から働いていてお昼までももたない」。前は夕方まで働いた。治療してよくなった。

ここでキーワードとして、僕はこれを使いたいという事ですけれど、これ、医学会で提案したわけだけど、今日みなさんに渡っている資料の中に、「『新ヒバクシャ』に『能力減退症』が始まっている」という5ページぐらいのものを入れてもらっていますから、あとで読んでおいてください。今日話したような事しか書いてないですけど。だいたいもう考えている事を言っていますが、ちょっと思い出すのにいい文章かなと思っています。注:ここから入手可能 『新ヒバクシャ』に『能力減退症』が始まっている 三田茂 | 明日に向けて 守田敏也web (toshikyoto.com)



それで『新ヒバクシャ』の『能力減退症』。「眠気。疲れやすさ。意欲が低下して記憶力、理解力、判断力、集中力が無くなる。とってもミスが多くなる。抵抗力、治癒力が下がる」。
だから被爆二世のみなさんの報告を、読み解きしたのと全く同じでしょう、これは。被爆二世のみなさんの事を知らずに僕は言ってますから、だから一致性にびっくりするわけです。「似ている」のではなくて共通なのですね。「ありふれた病気の重症化、治癒の遷延」、遷延というのは治癒が、なかなか治らないのですね。それから、「患者の訴え、診察所見・検査所見が合わない」。だから「ストレスでしょう」と言われてしまうのでしょうね、こういうのは。「あなたの気のせいかストレスか。行くんだったら精神科に行け」ってね、そういうふうになりやすいのです。

◯『ホメオスタシス』について

次のキーワード。『ホメオスタシス』。さっきも言いました。『恒常性』とも言います。ホメオスタシス、恒常性。


これは理解するのに不可欠だと思って出しました。ホメオスタシス・恒常性というのは、まあ高校生の生物ぐらいで習うのかもしれないけれども、「外部からの影響」と言うのがあるでしょう?「お天気とか、ストレスとか、化学物質、当然放射能も」。こういう外部からの影響に対して「体内の環境を一定に保とうという働き」です。



例えば、気圧が変わった時にそれに対抗する、寒い時には体温を上げる、熱い時には汗をかく。ご飯を食べた時には消化吸収をしたり。「体温とか、温度調整、免疫力」。で、こういうのがうまくいくと、健康が当たり前のように維持できるけど、当たり前ではないですよね。すごく大変な事を身体はやっています。それでこのホメオスタシスを維持しているのが、「自律神経」と「ホルモン」です。自律神経、ホルモンがうまくいくと健康が保てて免疫的にも充実する。

これはね、変な絵ですけど、丸が脳みそ。手が生えて足が生えているわけではないのですけれど、脳みその真ん中に「間脳視床下部」と書いてあります。



さっき「間脳症候群」と言ってたでしょう。間脳視床下部というところでこの外から入ってきたストレス、感情的なものとかストレスをうまく調整しようという事で、「自律神経の調節」を行います。自律神経調節の中枢が間脳なのです。間脳はさらに「脳下垂体」という脳の一番下にあるところに指令を出して、「ホルモン調整」をします。この2つでホメオスタシス・恒常性がうまく維持される。そうすると健康に行くけれど、こういうのが、バランスが崩れたり、能力が低下すると、ホメオスタシスの調整がうまくいかなくなるという事ですね。 

ホルモンって沢山ありますけれども「成長ホルモン」、それから「甲状腺ホルモンの軸」というふうに言いますね、医学的には。それから「副腎、ステロイドホルモンの軸」、それから赤ちゃんが生まれたらおっぱいが出るとか、「男性ホルモン」、「女性ホルモン」とか、おしっこの出るように調整するとか、いろんなホルモンがこの間脳脳下垂体系の系列で調整されています。それでホメオスタシスが維持されている。

その、「間脳脳下垂体機能低下」というのが、『能力減退症』の原因であろうという事を、医師会医学会で言ったわけです。



ここで、正常の人たちの分布からはちょっとずれちゃうよという事なのだけど、これを話すとこれだけで2時間かかるので、YouTubeに動画を上げてあります。(注:三田医院HPより視聴可能 http://mitaiin.com/)もし興味があったら見てみてください。医科向け、医者向けは細かく話してあって、一般向けはもうちょっと易しく話してあります。

『能力減退症』は、しつこいけどね、「間脳・脳下垂体機能障害プラスアルファ」。これは、今日はちょっと省かせて下さい。下手に言うと誤解を生み易いので、これはちょっと省きます。
間脳は自律神経障害、脳下垂体はホルモン障害という事です。僕は放射能被曝から入りました、この考えにね。




◯アレルギー、農薬、添加物の影響、化学物質過敏症、香害などもかなり『能力減退症』的

でも、色々調べてみたり、いろいろ考えてみると、「アレルギーとか農薬。添加物。化学物質過敏症。香害ね、香りの害」、こういうのも『能力減退症』的です、かなり。
「HANS」、これは女の子たちの子宮頸がんワクチンの後の神経障害。まるっきりこう記憶力が無くなってしまったり、それからけいれんして動かなくなってしまったりと、神経障害がとても深刻だって言っている人がいる。国は関係ないと言ってる。でも、また注射をうち始めたらこういう人が増えてるから、関係あると僕は思いますけど。

それから、コロナのワクチンの後障害。これもね、このへんが関係していると思います。HANSの人たちは間脳に原因があると言っている。コロナのワクチン後障害と言っている人たちも、ホルモンが下がってるって言ってる。だから治療すればいいのにと思うけど治療はしない。それはきっとまだ、仕上がった診断学・治療学になってないから手を出さないのだと思う。責任を問われるのが嫌なのかもしれない。でもすごく似ている。

さっきも言った「熱中症」というのはもうやたらと使われているので、冬以外はみんな熱中症と言う感じだろうと思うけれども、これは『能力減退症』的な側面がすごく多い。だからこの十数年か、熱中症という診断がやたらと多いんですよ。これは被曝以前にもう化学物質とか電磁波とか、こういう影響をみんな受けているので、昔より体力が落ちているという言い方もあるし、ホメオスタシスの維持がうまくいかなくなっているのだと思います。

それで、「被爆二世・三世の健康被害」と言うのも、ここに引き続くもの、同じ『能力減退症』としての治療が、かなり効くのだろうなと思います。




もう一回ちょっと念押しなのだけれども、69歳の女性の症例。



「物忘れ、眠気、十歳年を取った感じがして、顔つきが変わったんじゃないのって同僚に言われて、夕方まで働いていたのがお昼までもたなくなった」。ホルモン的に調べるとやっぱり下がっている。脳に異常があったら困るのですよね。脳腫瘍だったり、脳卒中だったり。MRIで調べてもなんともない。さっき言った間脳も異常がない、脳下垂体も異常ない。だけども下がっちゃう。ここに異常があればもうちょっと僕の主張と言うのは通りやすいかな。MRIでこういう異常がある人が多発しています。先生方どうでしょうか、という話はあり得ると思う。ここに異常がないのはいいのだけれども、なかなかこう、相手にしてもらえないというところですね。

それで、足りてないコルチゾールをちょっと補充すると、「昼までもたなかったのが前のように午後まで働けるように戻る」。これはみなさんもこうですよ、という事を言ってるのですよ。顔つきが変わったと言われたのが元気で明るくなったって。それで、「元に戻ったねと同僚に言われた」のですね、治療をしたら。「暗いトンネルから出られた」とご本人は言いました。

それで、良くなったのだけど、月曜日から働き始めると、やっぱり週末には疲れがたまる。ただ「仕事は続けられる」。この補充の容量が、これで良いのかどうかだけど、僕は、オーバーはしたくないのですよ。オーバーするとやっぱり副作用なんかの心配をしなければいけないので、ちょっと控えめにやってる。だから、週末まではもちにくいのかもしれない。でも「ここでちょっと勘弁して」と言うところです。


面白いのはこの人、岡山市民なのですけれど、東広島の山の中に引っ越したのです。ご家族の理由で。しばらくしたら、これ要らなくなった。もしかしたら、岡山市は地方都市だけど、町ですから、町から山に移動して良くなったのかもしれない。これはいろんな電磁波環境とか、化学物質の環境なんかが違うのかもしれない。ちょっと分からないけれど。或いは補充した事によって、もうすっかり機能を取り戻せる、可逆性って言いますよね、元に戻るような状態だったのかもしれない。(1時間53分56秒まで) 続く

#ウクライナ政府報告書 #慢性原子爆弾症の後障碍 #間脳症候群 #能力減退症 #ホメオスタシス #間脳脳下垂体機能低下 #コルチゾール #副腎皮質ホルモン #化学物質敏感症 # 電磁波敏感症

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今回の講演で、三田さんは『被爆二世・三世健康調査アンケート結果報告書』(京都「被爆二世・三世の会」作成)を手に読み解きを行って下さっています。これが手元にあった方が理解しやすいので、入手先を示しておきます。

『被爆二世・三世健康調査アンケート結果報告書』
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